第40話
その時である。2万人と言われるバルディの軍団が動いた。いや、動いたというのは今回は当てはまらない。正確には、海人の目の前で重なり始めたのである。
海人はこの意外な展開でバルディを見失っていた。
軍団は次々に重なり、今は1体……1人となった。
そして、予想もしていないものを海人は目にするのだが、それは今の海人の姿をしていたからだ。
「バルディ様、奴がバルディ様の対となる男なのですか?まだ子どものように見えますが」
「シャフトよ、油断するでない。奴は既にオーベルを倒しておる。我がこの無限に広がる世界で、唯一認める敵。そう、宿敵じゃ。奴がおる限り、我の野望は叶うまい」
「失礼致しました。俺とオーベルとの違いは、バルディ様もわかって下さいますね?今回のこの世界の征服に俺を選んで下さったのは、俺の実力を知ってのことだと思います」
シャフトと呼ばれる『俺』がバルディと会話をしている。何という不思議で不愉快な気分なのだろう。
バルディはシャフトの言葉に納得したように宣言した。
「小僧、種を明かしをしててやろう。このシャフトは、2万の分身を持っておる。それが本来の1体になればどうなるかわかるか?そのチカラ、姿を映した者の2万倍となろう」
2万倍?海人のチカラの2万倍とはどういうことなんだ?それと戦わなくてはならないのか?
海人の頭は疑問でいっぱいになった。
「シャフト、我はこの球に魔法を掛けておく。我が去っても、この世界は我らのものだ。次の手を打たなくてはならん。ここは任せる。先に行くぞ」
シャフトは頭を垂れると、
「かしこまりました。こいつの相手は俺1人で十分過ぎます。バルディ様もご存知ですね」
「よろしい」
パチン!
バルディが指を鳴らすと、バルディはその場から姿を消した。
「おい!お前の相手はこの俺だ。10秒だ。それで決着をつけてやる」
「海人、お前は1人ではない。ワシがおる。2対2万か。丁度良いハンデじゃな。恐れることはない。所詮、相手は人まね。数で負けるような戦いはすまいぞ」
ナナカミの声で我に返った。そうだ。海人は1人ではない。相棒であるナナカミがいる。
負けられない。去ったバルディを追って、桜を助け出さなければならない。
「ナナカミ、行くよ」
「おう、任せておけ」
その時である。どうやら、シャフトが海人とナナカミの会話を聞いていたようだ。
「ほう、面白いものを持っているな」
そう言い、剣を抜いた。その剣はナナカミとは違い、真っ黒な色をして不気味に輝いていた。
「おい、お前話せるんだろ。話してみせろよ」
シャフトが剣に話し掛けている。
「………」
「どうした?俺はお前のご主人様だぞ」
「………」
黒いナナカミは何も答えない。
「ちっ、使えねえなぁ。まあいい。これであの小僧の心臓を一突きにしてやる」
シャフトが剣を構え戦闘態勢に入る。
海人もナナカミを構え戦闘態勢に入った。




