第39話
下水道の秘密部屋を出る。地図から見たここから先は、迷路のような下水道が続いている。
海人にはダラスの提案が非常にありがたかった。
「海人さん、30分くらい歩けば、スライセンターの前へ着くと思います。私に出来るのがそれだけで申しわけありません」
「バルディを倒すのは俺の宿命です。俺がお礼を言いたいくらいです」
スライセンターの前に行くまでに事の経緯をダラスに話した。バルディにより桜が攫われてしまい、バルディを倒し、彼女を助ける決意をした事も。
「そうでしたか。海人さんは私より更に辛い宿命を背負ってしまったのですね。私に出来ることは、海人さんがバルディを倒し、大切な人を取り戻せることを…祈るだけです」
「ありがとうございます」他に言葉は思いつかなかった。
その声に頭上の騒音が重なった。どうやら、レジスタンスの陽動作戦により、軍隊が動き作戦は成功しているらしい。
「ダラスさん、どうやら作戦は成功しているみたいですね」
「我々、レジスタンスの結束は固いです。皆、この世界をバルディから取り戻す決意を心に秘めています」
真剣な顔をしたダラスが前方を指差す。
「もうすぐです。あ、見えて来ましたね。あの梯子を登ればスライセンターの前に出ることが出来ます」
目を凝らして良く見てみる。確かに梯子らしきものが海人の目にも確認できた。
いよいよだ。その梯子は、今、海人の目の前にある。
「色々お世話になりました。ここから先は俺1人で行きます」
「私にも力があれば良かったのですが、海人さん、申し訳ありません。成功をお祈りします」
海人は決意を固め、梯子に手を掛け、1段ずつ登り始めた。
梯子の最上段に着くと、マンホールの蓋らしきものが見えた。開けようと手にすると、ずっしりとした重みが手に伝わった。慎重に蓋を押し上げ、少しずらしてみる。
大丈夫だ。自分が通れるまでに蓋を開けた。地上に上がり、様子を見てみる。
その瞬間に何か異変を感じた。静か過ぎる。街は時間が止まっているかのような静けさを見せている。
その時である。
「出て来たな。ドブネズミが!」
その声を合図にしたのか、黒い衣装を纏った軍団が海人を取り囲んだ。
その数は…多過ぎる。もしかして、バルディの軍団全てがいるのかと思った。
だが、その中に意外にも建物…スライセンターであろうその前に奴がいた。
バルディだ。間違えようもなかった。奴だ。
「こんな子ども騙しがワシに通じると思ったか!今、動いておるのはこの国の軍隊じゃ。我の軍団は、ほれ、お前を囲んでおるわ」
作戦が読まれていた?バルディは海人から50mくらい先にいる。
「海人、突っ込むぞ。奴は今油断をしておる」
ナナカミの言う通りだ。
海人は即座に突入の決意を固めた。絶対に負けられないし、倒さないといけない。桜を助け出すために。




