第33話
ジャガの国へ戻って来た。海人は自身が白の魔法使いと言われたが、今は意識せずに空を自由に飛ぶことが出来た。
城の屋上に降り立ち、螺旋階段を下り、急いで王の間へと向かう。
「サイラさん、ディードさん、バルディの居城には行った。正確には入った。しかし、手掛かりになるようなものは見つからなかった。しかも、バルディに俺の正体を…行動を先読みされていたみたいだった。そして…俺の大切な人、桜ちゃんはバルディと共にいた」
「そうでしたか。バルディは強大で邪悪な黒の魔法使いです。しかも、策略に長けています。海人さん、一度、出直した方が良さそうですね。あなたには多くの仲間がいるはずです。どうか、焦らないで下さい」
サイラの言葉が今の海人には温かかった。
ナナカミに相談してみる。
「ナナカミ、一度、次元の間に戻ろうと思う。ランスゥにこのことを話す必要がありそうだ」
「そうじゃな。ここにバルディがいないのであれば、ここにいる必要もあるまい。次元の間に戻ろうぞ」
次の行動が決まった。
「サイラさん、ディードさん、短い間でしたが、お世話になりました。急ぎなので俺たちは出直します」
ディードが優しく話し掛けてくれた。
「海人さん、焦らないで下さいね。白の魔法使いのあなたの使命は大きい…。他の誰にも想像出来ないような試練が待っているかもしれません。しかし、私は、いえ、私たちは信じていますよ。海人さんがバルディを倒し、桜という方を助け出すということを」
気が焦り、時間が惜しい。
「では、失礼します」
海人はそう言い、城を後に鏡のある教会へ向かうことにした。
「お待ち下さい」
ディードが海人に話しかけて来た。
「おまじないを…何かの役に立つと思います。私にさせて下さい」
そう言うと、ディードの左手から、一筋の光が海人の左手に当たり、何かが吸い込まれたようだ。
「終わりました。それでは少しのお別れです」
何かあったのはわかるが、それが何かはわからない。今は時が惜しい。
「ありがとうございます」
何と言っていいのかわからなかったので、そんな言葉が海人の口から出た。
城に来た逆順で道を遡り、教会にある鏡へと向かう。途中、今までと違い、変化があるのがわかった。道行く人々が、皆が海人に頭を下げ、目をキラキラさせていたからだ。どうやら、海人が白の魔法使いだということは国中に広まっているらしい。
今の海人にはどうでも良かったので先を急ぐ。見つけた。あの教会だ。教会の前には多くの人が海人を待っているかのようにそれを囲んでいた。これでは中に入れない。
「通して下さい。中に入れて下さい」
そう言うと、人並みが割れるように道が出来た。
教会の扉を開ける。良かった。教会の中に人はいないようだ。
鏡は……あった!
次元の間へ戻ろう。見つけるや今では慣れたもので、鏡に意識を集中させた。両目には赤い羽が浮かび上がる。曇っていた鏡は輝きを取り戻し海人を映した。
海人は何の迷いもなく、鏡の中へと入った。




