第31話
城の屋上へは、玉座の左にある扉から螺旋状の階段を上って行くようだった。体感で5分くらいだろうか。階段を登り切ると屋上へと出た。
陽が眩しく、まだ陽は落ちていない。
「海人さん、ここから飛び立ち下さい。陽が落ちる前までにはバルディの居城に着けるでしょう」
サイラが声を掛けてくれたが、いまいち自信がない。果たして、上手く飛べるのだろうか。
「海人、行くぞ。時が惜しい。迷う時間は無い」
急かすナナカミに言われるまでもない。
海人は自分に気合を入れた。それは合気道の手合いの前のように静かで強い心で、自分で集中しているのがわかる。
「では、サイラさん、ディードさん。行って来ます」
海人は友人の家にでも遊びに行くみたいな返事を2人に返した。
仕方が無い。他に言いようがなかった。
『俺は飛べる…軽い…羽のように軽く飛べる』
そう念じ意識を集中させると体が宙に浮いた。
『地図よ、出て来い』
同様に念じて教えられた通りに地図を出して、地図上の黒く光るバルディの居城へと飛び立った。
風が心地良い。空を飛ぶことがこんなに気持ちの良いことだったとは、そもそも初めて飛ぶのだから、想像したこともなかった。
そして、進行方向を修正しながら、バルディの居城へと飛んだのだが、驚くべきはその速さで、海人の世界での飛行機の飛ぶ速度が優に出ていた。速さを競えば、戦闘機並みかもしれないくらいだ。
飛んで1時間くらいであろうか。
陽が少し傾きかけて、空は黄金色へと変わっている。
その行く先に建造物らしきものが見えた。島の中央に城らしきものが見えて来る。そして、居城の真上に停止した。地図が正しければ、ここがバルディの居城だ。
ナナカミが声を掛けて来た。
「海人、わかるか?城を覆うように結界みたいな力を感じる」
海人にも感じることが出来た。バルディの居城は強い結界によって守られている。これがサイラの言っていた結界だろう。
「破れるか?」
「わからない。一緒に…力を貸して欲しい」
ナナカミの問いに問いで返した。
「任せておけ。海人、もう少し自信を持つのじゃ」
ナナカミの言う通りだ。ここで止まっては何も始まらない。意識を集中して、ナナカミに気を送った。更に集中を続け、それが大きくなるのがわかった。今までと違った力が自分の中から出て来るのを感じる。
大丈夫。行ける。
「ナナカミ、行くぞ!」
その声と同時に結界目掛けて、ナナカミを思いっきり振った。
力が、今までと違う力がナナカミから放出された。
結界は?
結界は黒い稲光を一瞬見せ、弾けるようにして、それは消えた。
どうやら成功したらしい。
「やったな。しかし、気を抜くでないぞ。ここからが本番じゃ」
ナナカミのいう通りだ。海人は緊張を解かぬようにして、バルディの居城へと降り立った。
そこは城の中央やや手前に位置する中庭であるみたいであった。




