第30話
これが始まりなのか終わりなのかはわからない。
バルディの居城が黒く光る点となって地図に表示されている。
いよいよだ。ついにバルディの居城に侵入する時が来たのだ。バルディに関することは見つかるのだろうか。バルディは居城で何をしたのか。
「サイラさん、バルディの居場所はわかったけど、どうやって行けばいいのですか?」
簡単な疑問だが、それが一番の問題である。地図で示す、バルディの居城はここからは遠く離れている。
サイラは「ああっ」という顔つきでこう言った。
「そうでした。失念していました。白の魔法使いでも海人さんは異世界の方。魔法の使い方をご存知ないのですね。それではここで少し練習して行きましょう。バルディの居城には、海を超えて飛んでいかなくてはなりません。そして、バルディの居城の結界を破れるのは、白の魔法使いである海人さんにしか出来ませんからね」
魔法を一体どうやって使えというのだろうか。
「では、私が説明しますね」
ディードが魔法の使い方を教えてくれるらしい。
「まず、飛び方ですが、自分の体が軽い。そう、羽のように軽いと心の中で思い浮かべて下さい。そして、飛べるんだという意識をはっきりと持って下さい。では、どうぞ」
いきなり言われても困ったが、ディードの説明通りにしてみる。
『俺は軽い…羽のように軽い…飛べる飛べるんだ!』
驚いたことに、体が3mくらいの高さにふわっと浮いた。
「そうです。では、移動してみて下さい。移動は移動する方向に行けると思うだけで大丈夫ですよ」
ディードの声が下から聞こえる。
右手の方向に移動を試みる。右へ右へ…。
出来た。こんなに簡単なのか。左にも、そして、円を描くように上下左右と自由自在に移動することが出来た。
「さすがです。基本はこれで大丈夫です」
ディードが感心したように言った。
着地し、他の魔法について聞いてみることにした。
「ディードさん、バルディの居城に行くのはいいけど、バルディに対抗出来る魔法はないのですか?」
サイラが答えてくれた。
「それは私の専門ですので、私がお答えいたします。海人さん、魔法使いにはレベルがあります。最高位は海人さん、あなたの白の魔法使い。そして、黒の魔法使いのバルディです。黒の魔法使いであるバルディに会えば、白の魔法使いである海人さんの能力は発現するはずです。それと、私たちには白の魔法使いがどんな魔法を使うのかわかりません。何しろ、300年以前のことですからね。既に伝説になっています」
「海人、ワシがおる。それだけで十分じゃ」
ナナカミの声である。
「おや、そちらの方は?」
サイラが興味深げだ。
「これは俺の相棒のナナカミです。しゃべる変わった剣ですよ」
「おい、もっと他の良い言い方はないのか!」
ナナカミが抗議の声を上げた。
「はじめまして、ナナカミさん。強い力をお持ちですね」
ディードである。
「ふむ、この女性は人が出来ておるな。海人とは比べものにならんわ」
ナナカミはどこか嬉しげである。
「お二方、時を急ぐ故、ワシらはすぐに旅立たなければならぬ。海人、行くぞ」
ナナカミの言う通りだ。
ひと時でも早く、バルディを倒し、桜を救い出さないといけない。
「それでは、この城の屋上から飛ばれるのがいいと思います」
ディードがそう言って席を立った。
サイラも同様に続いて席を立つ。
「ご案内します。私の後について来て下さい」
海人はサイラとディードの後について、城の屋上へと向かった。




