第28話
「まずは私の話しをお聞き下さい」
サイラが何か秘密を打ち明けるかのように話しを始めようとしていた。
「私の国、いや、私達の世界には伝説があります。それは『黒の魔法使い現れる時、白の魔法使い現れる』です」
黒の魔法使い?もしかして?…海人にはある考えが頭に浮かんだ。黒の魔法使いはバルディではないのか?桜を浚った全ての元凶だ。
「サイラさん、もしかして、黒の魔法使いの名は、バルディではありませんか?」
ストレート過ぎたかとも思っが、他に聞きようもなかった。
しかし、サイラの答えはもっとストレートだった。
「はい、そうです。おっしゃる通り、黒の魔法使いの名はバルディです」
やはり、そうだったのだ。それなら、バルディを見つけることが出来るかもしれない。
「海人さん、ご存知のようですね。バルディは私達の世界に300年前に現れ、そして、白の魔法使いに封印された伝説の魔法使いです」
サイラの話にディードが割って入って来る。
「海人さん、この国の職業選択の水晶玉に手を当てましたよね?伝説によれば、バルディはその儀式で『黒の魔法使い』と告げられたようです」
サイラが話を受け継ぐ。
「私達の先祖は、当時は黒の魔法使いが何なのか知りませんでした。ただ今も共通して言えるのは、強大な魔法使いであったということだけです」
300年だって?バルディは300年もの長い間を生きていたのか?
ランスゥがバルディを殺すことは出来ないと言っていたのを思い出した。
そうだ。ここは、バルディの生まれた世界。全ての始まりの世界かもしれない。
少しでも情報が欲しかった。
「サイラさん、俺はバルディに大切な人を浚われ、バルディを倒し、封印するという使命があります。詳しくは話せませんが、今、俺のやることは、少しでも早くバルディを倒し、封印することです」
「わかっていますよ。それが白の魔法使いである、海人さんの宿命ですからね」
サイラは全てを知っているようだ。
「俺はバルディを追ってこの世界に来ました。バルディはこの世界に戻っているはずです。バルディの居場所を教えて下さい」
ディードが何か心配そうに話し始めた。
「バルディの気配は私も感じ取りました。しかし、その気配は1日経つと消えてしまったのです。どうやら、バルディはこの世界にある、バルディの居城で何かを持ち出したようです。そして、それはバルディの邪悪な野望を達成させるために必要なものだと思います。お願いします、海人さん、バルディを止めて下さい」
ディードの悲痛な願いが海人の心に届いた。
「先にも言いましたが、俺はバルディを倒し封印し、大切な人を助け出すという使命があります。バルディについて知っていることがあったら教えて下さい。何でも良いです。白の魔法使いのこと。バルディのやろうとしている計画のこともです。何か手掛かりが欲しいです」
サイラが海人の思いに打たれたように打ち明けた。
「あなたは白の魔法使いです。バルディを倒すことの出来るのは、あなたしかいません。バルディはこの世界に自分の居城を構えていました。きっと、そこで何かを持ち出したのでしょう。私達には、バルディの結界があるため行けませんが、白の魔法使いである、あなたなら結界を打ち破り、バルディの居城へ入ることが出来ると思います。そこにバルディに関する何かが見付かるかもしれません。場所はわかっています。これをお持ち下さい」
そう言い、サイラが指をパチリと鳴らすと球状の光り、いや、海人の世界にある地球儀みたいなものが宙を飛んで海人の目の前へ現れた。
「どうぞ、お手にお取り下さい。これが地図になります。黒く光る点がバルディの居城です」
サイラの勧めるままに、それに手を触れてみた。
不思議なことに、海人が触るとそれは手の中へと吸い込まれた。
「海人さん、心で唱えて下さい。地図が出て来ることを。強く強く念じて下さい」
ディードが説明してくれた。
言われたままに、心で地図を思い浮かべてみた。
驚いたことに、地図が海人の手の平から浮かび上がった。そこに黒く光る点があった。きっと、そこがバルディの居城なのだろう。
「海人、これは長い旅になりそうじゃ。ここで準備を整えてから出発しよう」
ナナカミが囁く。
海人は素直にナナカミの案を受け入れることにした。何から何までが初めてだ。異世界だけではなく、魔法の力やそれを使う魔法使い。全てはバルディを倒し、桜を助け出すこと。だが、その時の海人には、その行動が全ての世界を救うこととは思っていなかった。
海人はバルディを倒し、桜を助け出すということが全てで、それを強く心に誓いを立てた。




