第27話
忙しかった。海人は多忙を極めることとなった。老人達は建物を出て、海人を急かすかのように城内へと導いた。
老婆が城門の守衛の一人に話し掛け、守衛が合図をすると、城門が大きく上に開いた。海人の知る、西洋式の城門を連想とさせた。
城門を連れ立って潜ろうとすると、その大きさに圧倒される。門は幅5mに高さは10mを軽く超えるものだったからだ。
老人達は歳に似合わずに足が速かった。海人がよそ見をしようものなら、その先を急がせた。実に行動力に富んだ老人達だなと思われた。
そんなに大事なことなのだろうか。
城門を潜り、城内に入って思ったのは、その広さだった。
城内を観察しようと思った海人だったが、老人達は先へ先へと海人を急かした。
中庭には大きな噴水があり、周りの景色と溶け込み、目に鮮やかだった。
老人達は海人にかまうことなく、先を急いだ。ここまで10分くらい掛かっただろうか。更に奥の通路を進み、階段を上った。
それから30分くらい。一体、どこまで広いのだろう。
海人が王の間と呼ばれる部屋に到着した頃には、陽が傾きかけていた。
王の間と呼ばれる部屋を見てわかった。この国の栄ていること。富んでいることだ。
通路から王の間に至るまでには、数々の絵画や装飾品によって彩られていた。
王の間を見渡すと、両側を兵士に囲まれ、その奥に立派な椅子、そう、玉座があり、左に男性が、右には女性が座り、海人に視線を注いでいた。
老人達が「急ぎなされ、急ぎなされ」と急かし、海人を玉座の前まで引き寄せる。
老人達は、片膝をついた。そして、話し始めた。
「国王陛下、ついに現れましたぞ。白の魔法使いでございます。ささ、海人殿、こちらへ」
強引な老人たちに戸惑ったが、国王と言われる人物の前まで進んだ。
「海人さん、お待ちしておりました」
その声は若かった。近づいたので、その面影が良く見えた。
若い。国王とその隣の女性は、まだ30代くらいに見える。二人とも海人の世界での西洋の王族を思い浮かべさせられる衣装に身を包んでいる。
そして、事の経緯を話し始めた。
「私はこの国の国王サイラ。そして、妻であり、王妃のディードです」
そう言うと、ディードと呼ばれた女性が言葉を発した。
「海人さん、はじめまして。ディードと申します。そのご様子では、この老人たちに強引に連れられて来たようですね。困惑しておいででしょう」
ディードは「クスッ」と笑い、海人に話し掛けた。
当たり前だ。この世界に来たばかりで、この国についても何も知らない。いきなり、職業に就けと言われ、老人たちに引っ張られてここにいるのだから。
「あの…サイラさんにディードさん。信じてもらえるかわからないけど、俺はこの国の人間でもないし、この世界の人間でもありません。正直、少し戸惑っています」
海人の言葉に落ち着いた答えが返って来る。
「わかっていますよ、海人さん。白の魔法使いは、皆この世界の住人ではありませんでしたからね」
サイラは全てを知っているようだった。
「海人さん、この話しは少し長くなります。お時間をいただきたい。これは、この世界だけではなく、あなたの世界にも影響を与えることになると思いますからね」
どうやら、ここは腰を据えて話をする必要がありそうだ。
「サイラさん、俺にも話さないといけないことがあります。俺がこの世界に来た理由と、今、起こっていることです」
ディードが間に入り、「お互いを知る必要がありそうですね」海人の事情も理解してくれるかもしれなかった。
「海人、何か理由がありそうだ。ここで情報を仕入れることにしよう。お前さんが白の魔法使いという謎もあるからな」
ナナカミが囁いた。
仕方ない。ナナカミの案を受け入れ、ことの経緯を話し、海人は桜とバルディの情報を仕入れることに腹を決めたのだった。




