第26話
女性に言われた通りに城を目指した。真っ白な城は、歩いて15分くらいのところにあった。城には商人らしき馬車や豪華な造りの馬車の出入りがあり、賑わっているようだ。
城門の前では、槍を手にした守衛が門を挟むように立っていた。何をしたらいいのかわからないので、城門の右手に立っている守衛に話しかけた。
「あの、すみません。この国は初めてで何もわからないのですが、職業登録をした方が良いと聞きました。何かご存知ですか?」
「ああ、旅行者さんですね。ようこそ、ジャガの国へ。職業登録でしたら、あの建物の中へお入り下さい」
そう言って、左手の2階建てであろう。少し大きめな建物を指差した。
「ありがとうございます」取り合えず、礼を述べた。
そして、その建物へと歩みを進めた。
建物のドアをノックする。
「どうぞ」
若者ではない。年配の女性らしき声が返って来た。
何と言っていいかわからなかったので、「お邪魔します」そう言いドアを開けて中へ入った。
中は広かった。壁には書棚があり、そのほとんどを書物が埋めている。部屋の中央には少し長めのテーブルと椅子があった。
「まあ、座るがよい」テーブルの海人の反対側に座った、老婆らしき人物が言った。ローブのようなものを纏っている。海人は老婆と対面に座った。
その老婆が説明を始めようとしていた。
「旅人さん、ようこそ、ジャガの国へ。これから話すことは、この国に滞在、住む者の決まりで、皆何かの職業に就いておる。まずは、名前を聞くとするかね」
「海人、夏目海人と言います」断る理由もないので名乗った。
老婆がニッコリして話しを進めた。
「海人というのじゃな。この国では珍しい名前で、良い響きだ。では、これから、職業決めの段取りを説明を始めることにする。海人よ、このテーブルの上に水晶玉がある。そこに手を当てるがよい。ただそれだけで全てが判明するからな」
確かに、テーブルの上には水晶玉がある。決まりか知らないが、なぜそんなことをしなくてはならないんだと海人は思った。
バルディを見つけて倒し、桜を助け出さなければならない。
ナナカミがそんな海人の焦りを見抜いたかのように、小声で囁く。
「海人、ここは、郷に入れば郷に従えじゃ。目的はその後でもよかろう」
仕方ない。ナナカミにまで言われては、そうするしかないか。
海人は意を決し、水晶玉に手を当てた。その瞬間、水晶玉が淡く光り、その中にある映像を作ろうとしていた。その映像とは、始めは白い煙みたいであったが、徐々にあるカタチを形成した。
海人には何が何だかわからない。水晶玉は何を示しているのだろう。驚くばかりであった。
だが、老人たちの驚きは更に大きいものだった。
「これは珍しい。何ということじゃ。こんなことがあるのか」
そう言って、書棚の本を探し始めた。そして、1冊の本を見つけて「これじゃな」と納得して抜き出した。
そして、本のある個所を読み、納得すると、
「パン屋じゃ」
言ったのは、老婆の隣に座っていた老爺である。
「何をボケとるんじゃ、爺さん。魔法使いじゃ。それも白の魔法使いじゃ。これは初めて見るぞ」
海人には何が何だかわからない。魔法使いで、白の魔法使い?何なんだ一体?
老婆が驚きを隠さず、海人にこの国の事情を話し始めた。
「海人、お前さんの職業は魔法使いじゃ。しかも、白の魔法使い。白の魔法使いが現れたのは、ワシの記憶によれば、300年も以前のこと。海人、どうかこの国の国王の話しを聞いて欲しい」
海人が国王に面会するのを期待しているのがわかる。
仕方ない。椅子から立ち上がった。
先に進むしかない。後戻りも出来ないし、海人には選択肢を選ぶことも出来ない状況だ。
ナナカミではないが、郷に入れば郷に従えだ。
「国王に会わせて下さい」
「おお、感謝するぞ、海人よ」
海人のこの先に何が待ち受けているかわからないが、全ては桜を救うためだ。
「桜ちゃん、待っていて」そう呟き心を決めた。




