第24話
次元の間に戻って来た。ナナカミと共に帰って来た。
桜を助け出すことだけでなく、その姿さえ見ることも出来なかった焦りもあり、気が急いたので、ランスゥにいち早く話した。
「ランスゥ、行った世界にバルディはいなかった。その代わりに、バルディの配下を1人ロケットに閉じ込めることが出来た」
獣人のガイツとマーニャに会い、彼らの世界は解放されたと思われる。海人は、ガイツの姿を思い出していた。ガイツは屈強で立派な男でもあったからだ。
ランスゥが皴の多い手を差し伸べて来た。
「海人、ロケットをワシに見せてくれぬか」
オーベルを閉じ込めたロケットをランスゥに渡した。
ランスゥは海人からロケットを受け取るとそれを開いた。
「おおっ、こ奴はバルディの配下のオーベルじゃな。知っておるぞ。どうやら、バルディの復活と共に奴の配下も復活したのは本当らしい。海人、やはり面倒なことになって来そうじゃ」
オーベルを閉じ込めたので、バルディの配下は残り12人。これが多いのか少ないのかはわからない。それとある疑問をランスゥにぶつけた。それが可能なら早いと思ったからだ。
「バルディの移動先がわかると言ったけど、バルディの配下に当たらず、直接、バルディを倒すことは出来ないのだろうか?」
ランスゥの答えは簡単だった。
「海人、すまん。バルディが移動する先は、鏡を見ればわかる。鏡が曇るからの。しかし、そこにバルディがいるという保証は出来ぬ」
そうだ。何か忘れていた。捕らえたオーベルに、バルディの居場所を聞けば良い。
「ロケットに閉じ込めたオーベルに、バルディの居場所は聞けないのかい?」
ランスゥがすまなそうに答える。
「このロケットに閉じ込めた者との連絡は出来ぬ。それをやるならば、ここから出さなくてはならぬからの。それに、オーベルが口を割るはずがあるまい。すまんが、この次元の間でオーベルを開放することは危険すぎる。ここは全てにつながっておるからな」
こうなったら、バルディを倒すしかないのか。引くことは出来ず、進むしか道はなかった。
「次はどこへ行けば良い?」
「すまんの」と、ランスゥが言葉を発したら、1枚の鏡が宙を飛んで来た。
「バルディはここに移動しておる。鏡が曇っておるからな」
鏡を細かいところまで見てみると、枠は様々な惑星によって囲まれていた。明るく輝く星もあり、月や太陽のように光を放つ星もあった。どこの世界かは、今の海人にはわかるはずもない。
そして、ランスゥが鏡について説明を始めようとしていた。
「この鏡の世界は、魔法使い。そう、バルディの誕生した世界じゃ。よって、この世界の住人は大小あれ、皆、魔法が使える。バルディのことじゃ。よからぬことを考えておるに違いない。海人、罠があるかもしれぬ。気をつけるのじゃ」
迷っている暇はなかった。ナナカミに声を掛けた。
「ナナカミ、行こう。バルディを倒し、桜ちゃんを助け出そう」
「任せておけ」ナナカミから頼もしい声が返って来た。
「ランスゥ、行って来るよ。今度こそ、バルディを倒してみせる」
そのランスゥから、意外な声が返って来た。
「海人よ、この鏡の世界…いや、実際に行ってみると良い。不思議な世界じゃからな」
何かがあるのだろうか?
「不安になることを言わないでくれよ」
「すまん、ここで、バルディについても知ることが出来ると思う。もう一つは内緒じゃ」
ランスゥは何かを隠しているようだ。
「もういいよ。俺に選ぶ道はないからね。ナナカミ、行くぞ」
そう言って、鏡に意識を集中させた。両目には赤い羽が浮かんだ。
曇っていた鏡は、海人の姿を映し出す。
そして、ナナカミと共に鏡の中へと入って行った。




