第23話
開口一番にライオン頭の男が言葉を発した。
「申し訳ありませんでした。異世界のお方」
そうして、海人の前で片膝をついた。周りの獣人達もそれに習う。今一つ状況がわからないので、思い切って、ライオン頭の男に話を聞くことにした。この世界に来た時から、何か違和感みたいなものがあったからだ。
「これはどういうことなのですか?あなた方の世界は、争いを嫌い平和を愛すると聞きましたが、俺はこの世界に来た時に、あなた方に襲われました。そして、囚われの身となった。何かおかしくありませんか?」
ライオン頭の男は、自分をガイツと名乗り、片手を上げて誰かを呼び寄せようとした。そして、獣人達が列を空け、その間から白い猫の顔をした獣人が進み出て、ガイツと同様に海人の前で片膝をついた。
猫頭の獣人は、自分をマーニャと名乗った。そして、ガイツが説明を始めた。
「異世界のお方。このマーニャは私の娘で、この国の神官を務めております。このマーニャが、バルディと名乗る男によって術をかけられたようで、石になってしまったのです。その2人が言うには、指示する鏡の前で待ち、そこから現れる者を捕らえろとの指示でした。マーニャは、この世界のバランス、私達には聞こえない、大気の話しが聞ける神官です。それ故、私達は、先の2人に逆らうことは出来ませんでした。術は同じ世界に留まっていないと解かれるようで、バルディは術の封印の力をオーベルに与えました。オーベルが倒されたことによって、マーニャの術は解かれたのでしょう。娘のためとはいえ、申し訳ありませんでした」
ガイツに続き、マーニャが話し始めた。
「大変失礼を致しました。そして、ありがとうございました」
声を聞く限り、女性のようである。
「お名前をお聞きしてよろしいでしょうか?」
一瞬、迷ったが、海人は素直に名乗った。
「海人、夏目海人と言います」
「海人様…」
「海人でいいですよ」
「はい、海人さん。本当にありがとうございました。これでこの世界も元の平和な世界に戻るでしょう」
海人は重大なことを忘れていた。桜のことを聞かなければならない。
「あの…バルディ、オーベルと一緒に女の子はいませんでしたか?」
「マーニャは石にされていたので、事情を知りません。私がお答えいたします」
ガイツから話しが聞けそうだ。
「バルディ、オーベルと名乗る者達は、まず私の自由を奪い、マーニャを石に変えました。マーニャを元に戻して欲しくば、あなたを捕らえろと指示し、私を自由にしました。2人です。私が知る限りでは、バルディとオーベルの2人だけです。他の者にも聞いてみましょう」
ガイツは立ち上がり、吼えるような声で周りの獣人達と話し始めた。
「皆の者、マーニャを石に変えた、バルディとオーベルの他に女の子を見た者はおらぬか?」
周りがザワザワしたが、誰も答えを発しなかった。
「海人さん、やはり、バルディとオーベルの2人だけのようです」
ガイツの言葉を聞き、今までの緊張が解けてしまい、ガッカリしたのもあって、頭が少しくらくらした。
「桜ちゃん…」
「海人、気を抜くでない」
ナナカミが囁くように言った。
そうだ。ここで立ち止まっては、桜を助け出せない。
「一先ず、次元の間に戻るぞ」
仕方ない。ナナカミの考えが正しいようだ。
海人は事の経緯を話し、この世界に来た鏡の前に案内してもらうことにした。
「そうでしたか。力になれなくて申し訳ありません。あなた方が出て来た鏡には、私とマーニャでご案内します」
そう言うと、マーニャも立ち上がり、「どうぞ」と声を掛けてくれた。
ガイツとマーニャのあとを追うことになる。その鏡は、歩いて20分くらいであろうか。螺旋の階段を登り、その頂上にあった。
「ガイツさん、マーニャさん。それではお元気で」
2人に別れを告げ、鏡に意識を集中させた。
鏡は海人の姿を映し出していく。目には赤い羽が浮かぶ。
そして、鏡の中へと入った。




