第22話
宣戦布告されたオーベルが少し困った顔をしていた。明らかに様子がおかしく、戦意が見られない。まるで逃げ出そうとしているかのようだった。
逃げようとしているのか?そう思っていたら、オーベルは敗走し出した。
ナナカミが囁く。
「奴の鞭は、この牢屋のように狭い場所では役に立たぬからな。したたかな奴じゃ、追うぞ」
逃げるオーベルの背中を追った。
この牢屋は地下にあったらしく、階段を上り、そして、突然眩しい光に包まれた。外に出れたようだ。だが、明らかな異変を感じ、耳にした。
何だ?この歓声は?周りを確認すると、どうやら闘技場らしき場所に出たらしい。オーベルを追うと、その先は闘技場の中心だった。
歓声の主は……獣人達である。犬頭、虎頭、鶏頭…様々な獣人達の顔が見てわかった。
オーベルは一人納得したような顔で、自信あり気に宣言した。
「皆の者、ショータイムだ。これから、この小僧を叩きのめしてやろうぞ」
歓声が一層大きくなった。
「小僧、この前は油断しておった。ランスゥの代理なら手加減はいらんな」
そう言うと、オーベルは戦闘態勢に入った。
「海人、行くぞ」
ナナカミの言葉が心強かった。しかし、海人は自分が今立っている場所、どうしてこんなところでオーベルと対決しないといけないのかと戸惑っていた。半ば呆然としていた。
「考えるのは後で良い。今は目の前の敵に集中しろ」
ナナカミの後押しで、迷いは消え、周りの完成は聞こえなくなった。自分が集中しているのがわかる。合気道の試合の時のようだ。心が静かに静かに集中して行く。
「今回は逃がさない。桜ちゃんの居場所を教えてもらうぞ」
そう言って、オーベルと睨み合った。戦いの始まりである。
オーベルは距離を置いている。この間合いは、オーベルの鞭の距離だ。その神速ともいえる、オーベルの鞭がしなって飛んで来る。…だが、今の海人には、そのオーベルの鞭の動きが見えていた。それだけではなく、体が信じられないくらいに軽かった。
「海人、飛び込むぞ」
ナナカミの声と同時に、オーベルに向かい突進した。
オーベルの鞭が飛んで来る。体が軽い。躱せる。神速の鞭を余裕を持って躱すことが出来た。
右に左に前に後ろに、躱してオーベルとの距離が縮まる。そして、オーベルの顔に焦りが見えた時に、その隙をついた。ナナカミに気を溜めるように集中して一突きした。オーベルに海人の一振りが当たった。オーベルは呻き声を上げると驚愕の表情を浮かべながら、仰向けに倒れた。
倒れたオーベルに駆け寄る。
「桜ちゃんはどこだ?。バルディはどこだ?」
答えは素っ気ないものだった。
「例え知っていても、貴様に教えることなどない。貴様ごとき、バルディ様にかかれば指一本とも必要とはしまい」
「言え、オーベル!」そう言っても、「言うくらいなら、この命くれてやる」オーベルは口を割らなかった。
「海人、このままでは埒が明かん。一先ず、ロケットにオーベルを封じ、次元の間に戻ろう」ナナカミの声だ。
どうにもならないのだろうか?だが、今はナナカミの考えに従うのが正解のようだ。
海人はロケットを開き、鏡に意識を集中させた。ロケットの鏡は淡く光を放ち、姿を映し始めた。そして、オーベルの襟首を掴み鏡の中へと放り込んだ。だ。オーベルは海人の手の平より小さいロケットに吸い込まれた。
「ナナカミ、次元の間に戻ろう」そう言った時、海人の前に一人?の獣人が進み出て声を掛けて来た。
「お待ち下さい」
そう言った獣人の頭は、ライオンの頭であった。




