第21話
体が痛く、痛みで目を覚ませた。
バルディのいるであろう、鏡に入ったはずなのだが、どういうことだろう。ぼんやりとした意識が回復すると、自分の置かれた状況がわかった。
両足には鎖に球状の重りが付けられ、辺りの様子を見ると、そう、牢屋のようだった。
鉄格子があり、粗末な食事を盛られた食器が床にあった。囚われの身か。
なぜ、海人は自分がこんな状況に置かれているのかが、わからなかった。
「おい、大丈夫か?」
この声はナナカミだ。
そうだ。海人はバルディを追って、鏡に入ったのだった。
鏡を出たところを何者かに襲われ、今の状況に至っているのだった。
先手を打たれたか。どうやら、バルディに先を読まれたようだ。
海人を襲ったのは、バルディかはたまたその配下なのだろうか、そう思案していると、鉄格子の前に一人の男らしき人物が目に入った。
よく見ると、その男は頭が豹で、体は人間のように見えた。バルディの配下なのだろうか。それとも、バルディとは無関係のこの国の住人なのだろうか。
ランスゥは、この世界の住人は争いを知らない平和な世界だと言っていた。
しかし、海人の両足は鎖に重り、そして、牢屋に閉じ込められている。
ナナカミなら何か知っていそうなので、聞くことにした。
「どうなっているんだ?それに両足の重りと牢獄。これはどういうことだ?」
ナナカミの答えは簡単だった。
「鏡を出たところをこの獣人たちに襲われたのじゃ。不意打ちというのじゃな」
なぜ、争いを知らぬ、この世界の住人が襲って、牢獄に閉じ込める必要があったのか疑問が残る。しかも、鏡を出たタイミングで不意打ちされるとはどういうことなんだ。
その時である。不遜な声が聞こえた。
「惨めなものだな小僧。俺様がこんな小僧にしてやられたとは、未だに信じられん」
聞き覚えのある聞くものに不快感を抱かせる声。そうだ。オーベルだ。
気が付くと、牢屋の前で海人を見て笑っている。邪悪な笑みだ。
「海人、脱出するぞ」
ナナカミの声が聞こえてた。しかし、ナナカミは今、手元にはない。
手の届かない牢屋の外の壁に立て掛けられてている。
ナナカミの判断は早かった。
「ワシを呼べ。急ぐのじゃ」
ナナカミを心で読んでみた『ナナカミ!』
ナナカミは目に見えぬ速さで、まるで瞬間移動したかのように海人の手に納まり、淡く光を放っている。
驚いたのは、オーベルで、憤怒の形相で海人を睨んでいる。
「小僧、やる気か!その状況で何が出来る。お前は囚われの身だ」
「この邪魔な鎖はワシが断ち切る。その後に、オーベルの相手をしてやろうではないか」
ナナカミがそう言うと、自然と体が動いた。両足に付けられた鎖は、断ち切られ見事な断面を見せ、海人を解放した。
「このまま牢屋を破り、オーベルを倒すのじゃ」
ナナカミの言葉に従い牢屋の檻を破った。
鉄で出来ていたであろう鎖、それに牢屋の檻をナナカミはいともは簡単に断ち切ってみせた。
オーベルだ。次の相手は、オーベルである。
牢屋を守っていた獣人は、驚き逃げて行った。
オーベルは顔を引きつらせていた。
「オーベル、今度は逃がさないぞ」
海人は、オーベルに向かって宣戦布告した。




