第16話
「それでは始めるとするかの」
海人の目の前に一枚の鏡…古びた古城にでも飾ってありそうな鏡が宙を飛んで現れた。宙に浮くその鏡は、この次元の間のどの鏡とも違い、曇り、時が止まっているかのようだ。
ランスゥがその鏡について説明をしようとしていた。
「海人よ、この鏡には奴、バルディをワシが封じ込めた鏡なのじゃ」
話しは続く。
「バルディは、そう、海人、お前さんの世界で言う『魔法使い』、しかも、強大な力を持ち、邪悪な心を持っておる。そのバルディを再度鏡に閉じ込めなければ、いずれこの次元の間も奴に支配され、全ての世界に災い、不幸がもたらされることになる」
魔法使いだって?
ランスゥの言葉が信じられなかった。その心を読んだかのように、ランスゥは話しを続けた。
「お前さんの持つ強く清い心が必要じゃ。しかし、今のお前さんでは、バルディには到底敵うまい」
当たり前だ。魔法使い相手にどう戦えばいいのだろう。
「そこで、海人、お前さんにいくつかの力を授けようと思う。知っておるぞ、合気道というのじゃな。それも役に立つじゃろう」
ランスゥが一度目を閉じて開いた時に、一本の剣…長剣らしきものが目の前に現れた。もはや、何が起ころうと驚くことはない。良く見るとその長剣は、刃は所々が欠けており、表面には錆も見て取れる。
海人の心を読んだようにランスゥが言った。
「海人よ、その長剣を手に取ってみるがよい」
選ぶ道はないので、素直に長剣を手にしてみた。その瞬間、驚くことに、長剣は光を発し、その姿を変えようとしていた。刃の欠けはなくなり、鋭さを蘇らせ、錆も消え失せ、光を放っている。
ランスゥがニンマリとして話しを始めた。
「合格じゃ。どうやら、その剣に選ばれたようじゃな。その剣は持つ者の気…心じゃな。それによって、本来の力を発揮しするものじゃ。さすれば、剣にも使い手を選ぶ権利があるのじゃ。海人、お前さんは選ばれたのじゃ」
海人は手にある、光り輝く長剣を改めて見た。日本刀ではない。どうやら、西洋の剣のようだ。
「おい!、若いの。良い清んだ気を持っておるな。しかも、こんなに強い気と心は初めてだぞ」
どこからか声が聞こえた。ランスゥではない別の声が聞こえた。
「ここだぞ、わからんのか?お前さんの手にしておるのは何じゃ」
一体何なんだ?剣がしゃべった?
「その通りじゃ」
ランスゥはまたニンマリとして話を始めた。
「海人よ、その剣は『青龍剣』じゃ。柄を見てみるとよい」
ランスゥに言われるままに柄を見てみた。驚くことに、柄には龍らしき姿が浮かび上がっているではないか。
海人の世界の龍というと、空想上の生き物で、口から炎を吐き、自由に空を飛ぶ…不謹慎ながら想像してしまった。
青龍剣から声が聞こえる。
「ワシは青龍剣と呼ばれておるが、本当の名がある。それを知った者にワシは力を貸すことにしておる」
本当の名前だって?
「教えて下さい」
自然と言葉が出た。
「よかろう、ワシの名は『ナナカミ』じゃ。よく覚えておくのじゃぞ」
ランスゥがナナカミについての説明をしようとしていた。
「ナナカミは持つ者の気で力を発揮するのじゃが、選ばれたのは、海人、お前さんで二人目じゃ。わかっておる。剣が使えるかどうかじゃな。ナナカミには命と言っていいかの。それがあり、手にすれば、使い手の気の力で自然と動いてくれるのじゃ。故に、この剣をお前さんに授けたのじゃ」
頭がおかしくなりそうだった。この次元の間の存在といい、しゃべる剣。本当にどうなっているんだろう。何もかもが信じれない思いだった。
そんな海人をランスゥは全てお見通しのようだ。大切なことを伝えた。
「海人よ、この次元の間では、気づいておるかもしれんが、時間はその歩みを止めておる。さすれば、詳しく説明しようぞ」




