第14話
光に体を包まれる。意識は遠く、自分を自分で遠くから眺めるかのような感覚だった。
「…………」
「海人、大丈夫か?」
そう呼ぶ声が聞こえる。…父の声だった。
「父さん…」
父が体を揺すぶり、遠くにあった意識が戻ったかのようだった。
そして、海人は父から驚くべき事実を聞くことになった。本当に驚くべきことで、それが自分でも信じられないくらいだ。
「海人、何があった?時空の鏡に入れなかったのか?
父の言葉の意味がわからない。
「何のことだよ。俺は時空の鏡に入ったよ。そして、その中である人物と出会ったんだ。父さんこそ何を言ってるんだ?」
父の顔には驚きが見て取れた。
「海人が時空の鏡に入ったと思ったら、そのまま弾き出されるかのように出て来たぞ」
「父さんこそ何を言ってるんだよ。俺は時空の鏡に入って、さっきも言ったけど、中である人物に会った。本当だよ」
「もしかして…そうかもしれんな」海人の父は呟くように言った。
「どうやら、時空の鏡の中のでは、時が止まっているか、その進行が物凄く遅いのかもしれん」
驚くべき父の言葉だった。しかし、父の言葉を疑うことも出来ない。それが本当のことだと思われた。
「そのようだね」
だが、今は時間が惜しく、父に詳しく説明できない。
そして、海人はあることを思い出した。あれがあったのだ。自分の左手にある、ランスゥから渡された手鏡を見てみる。確かにあった。
「詳しく説明している時間はないけど、俺は時空の鏡に入り、ある人物と出会ったんだ。今、それを証明してみせるよ」
海人は左手に持つ手鏡に意識を集中させた。
両目には赤い羽が浮かび上がる。
手鏡が淡い光を放つ。
そして、右手を手鏡の中へと入れた。誰かが手を握り返してきたのがわかる。
海人は思いっ切り、右手を手鏡から抜き出した。
現れたのは、一人の女性だ。
続いて、もう一度、右手を手鏡に入れた。同じく、握られた感触を確かめてから、右手を手鏡から抜き出した。
今度は一人の男が現れた。
父が叫ぶように言葉を発した。
「伊東君、それに、高木君」
父に呼ばれた二人は、父を見ると声を上げて叫んだ。
「所長!!」
安心したように父が応える。
「二人とも、無事だったんだな。安心したよ。海人…良くやってくれた」
海人にとって、二人はどうでもいい存在だったが、父の喜ぶ顔を見るとほっとした。
父さん、これから、また俺は時空の鏡に入って、桜ちゃんを連れ戻さなければならない。だから、また時空の鏡に入るよ」
父に少し困惑した表情が浮かぶ。
「海人、時空の鏡に加える電力を貯めるために、今からでは半日は掛かってしまう。時間が欲しい」
海人にその必要はない。それを海人は、ランスゥから授かったからだ。
「父さん、俺は時空の鏡の中である人物に出会い、ある力をもらったんだ。だから、その必要はないよ」
1秒でも時間が惜しい。
「必ず桜ちゃんを連れ戻して来るから」
父にそう告げ、海人は時空の鏡に意識を集中させた。両目には赤い羽が浮かび上がる。時空の鏡は、今や海人の姿を映し出している。
そして、迷いなく時空の鏡へと入った。




