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『あなたを不幸にしてるのは自分だとわかってるけど』
住むことになったマンションの前に到着したわたしは、エントランスへと繋がる自動扉のそばに置かれたベンチに腰かけた。
わたしは今日、お姉ちゃんの真似をしてお兄ちゃんを騙した。結果的に、騙せはしなかったが騙そうとしたことには変わりない。
そしてわたしはまた、お兄ちゃんに隠し事をした上に、最低な嘘を吐いた。
それは、お姉ちゃんがお兄ちゃんの好意にほんとは気が付いていたこと。それと、お姉ちゃんがお兄ちゃんに対してほんとは好意を抱いていたこと。
それらの真実をお兄ちゃんに隠したのは、けしてお兄ちゃんのためじゃない。
全てはわたしのためだ。
わたしのためにお兄ちゃんに嘘を吐いた。
「ごめんね、お姉ちゃん。本当にごめんね……お兄ちゃん……」