三題噺第33弾「火」「見返り」「穏やかな大学」
「これが“見返り”だ」
札束を無造作に取り出し、机の上に置いた。一万円札の束が百枚はあろう量だった。
「いつもすまんね……」
「悪いことはいつもそっちにやらせてもらってる。こっちはただ金を払っているだけだ」
今回はある館に“火”をつけて、様子を見ていることだ。
「お主もワルよのぉ。こんな依頼で、こんな大金を叩いてくれるんだから」
「フッ。適材適所なだけさ。それじゃあまた頼むわ」
ガチャリ。ドアを閉め、追手が来ないことを確認しながら大通りを進む。
やがて、火をつけられた“穏やかな大学”の前に来た。
この大学にはある噂話があった。
穏やかな大学には、不穏な可能性があり、いずれクーデターが起きるというものだった。
その噂を信用してもいいかわからないが、芽を潰すのが彼の仕事だった。
次はどんな噂で事を運ぶのか、それは彼次第。
火をつけられた大学の学生は見事にチリジリになっていた。
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