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2.


「けむっ!」


「わはは! 良い匂いがするなあもう食べていいかー?」


 結局、ディーノが店の前で勝手にコンロを組み立て始めてしまい、俺は流されに流されて、野菜たちを仕方なく囲んでいた。ディーノは本当に思い付きだったらしく、肉の一切ない、俺の店からディーノが買った野菜だけのバーベキューだった。ちなみに迷惑料として、値引きは一切しなかった。


「肉のないバーベキューなんて新鮮だな。」


「野菜だけ(・・)にってか。オスカー上手い事言うなあー」


 真昼間から男二人で小さな網を囲んで煙をもくもくさせている俺達を通行人は不思議そうにチラチラと見ては過ぎ去っていく。その視線が気になってどうも全身がむず痒かった。一応仕事中なのに。悪い事をしている気分だ。


「そういえば、お前何で帰って来たんだ?」


「羽を休めることも飛ぶには必要と言うかさー」


 ナスやプチトマト、ピーマン、トウモロコシを中心に焼いているが、特に調味料や調理をせず丸々網の上に置くだけ。それは八百屋である俺が「素材の味を……」なんて偉そうに提案したわけでは無く、これもディーノの「野菜はこのままでおいしいんだ!」という独断の元だった。


「にしてもこんな立派な八百屋を持って嫌々だなんてもったいないなー」


ディーノは俺が店の裏から用意してきた、元々トマトが入っていた大きな缶の上に座ったまま、店をぐるっと見渡して不思議そうに尋ねる。


「俺が昔からコミュニケーションが苦手なの、お前なら知ってるだろ……」


「そうだったっけ?」


 俺は肩をすくめてそう呟いた。商店街の八百屋に大切なのは顧客や地域の人達とのコミュニケーションにあるように思う。それは小さい頃から見てきた父の姿がハッキリと正解を示していた。昔から引っ込み思案で友達もそう多くなかった俺は自分から話しかけると言う事が苦手で、どうしても迷惑じゃないか、変じゃないかと考えてしまい、客が帰ってから後悔する毎日だ。


「俺がお前の様に誰とでも隔てなく話せる奴だったら。そう思うよ。」


「そうかな……」


返事をするディーノの声がちょっと小さいように感じたが、顔を上げても彼の顔には煙がモクモクと覆いかぶさって全然見えなかった。


「やっぱり俺はお客さんを相手にするんじゃなくて、同業者を相手に仕事をする方が向いていると思うんだよな。」


 高校生の時、オスカーにも言った事があると思う。俺の将来の夢はロボットエンジニアだった。今となっては本当に夢だったなと思うけれど、あの頃は結構本気だったように思う。


「でもオスカーは八百屋に向いてるとも思うぞ?」


「その根拠は?」


「うーん、直感!」


「お前って奴は……」


相変わらず、適当で、自信家で、純粋な奴だ。


「強いて言うなら、うーん、そのエプロンが超似合っているから!」


「ひねり出してそれかよ!」


 恥ずかしさは何処へ。思わず大声を出してディーノにツッコみを入れてしまった。道行く人が何人か驚いた様にこっちを見つめているのが目の端で確認できた。本当は小突きたかったが距離が足りなかったので、煙を彼の方に仰いでやった。


「うわ、ごめんって!」

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