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嫌売屋  作者: 梨野 つぶて
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case.0 ~日向 夏樹~ [05]

階段を登りきって、5階まで辿り着く。


「ここ、俺の事務所。」「あ、おれの名前は椎名雅彦(しいなまさひこ)よろしく。」とドアの前でさらっと自己紹介される。


「ただいま~。」椎名は自宅に帰ってきたかの如く、ごく自然に、リラックスした様子で建物の中に入る。


「おかえりなさ~い。」何人かの声が彼を出迎える。


ドアを開けると仕切りなどは無く、すぐオフィスが広がっていた。デスクが五つ。ちょうど小学校の給食班を作るように並べられていた。


椎名の後ろで、観察するようにオフィスを見回していると「所長、お客さんですか?」「飲み物はコーヒーか緑茶、どちらがいいですか?」と愛想良く笑いながら女性が話しかけてきた。


栗毛色のロングヘアーにはさりげないウェーブがかかっていて、後ろのほうでまとめ髪にしてある。目鼻立ちがはっきりとした相当な美人だ。着ている洋服は黒のニットにウエストがリボン状の赤のロングスカートという出で立ち。全体的に清潔感があり女子アナにいそうだなという印象だ。


目の前に表れた美人に目を奪われていたが、先ほど耳に入った言葉にひっかかる。所長。そういえば椎名の事を所長とか呼んでなかったか…椎名がここの「所長?」思わず声が出る。


目を丸くし、彼を見つめると「そう、俺ここの所長なのよ~。」ポリポリと頭を掻きながら、彼はまたにへらと笑う。


「そんで、君にここの仕事を手伝って欲しくて…」


「は?」「俺、アンタがただついてこいって言うから、ここに来ただけで、そんな話聞いてない。」


あまりにびっくりして、椎名の話を遮ってしまった。そんな事お構いなしに彼は続ける。


「うん、いま言ったからね~。」「あ、いまって別の仕事してる?」


「してませんけど…」


「じゃあ、ちょうどいいじゃん!一緒に働こうよ!」


彼の屈託のない笑顔に押しきられ、俺はこの事務所で働く事になってしまった。


ええい。この際、どうにでもなれ。


椎名が自分のデスクに腰かけたところで俺に問いかける。「あ、ところで、まだ、名前聞いてなかったね~。」


「ひゅうが、日向夏樹(ひゅうがなつき)です。」

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