case.1 大久保 真由美[07]
「失礼します。大久保様、本日のお会計ですが、チラシに書いてある通り相談料はこちらになりますね。」
再び現れたポニーテール女は、領収書を差し出し、会計を始めた。料金については、心療内科などの医療機関のカウンセリング料と思えば妥当な値段なんじゃないかという所だ。
なんだ、ここはお悩み相談所のような仕事をしているのか。人に嫌われる能力を売るなんて大層なことを言うから、催眠術だとかマインドコントロールのような怪しい行為を連想したが、意外にまともな商売じゃないか。
事実、目の前の依頼人は悩みに対してこれから自分がどうしたいか、自分自身で答えを導きだし解決に至った。
「じゃあ、お支払お願いします。」
「白石さん、良かったら連絡先交換しましょう。今度また、ゆっくりとお話させて下さい。」
「もちろん、いいですよ。」
彼女は今回の相談でだいぶ前向きになったのではないだろうか。現に一度顔を合わせただけの人間と連絡先交換まで行ってしまうほど積極的だ。
「本当にありがとうございました。」
大久保様は立ち上がり深々とお辞儀をした。
「また何かありましたらいつでもご連絡下さい。」
「プライベートの方でも気軽に連絡してくださいね。」
白石さんも席を立ち見送る体制になる。
相談を終えた後にこんな清々しい気持ちになれる仕事だったら、これからも続けていけそうだな。
パタン。と閉まる扉に向かって、彼女のこれからの人生が明るいものでありますようにと心の中で呟いた。




