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嫌売屋  作者: 梨野 つぶて
11/13

case.1 大久保 真由美[05]

「はぁ!?」


一斉に視線が集まる。しまった。思わず声に出てしまった。


「申し訳ありません。」俺はすぐに謝罪した。


すると白石さんも「申し訳ありませんでした。日向は入社してから日が浅く、接客に不慣れな点がありますがご容赦下さい。今後失礼のないように私からも指導致しますので。」と謝罪し、俺のフォローをしてくれた。


初日から俺の尻拭いをさせてしまったな。申し訳ない。


「いいんです。日向さん、先ほど美味しいコーヒーを淹れてくださったでしょう。」「私、ここに来たときすごく迷っていて。でも、コーヒーのおかげで凝り固まっていた心がほどけたというか、とにかく、すっと胸が楽になったんですから。」照れ笑いを浮かべながら大久保様は俺の失態を水に流してくれた。


何とかこの場は収まったな。しかし、これからの計画ってなんだ?義母に何か仕掛けようとでも言うのか?まさか、この仕事って復讐屋なんじゃなかろうか。何か危ない匂いがする。この仕事に一抹の不安を覚えた。


それでもなお話は先に進んでゆく。


「では、大久保様にいくつかお聞きしたいのですが、義母に嫌われる為の手段はどのようなものか、それは自分だけで実行できるものか、その計画には協力者もしくは我々の同行が必要か。そして、計画を実行した後、義母とどうなりたいかをお答え下さい。」白石さんは慣れた様子で淡々と質問していく。


大久保様はしばらくの間右斜め上の空間を見つめ、視線をもどした後、質問に答えた。


「私、いい嫁を演じるのを止めます。」


「そして、義母に直接言います。本当は今まで言われたり、されたりして嫌だと思ってた事柄を。」


「計画は自分一人で実行します。これは私と義母の問題だから。」


「義母とは縁を切りたいと言ったけど、まず、同居を解消して一人で出て行って欲しい。そうしたら、その後は、1ヶ月に1日ぐらいは一緒に過ごす時間を作ってもいいかな。」


最初に会った時から変わらず、品の良いおっとりとした喋り方ではあるけれども、その言葉ひとつひとつには彼女の覚悟が詰まっているようで、聞いている側にもその重さが伝わってきた。

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