プロローグ
「はぁ…」
白い霧のようなため息が宙に浮かんでは消える。
さっきからこうして時々ため息をついては、高架橋の下に走る電車をじっと見つめている。
もう何分経っただろうか。
頭の中では、俺の事を馬鹿にしていった人間達の言葉が反響し続けていた。
「日向くんと手を繋ぎたくありません!」
「日向~俺らバイトあるから掃除よろしくなぁ~。」
「お前、なんでそんな鈍臭いの?」
「やだ~あいつキモ~い!」
「日向!このミス何回目だ!?」
「そんなに時間がかかるなんて時間の使い方が下手なんじゃないのか?」
「あの人、ニヤニヤしてずっとこっち見てきて怖いんです。なんとかしてくれないと仕事になりません。」
「…お前さぁ、もう仕事やめれば?」
ぐるぐる、ぐるぐる。何度も頭を廻る罵倒の言葉。
「俺が、なにしたって言うんだ。」
これまで、人に迷惑をかけまいと生きてきたのに。
人にはなるべく穏やかに接し、にこやかな笑顔を絶さず、困っている人がいれば助けてきた。
なのに、現実では誰にも感謝される事なく過ごしてきた。
むしろ、馬鹿にされ、蔑ろにされ、粗末に扱われてきた。
「もう、いいや。」
そう、思っているのに体はそこから動かない。
息を白く染める寒さは、そこから動く体力さえ奪っていた。
一歩身を乗り出せば楽になれるのに。
そんな事を考えているとぽんっと肩を叩かれた。
顔を上げると見知らぬ男。
「なんですか?」か細い声で彼に問いかける。
その男は表情をにへらっと崩し
「腹減ってない?」と声をかけてきた。
初めて小説を書きました。
拙い文章ですがお付き合い下さい。