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クオリアの研究

 研究所の中は白い金属がむき出しの無機質な空間で、廊下にはドアだけがいくつか並んでいた。女はそのうちの一つに私たちを通す。そこだけは一般的な応接室のようになっていて、最低限の調度品などがしつらえられていた。


「では改めて。ようこそ研究所へ。私の名前はクオリア。世界と異世界について研究している」

「私は異世界から召喚された救世主の幸乃」

「私は幸乃さんに救われたドルヴァルゴア神官のシアと言います」

 ドルヴァルゴアの名前が出るとクオリアは一瞬だけ嫌な顔をする。まあそうだよね、ドルヴァルゴアが一人いるだけで話がめちゃくちゃになるもんね。


「ではまず私の研究についてだけど、この世界には世界間転移魔術というのが存在する。教会があなたを召喚した魔術や、魔王軍の人も使おうとしていると聞いたことがある」

 おそらくセラのことだろう。

「それらは基本的に特定の人物や物体を転移させる魔術であり、私が使おうと思っているものとは違う。私の魔術の原理はそもそもこの世界ともう一つの世界の距離を近づけることで移動を容易にしようというものだ」


「世界と世界を近づける?」

 火星大接近みたいなものだろうか。私の中に二つの星が引かれていくイメージが浮かぶ。ちなみに私は火星大接近はよく分からなかったクチだ。

「そう。私の仮説によれば世界と世界は魔術的な距離によって阻まれている。だから今ではどんなに優れた魔術師でも魔石から魔力を借りなければ人を転移させることは出来ない。しかし世界と世界を接近させることが出来れば少ない魔力で世界同士で移動できるようになる」

 魔術的な距離って何だろう。距離を「何光年」と表現するように「魔石何個分」と表現するのだろうか。


「よく分かんないけどすごいですね」

 私はお茶を濁したけどよく考えるとそれはそれでまずいのでは? この世界の人が私たちの世界に来たいかは分からないけど、もし来たいと思ってしまえば来れるということではないか。

「でもそんなこと出来るんですか?」

「私の仮説ではね。ただ、異世界の存在を感知するにはその異世界を象徴する魔力が必要ということだ。簡単に言えば、犬に誰かを探させるのにその人の持ち物がいるみたいなものだろうか」

「なるほど」

 分かるような分からない話だ。そういう研究をしているところに偶然……ではないがのこのこ私がやってきたということか。


「という訳で、あなたが実験に協力してくれてかつ実験が成功すればあなたを元の世界に送り返すことが出来る。どうかな?」

 クオリアは私を見つめる。不思議とその目には期待は見られなかった。普通なら念願の実験が叶うならもっと私に頼み込んでもおかしくはないような気もするが。

「もし実験が成功した後、再び世界と世界の距離を遠ざけることは出来ない?」

 一応聞いてみる。

「うーん、今のところそういう手段はない。もちろん出来るならそれもやってみたいがね」

「じゃあ、世界間移動する方法を隠すとかは?」

「別に敢えて広める気はないが、世界と世界の距離が近くなればそういう研究をしている者は世界間移動のコストが下がっていることに気づくだろうな」


 要するに、私が彼女の方法で帰還するのはその後誰かが追いかけてやってくる可能性が高まるということだ。それは嫌だな……。だけど、そもそも私が来なければ彼女は一体どうやって研究を完成させるつもりだったのだろう。

「ちなみに、もし断れば?」

「どうもしない。他にも交渉中の相手がいるからそちらと話を進めるだけだ」

「他の相手!? それはつまり異世界人ってこと!?」

「そうなるね」


 クオリアは何気なく言ったが、さすがに私は驚愕した。この世界に私以外に同郷の人物がいるというのか。まあ、中世ヨーロッパとか古代ローマとかから移って来た人とかだったら同郷じゃないけど。私の興味は一気にそちらに傾いた。

すいません、さっきまであとがきでネタバレしてました><

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