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死者の王 Ⅱ

 そう言って走ってきたのは剣士風の男であった。何だこいつは、と思ったがやはり人間である。

「あの、せっかくいいところなのに無粋なまねはやめてもらっていいですか」

 シアが冷たい目で男を睨みつける。ああ、普段はあんなにいい娘なのに……。

「いや、人を死者の軍勢で包囲してくる奴は大体悪いでしょ」

「違うって。これも君たちと仲良くなりたいというこいつなりの意思表示なんだよ。なあ」

「もちろん。常に我は君たちがどうしたら我が軍の幹部になってくれるのか、考えている」

 ディクセルは至極まじめな表情で言った。

「どうしてもならないけど」


 が、男は諦めない。

「待ってくれお互い。ディクセルは死んだセシルを生き返らせるために色々研究してくれてるんだ」

「誰?」

「俺の恋人だよ。はやり病で命を落とした」

 男は悲しそうに目を伏せる。面倒な状況になってきた。別に悪いことをしている訳では全くないのになぜか良心に呵責を感じさせられる。

「じゃあ、こいつが包囲を解く。私たちはそのまま引き下がる。それでいい?」

「そうしようでぃく-」

 男が言いかけたときだった。


「いいわけないです幸乃さんこいつらは私がまとめて始末するんで下がっていてください」

 シアがどすの利いた声で遮る。

「ああもうドルヴァルゴアが一人いると話が滅茶苦茶だ、まとまる話もまとまらない」

 男は頭を抱える。それには共感しないでもない。


 一方、ディクセルは私に話しかけてくる。

「ちなみにそこのあなた。あなたは人を生き返らせることは出来るのでは?」

「ああ……」

 言われてみれば闇属性魔術は魂に干渉することが出来る。正直、絶対出来ないとは言えない。もちろん、絶対出来るとも言い切れないが。

「我がセシルを生き返らせたいという思いは本当だ。今のままでは操り人形を作るのが精いっぱいだがな。だが、この世界を支配すれば人を生き返らせる魔法も開発できるかもしれない」

「なるほどね。一応提案なんだけど、人を生き返らせるほどの魔術には莫大な魔力がいる。だから魔石をくれたなら試してみてもいい」

「ほう、魔石か……」

 ディクセルは考え込む。そして値踏みするように私を見た。魔石は貴重だ。初対面の私に託していいかどうか考えているのだろう。

「もし失敗したら?」

「何で好意で試してるのに失敗したときの責任まで負わないといけないの?」


 が、そんな風に話している間にも戦闘は始まっていた。

「カタストロフ!」

 シアは叫んで頭上に手をかざす。そこにまばゆいばかりの光を放つ球体が現れる。そんなシアに襲い掛かる。死者の軍勢。が、次の瞬間光の球がはじけ飛ぶ。

「ぐわあああああ!」

 死者の軍勢は一瞬にして弾き飛ばされる。それを見てディクセルの表情が変わる。シアの魔法が協力だから私も強力な魔術師と思われたのかもしれない。まあそうだけど、それと死者の蘇生が成功するかは別問題だ。


「分かった、責任は問わないからあれを止めてくれ」

「えぇ……」

 始まってしまった戦闘を止めるのは難しい。そしてこいつシアの迫力に屈している。最初は私たちが脅されてたような気がするんだけど。

「という訳だからシア、止まって」

 私は弱々しく言ってみる。

「大丈夫です、早めに全滅させるので」

「うん、そうじゃなくて交渉成立したから待って」

「はい?」

 シアはキレ気味に言ったが、一応魔法は止まる。一方、ディクセルも消耗を避けたかったのか軍勢を下がらせる。


「せっかくいいところだったのに」

 シアは不満気に言う。とはいえ何とか戦闘は終了した。

「では気持ちが変わらないうちに頼む」

 男が私に手招きする。そこに私が続き、少し未練がましそうにしていたシアが続き、そんなシアを警戒するようにディクセルが続いた。

ああもう、ドルヴァルゴアが一人いると滅茶苦茶だよ ←好き

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