リッチー
その後も私たちはだんだん魔王城へ向かって歩いていった。魔王城に近づいていくにつれ、魔物との遭遇頻度は上がっていった。普通に道でゴブリンやオークとすれ違うし、魔物の集落らしきものも頻繁に見かけるようになっていった。
さらに近づいていくと、だんだん私たちを見て襲ってくる魔物が増えてきた。道を歩いてきたトロールがいきなり大斧を振り上げて襲ってきたのを皮切りに、空を飛んでいた鳥が急降下して襲ってきたり、すれ違ったと思ったオーガの集団が後ろから奇襲してきたりした。そのたびにセラは剣を抜いて一発で切り捨てていたが、一度地中から巨大アリのような化物が襲ってきたときはさすがに一撃もらっていた。
「すごいね」
私は素直に感心した。セラの本命は魔法なので、言い方は悪いが片手間に学んだ剣術でそこそこ強そうな魔物を一刀両断にするとは。
「お金には余裕があるからいい剣を買ったところはあるわ。この剣は使い手の魔力を威力に載せてくれるから便利よ」
言われてみれば、剣を振るうときに剣がぴかぴかと輝いていたような気がする。道理で、魔物の固い皮膚を一撃で切り裂いていた訳だ。
「そういうのがあるなら私も買おうかな」
魔力があるだけで威力が出る。まさに今の私に必要なものではないか。だが、そんな私をセラは冷たい目で見つめる。
「あなたお金持ってるのかしら」
「……」
私は沈黙した。
「そうそう、ちょっと友達がいるから寄ってもいいかしら」
不意にセラが変なことを言った。
「え、友達とかいるの?」
「……喧嘩売ってる?」
セラがちょっと不機嫌な顔をする。
「いやいや、決してセラが友達いなさそうとかじゃなくて、魔物に友達になれそうなやつなんているんだなということで……」
「魔物=狂暴という訳ではないわ。彼女は自らの魔術で不死に近い存在になったリッチーよ。ただ、その魔術は禁呪だから人間社会では生きていけず、仕方なく魔王領に居座って魔法の研究を続けているのよ」
「その人もセラさんみたいに芸術家気質的な存在なの?」
「ちょっと、今更だけどそのさん付けやめてくれないかしら」
本当に今更だけど。ちなみに、魔物の領域に入ってから一週間近く経つ。最初は毎日足が痛くて痛くて仕方なかったが、ようやく慣れてきていた。セラとも多少は仲良くなった気がしなくもない。
「でもいきなり呼び捨てなんて陽キャみたいだし」
「???」
どうやら陽キャに相当する言葉はこの世界にはなかったようだ。翻訳がうまくいかなかったのか、セラは困惑する。
「さん付けって人間っぽくて好きじゃないの」
確かに魔物とかがさん付けで呼び合っている様子は全く想像出来ない。つまり、魔物は陽キャ……?
「はあ……じゃあセラでいいや」
やはり呼び捨ては慣れない。なんか居心地が悪くてむずむずする。普段マックとかしか行かないのに間違えておしゃれな喫茶店に入ってしまったときのような気分だ。
「でも、セラも私のことあなた、としか呼ばないでしょ」
私は深く考えずに反撃する。が、二秒で後悔する。
「……幸乃。これで満足?」
やっぱり慣れないものは慣れない。急にディスコにでも放り込まれたかのような気分だ。でも自分で言い出したことなので今更撤回も出来ない。私は無言で頷いた。そして照れ隠しに話題をそらす。
「何だっけ……それで。リッチーの話だっけ」
「そ、そうよ。魔王城の近くに来たらいつも立ち寄ることにしているわ。彼女、ミルガウスの研究はいつも有益だから」
「ふーん」
ところで、私のような異世界人の魔法はこの世界に元から存在する魔法と同じなのだろうか。もし似ている点があればその人の研究は私の役にも立つかもしれない。というか、小説を消さずに魔法を使う方法を知りたい。私もせっかく力を手に入れたのだから無双したいという気持ちは人並みにある
異世界に召喚されて出会ったヒロインをいきなり呼び捨てする主人公は陽キャ(断言)
あれ? 主人公最初の方でいきなりエリアを呼び捨ててたような……
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