第10話:彗の事情、由奈の事情、それから。
物語の都合上、先にリアル回を書きました。次回こそはゼロ視点…!
新キャラ一杯です頑張ってついて来てください。
翌日。いつもの如く起床し、弁当を作る。家には兄が二人、弟一人いて、プラスで父と母なので結構な大所帯だ。朝ごはんは母、お弁当は私が作っている。
「あんま時間ないし、昨日の残り物と後なんか副菜入れて、おやつは作っといた蒸しパンでいいか」
昨日VRをやりすぎてちょっと寝不足だったので、今日は起きるのが少し遅くなってしまった。まあ、兄弟ズよりは早いんだけど。
「ふぁあ…。おはようございます。姉さん」
降りてきたのは弟の魁斗。きっちりした性格で、中学生になっても姉貴とかじゃなく姉さん呼びしてくれるいい子である。詰襟の制服に理知的なメガネが似合っている。
「おはよう魁斗。起きてきたところ悪いんだけど、兄ズ起こしにってくんない?」
「…………………はい」
明らかに嫌そうな顔をする魁斗。兄ズは嫌いみたいだしな…。ちゃんと兄さん呼びはしてるんだけど、お年頃なのかね。
そんな事を考えながらスライスした人参をツナと砂糖とあごま油で和えながら鍋で火にかける」
「あ、ママ。学校で配られたプリント置いとくから見といて〜」
「はいはい」
そんなこんなでさっさと調理していると…
「おっは〜」
「…………おはよう、彗」
やってきたのは家の兄ズ。大学生1年の長男一夜兄と、現在高3の次男朝姫兄である。
ちなみにさっきの挨拶は最初が朝姫兄、2番目が一夜兄である。二人ともパジャマのままで、多分起こされてそのまま降りてきたんだろう。
「兄ズ着替えて来なよ。学校遅れるよ?特に朝姫兄」
「もう魁斗が勝手に布団引っぺがしてくんだけど〜ほんと乱暴じゃん」
「起きない兄さんが悪いです。勝手にまた布団に潜り込まれても面倒なんですよ」
「…………………」
「一夜兄さん!?二度寝しないでください!」
「はいはいもう少しでご飯出来るから配膳しなさい」
「「「はーい」」」
食卓につき、朝ごはんを食べる。今日は和食。ご飯と焼き鮭、卵焼き、小松菜のおひたし。味噌汁の香りが落ち着くな〜。ここまで純・和食って久々かも。
「パパは今週末帰ってくるよね?」
「ええ。開発の方もだいぶ落ち着いたと言ってたわ」
「げ、親父帰ってくんの?」
「珍しいですね。普段僕らのいない時に帰ってくることの方が多いのに…」
「…そうか」
「あ、醤油使おうとしてたのに!」
「ごめんごめん。彗のもついでにかけるから貸して?」
「ありがと〜」
「そういえば、昨日VRやって見たけどやっぱ楽しかったよ〜。ほんとうちのパパが作ったとは思えない」
「おお。そんなになら楽しみだな…1週間後」
「全く親父ったら娘の分だけ確保して俺らの分ないって結構辛辣じゃね?」
「貴方達別に何かパパにしてあげたわけじゃないでしょ」
「そなんだけどさ。まあ、結局自分で買うしな…」
そう、一夜兄と朝姫兄は、学校では外ヅラがパパに似て良いからモテてる…らしいんだけど(本人談だから分からんけど)一夜兄は朝すんごく弱い夜型人間で、家にいるときはカッコいいというより無口な不思議キャラだし、朝姫兄は正直言ってだらしないし、生活力ないし、ついでにチャラい。パパに似てると思う。近すぎると逆に減滅する事もあるとはよく言ったものだと思う。
でも、二人とも私と同じでゲームは大好き。結局パパが私の分しかVRマシン貰ってこなかったので、1週間後にもう二台、兄ズが注文したやつが届く。1週間リリースから遅れたのは、手に入れるのに結構交渉が必要だったから、らしい。
「私は1週間経っても一緒にプレイできるか怪しいんだけどね…」
「え?何で?なんか合流できないところにいるとか?」
「いや〜実はかくかくしかじかで…」
昨日起こったことの顛末を説明する。
「ええ…それはやばいね」
「そんな事もあるのか。それにしても、β版での情報では、種族は人間、獣人、エルフ、ドワーフ、魔物の5つだけだったようだ。他にも選択肢が増えているし、第1ジョブ、第2ジョブの概念も無かったようだし。これは期待が持てるな」
「い、一夜兄のテンションが高い…」
「流石夜型人間兼ゲーオタ」
「普段大学でどういう人間に見られてるのかと今のギャップでもう笑えるよね」
「お話はそれくらいにして用意しなさい。特に朝姫と一夜」
「げ、もうこんな時間かよ!?今日登校時間早いんだった!」
「…俺は今日は授業もないから、サークル活動のみだが」
「だから早く起きてくださいと言ったのに…」
「だから明日早く起きなよって言ったのに…」
「「自業自得でしょ」」
「二人ともヒドイ…」
「言ってる暇があったらさっさと用意しなさい」
「イエスマム!」
そんなこんなで何時もの騒がしい朝を終えて、学校へ出かけようとしたのだが…
「姉さん、すみません。ちょっといいですか?」
「何?魁斗」
「これ…どうやら朝姫兄さんが僕のお弁当を間違って持って行ってしまったみたいで…」
「あ〜あのバカ兄貴…。絶対少ないって学校で騒ぐじゃん…購買今日休みだし」
「どうします?」
「え〜と。じゃあ魁斗それそのまま持ってっちゃって。残してもいいし、友達にあげてもいいから。朝姫兄の分は…私のをあげればいっか…私がコンビニでなんか買えばいいしね」
「でも、それでは姉さんに迷惑では…」
「いいのいいの。あのバカ兄貴のやった事だし。見捨てて行くっていうのも考えたけど、校舎隣にあるからついでだし」
「わかりました。行ってきますね」
「うん。私も出るか!」
そう言って玄関を飛び出し、自転車に乗る。駅までは…うん。これなら何時ものより一本早いのに乗れるね。
う〜ん風が気持ちいい!自転車を漕ぎながら、昨日のゲームの出来事をおさらいして、何をするべきか考える。
取り敢えず、創造者の〈想像展開〉の確認が急務だよね。発動しっぱなしにはしてないけど、私多分死んだように眠ってるんかな…w
それから、魔法は発動確認をして、バフ確認して一回探索に行こうかな。ゼロはな…あんまり連れて行きたくは無いんだけどついてきそうだし…まあ、いいかあ。格上なら即セーフティエリア行って、戦闘出来そうならやる。出来るだけ安全に行きたいけど、逃げられない状況になる可能性もあるからな〜簡易的な罠とか作れたらいいんだけど、資材も無さそうだったし、ちょっと難しいかな。
一応格上だった場合は、相手を分析しながらだいぶ卑怯な手を使えば倒せる手段もなくは無いけど。ま、私卑怯上等な考え方だし、いいか。一回デスしても良いくらいの心がけで行こう。
そこまで電車の中で考えていると、駅に着く。
「さて、あのバカ兄貴に配達しに行きますか…」
私の学校は、男子部と女子部に分かれていて、女子部に私が、男子部に朝姫兄がかよっている。校舎は直接は繋がって無いし行き来も禁止だけど、近いから、忘れ物とかは共有できる。
コンコン
「すみません。南 朝姫 の妹の南 彗 です。忘れ物を届けにきました」
「あ、また来たんですか。いつもご苦労様です。南さんに渡しておきますね」
「有難うございます」
「また」って言うのは私が朝姫兄の忘れ物配達を月に何度かしているからだ。情け無っ!
…朝姫兄には、明日の洗濯物と皿洗いをやらせるかなあ。因果応報。
そうして朝の用事を終え、教室に入る。
「おはよ〜」
「チッスチッス」
「ヤッホ〜」
「おはよ」
教室のみんなに挨拶しながら、席に座って荷物を出す。
「やっほ〜彗。初VRどだった?」
「おはよみかん。いやあ、すっごいよあのグラッフィック。マジで本物じゃん。感触とかも全部」
最初の方で神に殺されたせいでその手の感動があまり無かったけど、それでも、今思い出すと本当に凄かった。
「だよなぁ。私もβ版やった時は本当信じられなかった。ところで、彗が説明するとか言ってた近況ってどないしたん?魔物選んだんでしょ」
「ああ、それがさ…
そう言って今朝兄ズにしたのと同じ説明をする。
「何それ…」
「こっちが聞きたい」
「いや、今の説明を要約すると、何故かチュートリアルでAIがパートナーになって、何故か神に殺されて、何故か竜にあったって事でしょ?何してんのお前」
「こっちが聞きたい…!」
「まあ、一応魔物になったらそういうこともあるって言うのを頭に入れとくわ。掲示板とかには流さないから安心して。てかそういう騒がしいの見たく無いし。あ、別に彗を迎えに行く気はないんで自力で来てな」
「はいはい分かってますよ〜。そっちはどうだった?確か道化師の初期地って、〈妖の迷路街ラビリンス〉ってとこでしょ?」
そこから近いか遠いかもわからんのな…
「ふっふん。まずはこれ見てよ」
そう言って、みかんが写真を一つスマホに写して見せてくれる。
「…マジか。やばいわこれ」
「でしょ!初期地ここ選んでマジで良かったって思ったし。探索のしがいもあるし、おまけに結構この付近レベル帯が高いみたいで、結構狩楽しめそうなんだよ」
そこに映っていたのは、様々な建物が入り組む、霧に覆われたどこか怪しげな街だった。だが、リアルでは絶対にお目にかかれない複雑さや、その幻想的なデザインの街は、確かに人の心を惹きつけるものがあった。
「そうそう。夜vrもあるよ」
「おお…結構様変わりするね」
もう一つは、別の所から撮った写真で、ラビリンスの夜の風景だった。夜になると、中央にある大きなテント、サーカステント?みたいな所に灯りがともり、他にも建物に灯りがついたり、広場の方には屋台が出ている。先程とは違い、建物についている様々かつ奇妙なランプがともり、なんとも不思議で幻想的な光景だった。相変わらず霧に覆われていたが。
「いやあ〜早く町に入りたいわ〜」
「魔物は入れないんだっけ?」
「うん。〈魔物の気〉っていうのがデメリットスキルとして必ずあるみたいで、これがあると町に入れないし、〈人化〉スキル系統も取得できないらしいよ」
ちょっと気になってあの後ネットをサラッと見たんだよね。一応〈人化〉という人の容姿になれるスキルはあるんだけど、色々制限がかかっているらしい。
「へえ。まあ、頑張ってな。一応こっちはネ友と合流して初期資金で装備買ってギルドに登録は…ああ、PKする事有るかもなんで、登録はしてない。で、ちょっと狩りして終わり」
「おお、普通にやってんじゃん。Lv幾つ?あ、後、第2ジョブ何にした?」
「盗賊選んだ、二刀流目指す」
「NINJAかお前は」
「いや、ふつうの盗賊。Lvは5まで上げた。ここ結構上がりづらいゲームだから、結構奥まで行ったんだよね。ネ友と別れた後もソロで行ってたし」
「それができんのお前だけやろ…」
「全員初心者で、何の情報も無いのに、サラッとソロで奥いけるPSは誰もが持ってるものじゃ無い」
「経験の差」
「ま、そうだね」
「デバフがやっぱクラウンの真骨頂で、意外と魔法型なんだけど、物理に振っちゃったからなあ…」
「脳筋ピエロの名を欲しいままにしてるわこいつ」
「おい…まあ、事実だけど。やっぱ毒や麻痺は欲しいよね」
「実際にやられるとマジでウザいからな…」
そんな話を延々としていると…
「おはよ〜みかん、らい。何の話してんの?」
「あ、ゆり!おっは〜」
「おはよ、昨日発売のVRゲームの話してた」
私達に話しかけて来たのは安倍 百合香。あだ名はゆり。まんまです。因みに、らいは私の部活での呼び名。
部活仲間で、私とみかんの共通の友人。アニメが大好きで、スマホゲーも大好き。世間一般的なオタクってのはこういうのを言うんだと思う。普段はちょっと小さくて、可愛い仕草が似合う感じの美少女なのに、変に意地っ張りな所がある。アニメのことに関するとオタクすぎてちょっとキモい。まあ、それくらいのことは言える仲だ。
「それreal virtual on-line ってヤツ?」
「「知ってんの?」」
アニメにしか興味ないと思ってた。
「一応有名だったし、私もやってるから」
「「えっ!?」」
見事にハモる私とみかんの声。いや、だってアニメずっと見てる人が急にVRゲームだよ?高次元に飛んでない?
「何回も応募したら当たったし…それに、小さくたって強くなれるし!いつか大きい大魔法ドッカンドッカンするのを希望して頑張ってる〜」
「あー。成る程。身長コンプレックスケアのためね」
「小さい言うな!」
そう行って爪先立ちするゆり。いや、小さいものは小さいよ?みかんでさえ157はある。ゆりは…149とかだっけ?
「種族何選んだ?」
まあ、合流できるし、みかんとしてはそこが気になるよね。
「魔法特化。妖精族だよ」
「うわまたちっさいのを…」
「いいでしょ!」
「今何処にいるかさえ教えてくれればそっち方面に向かうけど、あ、フレンドコード私と彗に送っといて。私は道化師の初期地の街にいるから」
「OK〜帰ったらフレコ送っとく〜」
「私は魔物だからしばらくは会えないね〜」
「あの鬼畜種族を自ら選びに行ったお前の脳みそについて議論したいレベル」
「鬼畜って知らんかったの!不穏だったとは思うけど。まあ、面白いからいいか〜と思ってる」
「苦労しても救済せんぞ」
「結構!」
「そうそう。第2陣でひろ氏も来るってよ〜」
「「マジ!あの子が!?」」
今日はよくみかんとハモるね。にしてもマジ!?あの子がVRゲーム!?さっきのゆりよりさらに次元飛んでんじゃん!
「うん。お父さんが貰ってきて、弟は年齢制限でできないからやってみるんだって〜」
「ひろ氏がねえ…絶対聖女でしょ。ヒーラーすすめとこ」
それな。まあ、あくまで本人が決めるんだけどさ。
「絶対似合うよね!」
キーンコーンカーンコーン
そんなたわいもない話をしているとチャイムがなる。
「っげ。今日倉ちゃんじゃん」
「おっと。じゃあ私は教室別だから戻るね〜じゃあまた次の休み時間に!」
そう行って私達は何時もの様に授業に移っていくのだった。
安倍 百合香…小さい体でドッカンドッカン大魔法を撃ちたいという願望でVRゲームを始めます。普通に美少女で、髪は姫カットです。魔法に特化させてますので、物理攻撃できませんし、紙防御です。要するにINT極振り。これからバシバシ出てきます。
兄ズも、これから出てきます。出す予定です。魁斗君はまだ未定。
最近初コメを頂き舞い上がっている作者です。これからもどうぞお付き合い下さいませ。




