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14. 外国人とお寿司


 その日、閉店時間になっても修司は現れなかった。

 さっさと買い物に行く体制に入ったゆかりに対し、ランバートは「本当に良いのだろうか」と駐車場に向かって歩く道すがら何度も後ろを振り返っている。


「いいんだって。時間内に来なかったアイツが悪いんだし。閉めるからって一応連絡も入れたし今日は来ないって」

「なら、いいのだが……やはりそのスマホというのは便利だな」

「だよねー。あたしもこれがないと生きていけないかも」

「サンヴァウムでも作れればいいのだが……」


 ランバートは元の世界に帰ってから作ろうと思っていたのだが、もちろんゆかりはスマートフォンの作り方など知らない。

 一応ネットで検索もしてみたのだが、専門的な話ばかりで素人の二人には全く理解出来なかった。

 便利な技術があることを知ってしまったが故、それが元の世界で実現出来ないことを悔しく思うランバートだったが、それも長くは続かなかった。


「おおぉぉお! これは凄い! 早馬よりも速いんじゃないかっ!?」

「ちょっ、危ないから窓から顔出さないでね!」


 助手席側の窓全開で叫ぶランバート。

 小さな子供でもこれ程喜ぶ者はいないのではないかという喜びようだ。

 下道でこれなのだから、高速道路なんて乗った日にはどうなることだろう。


「新幹線って乗り物もあるんだけど、それは時速三百キロは出るらしいよ」

「三百っ!? それには今日乗れるのか!?」

「いや乗る予定ないし。遠いところに行くときに新幹線とか飛行機乗ったりするとあっという間に着くんだけど……あ、飛行機っていうのは――」


 ゆかりから聞いた未知の乗り物にランバートが衝撃を受ける。

 何度目かも分からない程繰り返された光景だが、ランバートがそのたびに驚いてくれるため、ゆかりは開発したわけでもないのに得意げだ。

 そんな話をしている間に、二人を乗せた車は大型ショッピングセンターに到着したのだが、大分落ち着いてきていた彼のテンションが再度上昇する。


「貴族の邸か!?」

「はぁ? いやここは買い物するための施設で……てかそんな騒いだら恥ずかしいから少し黙ってて」

「なっ……!」


 ゆかりに腕を引かれ店内に入ったのはいいが、所狭しと並ぶ店にランバートは終始顔面で驚きを表していた。

 そんなランバートの様子は見ていて面白いものではあるのだが、それは人目のないときに限る。

 すれ違い様に向けられる好奇の視線に耐えかねたゆかりは、色々と説明するのを諦めて、大型衣服店であっという間に買い物を済ませてしまった。

 ここで活躍するのがランバートの外国人体型。

 羨ましいことに、サイズさえ合っていれば日本人だとダサくなる組み合わせでも立派に着こなしてしまうのだ。

 あと何日いるか分からないため、洗濯が楽になるよう二、三着ずつ購入したものを一度車に載せに戻ると、二人は同じ敷地内に併設された回る寿司屋へと向かった。


「えーっとこれがイカでこれが鯛で……まぁ食べてみて美味しいのをまた頼めばいいよ。あ、茶碗蒸し頼も。これあたしのオススメ」


 外国人といえば寿司で喜ぶというネットで見た偏った意見を参考にしたのだが、海のない地域で育ったランバートはほとんどの魚を知らなかった。

 ゆかりが頼んだものをちょこちょこ摘みながら、好みの味を模索する。

 最終的には自分でタッチパネルを操作して注文出来るようにまでなったランバートが、デザートのページで手を止めた。


「ケーキなんてものまであるのか……」

「あたしパンナコッタ頼もー。ランバートは?」

「む……ではこのプリンというのを頼む」


 帰りがけには机の上に大量の皿が並ぶことになった。

 初めてのお寿司に、ランバートは満足そうに腹を撫でた。

 彼に与える分を頼みながらだったゆかりも、いつもより食べ過ぎてしまい少しだけ苦しげだ。


「あーお腹いっぱい。……そうだ! DVD借りて家で観よー?」

「何だかよく分からんが、俺は今日一生分驚いた気がするぞ」


 使えたと言うランバートを車に残し、ゆかりはそのままレンタルショップに向かった。

 自分の観たかった分と、貴族がモチーフになったDVDを数枚借りることにする。

 明日は週に一度の店休日。

 その日ゆかりの家では、夜遅くまでテレビがついていたという。


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