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高橋さんは色が嫌い  作者: ゆきんこ
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過去改変物語

 この世界は色であふれている。赤と緑と青で全ての色が出来るとかいうあれだ。

 ならば色が嫌いならばどうなるだろうか。

 多くの人は、「そんな人は居ない」とか「そんな人居るわけがない」とかを思うだろう。

 もしも居たらどうなるのだろうか。この世界で生きていけるのだろうか。

 もしいたら確実に生きていけない。まだこのときはそう思っていた。






 僕の名前は田中京也だ。勉強も平均ぐらいで運動もそこそこできて、友達もそこそこいて、まあ普通の高校生だ。

「今日から高校二年生か。なんか面白いことでも起きてくれないかなぁ」

 普通の高校生活に飽き飽きしていた。なにか面白いことでも起きてくれなぁと思っていた。これはとても贅沢な悩みだ。なぜなら中学校までの自分は正直言って暗黒時代だった。

 それなのにこの高校生活に満足できないというのは贅沢すぎる悩みである。





「京也ーーーもう学校に行く時間よーー始業式ぐらい早く行きなさいーー」

 母が一階から声を出す。

「今行こうとしていたところーーー」

 母の要望に応え、珍しく早く学校に行く。

 学校に行く準備をし、靴を履き、ドアを開ける。

「行ってきまーす!!」

 僕は威勢の良い声を上げる。

「いってらっしゃいーー!」

 同じぐらいの声量で母が返してくる。





 空を見ると、晴天とまではいかないが曇天ともいえない中途半端な天気だった。

 天気予報で昼から雨が降るといっていたので傘を持っていくことにした。






 何事もなく学校に着くと、中学からの友達である小浮気隆司(こぶきたかし)が机に突っ伏していたのだが、僕が席に着くと顔を上げ、こちらに顔を向けた。

「おっ! 京也! 今日は珍しく早く来たんだな。誰かに謝りに早く来たのか」

「今日も違うし! それは孝志だろ」

 孝志はこうやってよく僕をいじってくる人だ。孝志は友達は多く、周りからの人望も厚いので僕にはもったいないぐらいの人だ。

「そういえば、このクラスに転校生が来るって知ってるか?」

「転校生? 知らないなぁ。男? 女? 」

「おっ、もしかして転校生を狙っているのか。それなら、朗報だ。女らしいぜ。それも結構かわいいらしい」

「いや、別に狙っているわけでもないけど気になったから聞いてみただけ。それよりも、孝志が狙ってるんじゃないの?」

「そりゃそうだろ。なんたって、クラス、いや、学校全員の女生徒を狙っているからな」

 これは多分冗談だろう。なぜなら孝志が「なんたって」を使うときは絶対に冗談だ。






「キーンコーンカーンコーン」

 チャイムが鳴る。いつもならこの時間に家を出る。実は、この時間にチャイムを聞いたのは初めてだ。



「ガラガラガラ」ドアを開けた音だ。

「今日は転校生を紹介する」

 周囲はざわめいた。

「高橋、入って来い」

 背は女子の平均ぐらいで、容姿端麗でまさに八方美人といったところなのだが、一つだけおかしいところがある。それは、両目に眼帯を着けていたことだ。目でも怪我しているのだろうか。それとも、中二病を履き違えているのだろうか。それは、分からないが、両目に眼帯をつけているとは思えないほどにスムーズに教室に入ってきたのには驚愕した。

 その高橋という女性は、適当なところで足を止め、自己紹介を始めた。

「私の名前は高橋京香(たかはしきょうか)だよ。一つ言って置くけど、私は色が嫌いなんだよ。決して、目を怪我しているとか、中二病を履き違えているとかではないでので安心してね」

 さっきとは違う異様な雰囲気で周囲がざわめいた。

「京也……こいつヤバイな」

「……うん」

 高橋さんはゆっくりと歩いていき一番窓側の席に座った。

「一年間よろしく。田中」

 座ったのは僕の隣の席だった。

「こちらこそ一年間よろしく。高橋さん」

「よろしくな。高橋」

 こうして高橋さんとの一年間は始まった。



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