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同志を求めて

松尾進。高校一年生。

東京県ではそこそこ上位の進学校、安田高校に通っている。


よくデブ眼鏡とか言われるが、そんなことは気にしていない。

なぜなら彼は、夢を追いかけているから。

そう、異世界転生という夢を。


松尾進はいつものように自転車で通学している。

学校まで自転車で大体15分。


だが5分ほど進んで一回自転車を止めた。


ここは昨日、信じられないほど美しい女神が降りてきて、松尾を蹴り飛ばした場所。

そこで松尾進は、カバンに入れてあった本をそっと取り出す。


それは昨日、イマイチぱっとしない男の神様がくれた本。

女神を召喚する方法が書いてある。


松尾進は昨日、家に帰ったら速攻で読んだ。

そして、これからやらなければいけないことを把握したのだ。


本に書いてある内容によると、女神さま召喚には最低でも4人必要らしい。

だから、学校で仲間を探さないといけない。

そう、真剣に異世界に興味をもつ仲間を。


決意も新たに、自転車を漕ぎ出した。



20分後



「おはようぶふ」


教室につくと、元気よく挨拶をする。

デブ眼鏡オタクの松尾にだって友達はいる。


「おはよう、松尾氏」


あいさつに返事をくれたのは、クラスメートの庄司信也。

痩せていて、背が低くて出っ歯という可哀そうな容姿の少年だ。


松尾進は彼の横に座る。

「こふー。今日は庄司氏に相談があるんだ。」

「ほほう、どんな相談ですかな?」


その言葉に、そっと昨日手に入れた本を取り出す。

「実はとうとう、異世界の美しい女神を呼び出す方法を手に入れたのだよ。ぶふふ。」


庄司信也の眼が急にかわいそうなものを見る目になった。

「松尾氏・・・、何度も言っているけど、異世界と繋がる方法なんてこの世にはないのですぞ。」

「こふー。ちょっと待った!これは本当なんだって。昨日、信じられないくらい美しい女神が空から降ってきて、俺に召喚方法を授けてくれたんだよ。」


優しい眼差しの庄司信也は、それ以上否定しなかった。

「そうなんだ。わかりましたぞ。うんうん、某は松尾氏の事を信じておりますぞ。」

(可哀そうに、今になって厨二病が来たのですな。刺激しないように接してあげましょう、友人として。)

「わかってくれたか庄司氏!召喚には4人の仲間が必要らしいんだ。あと2人仲間を探そう!」

「そうですな、探しましょうぞ・・・。」


庄司信也は当然信じていない。

しかし、数年前に自分を襲った厨二病を今になって友人が患ったと思ったので、あえてその言動に乗ることにした。

厨二病で孤立する寂しさをよく知るからこそ。

友情である。


そんな庄司信也の気持ちなんて知る由もない松尾進。

プヨプヨのほっぺたを揺らし興奮した。


「よし!同志を探しに出発だ!」


(ここから刑事ドラマの捜査シーンの音楽を脳内で流してください。ちゃっちゃっちゃーらーらー)

他のクラスに聞き込みに行くが無視される。

オタクそうな人に、片っ端から声をかけるが嫌がられる。

漫画研究会に勧誘に行き、逆に勧誘されて逃げ出す。

文芸部に行ったら、女性ばかりで恥ずかしくて声をかけられずに逃げる。

2年生のクラスに行って、怒られて正座させられる。

(ちゃーん、ちゃちゃちゃん)


非常階段に座り込みながら、疲れ果てた二人は休憩をとる。


「ぶふ。なんで同志が見つからないんだ!」

「(ふつう見つからないですぞ)そうですな、でももう見つかる気がしないですぞ。そろそろ諦めてはどうですかな?」

「いや、もう少し・・・」


松尾進がそこまで言いかけたときに、少し離れた場所で本を読む男が目に入った。

顔は不細工で、耳が隠れるほど髪が長くバンダナをした男。

なぜかYシャツの裾が破れていて、筋肉質な腕が見えてワイルド。

そして一人で座って本を読んでいた。


「びびーん、俺のレーダーにビビっときたぞ。彼をスカウトしよう!彼が読んでいるのは異世界物のラノベだ!」

「え、どの人ですかな・・・。あ、たしかに同志のオーラを感じる御仁ですな。あの人絶対、秋葉ノ原の住人ですな。」

「行こう!」

「心得た!」


二人は急いで、バンダナ君の所に行く。

「こふー。あの、もしかして今読んでるのは『異世界チートで妹無双』ですか?」

「え?何?バカにしているのか?」

バンダナ君は、読んでいた本を隠しながら、かなりな警戒心を見せつつ松尾進を見た。


「いやいや、逆だよ。俺たちは同志を探していたんだ。ぶふふ。」

「同志?もしかして異世界物が好きな同志って事か?」

「その通り!実は俺たちはすごい秘密を手に入れたんだが、この秘密を共有できる同志を探しているんだ!」


バンダナの少年は、手のひらで片目を隠しながら目を光らす。

「秘密、それはもしかして前世と関係がるのか?もしや我の前世を見抜いたのか?」


庄司信也は天を仰ぐ。

(ここにも遅まきの厨二病が居たのか)


そんなテンションが下がる庄司信也に気づかず、松尾進のテンションは軽く上がった。

やっと話を聞いてもらえそうだから。


「こふー。前世はわからない。でも一日一回だけ異世界の女神を呼び出せる方法を手に入れたんだ。そのために4人仲間が必要で協力者を探していたんだよ。君も俺たちと一緒に異世界の秘密に触れてみないか?」

「ほほー。我以外にも異世界の秘密に気づいたものがいたのか。それにお前たちは前世でも我と縁がった者たちのようだ。協力してやろう。(おい、マジかよ!異世界の秘密ってスゲーじゃん。絶対に我も仲間に入れてもらわないと!)」


前世は関係ないかもしれないが、ある意味で魂の共鳴者を見つけた瞬間だった。


「ありがとう!よし、あと一人探せばあの美しい女神様・・・デルリカ様に再会できるぞ!」

「まて太った人!再会ってどういうことだ?もしやすでに召喚は成功したことがあるのか?」


「いや、召喚はまだ成功したことないんだ。でも俺は、女神デルリカ様が空から降り立った時にその場にい居て召喚方法を教えてもらったのさ。ぶふふ。」

「おおお、空から降ってきたのか・・・・。女神が降ってくるとか男のロマン!その場に居た太った人が羨ましい!」


「太った人って・・・。俺は1年A組の松尾進だ。」

「すまない、我の名は1年C組の武田健二。シュミは筋トレだ。そっちのねずみ男君は?」

「ねずみ男じゃないですぞ。某の名は庄司信也ですな。よろしく。」


自己紹介がおわたっところで、3人は腰を落ち着ける。

「ぶふ、あと1人か。武田氏は良い候補をしらないか?」

「そうであるな・・・。そういえばB組に不気味な女がいるのだが、我はその女を何度か秋葉ノ原(オタクの聖地)で見たことがある。ジャンルはアイドルのおっかけのようであったが、奴ならばこの話に理解を示すやもしれん。」


庄司信也が目を輝かせて身を乗り出した。

「ほほー、女子と来ましたか。して容姿はどのような感じですかな?」

「うーん、眼鏡をかけて細長いホラーっぽい奴であったな。八尺様って感じの。」

「ホ、ホラーっぽい?八尺様?えっと、では声をかけるのは松尾氏に任せましょうぞ。」

「え、俺が?」


松尾進は焦った。

なぜなら松尾進は、女子と話をするのが苦手だからだ。

思えば最後に女子と普通に話したのは小学校の4年生の時以来。

それ以降の女子との会話と言えば、コンビのお姉さんの「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」くらいしかない。

そんな松尾は顔を青くする。


「無理無理、俺は女子と話すの無理。武田氏、お願いするよ。」

「我?いやいや、我も無理。前世でダークエルフの女王に裏切られて以来、女子は苦手なのだ。」


そして3人は見つめあう。

チキンたちであった。

数秒見つめると、庄司信也が諦めたように首を横に振った。

「では、この話は終了ですな。松尾氏の熱意がその程度とはがっかりですぞ。」


そういわれて、松尾進の頭にデルリカの微笑みがよみがえった。

(あの女神にまた会いたい!そして異世界の秘密を聞き出さねば。)


震える足で立ち上がり、深呼吸すると武田健二を見た。

「武田氏、その八尺様の所に案内してくれ。俺がスカウトしよう。」


「「おおー」」


ただ女子に声をかける。

たった、それだけのことを決意しただけだというのに、庄司信也と武田健二の二人はまるで勇者を見るような目で松尾進を見つめるのだった。

松尾進

1年生。太っているが運動はそこそこできる。

眼鏡であばた面。


庄司信也

一年生 痩せて出っ歯で背が低い。

理屈屋で、とりあえず反論する癖がある。

通称バランサー。


武田健二

一年 中肉中背で髪をが顎にかかるほど伸ばしている。

バンダナがトレードマーク。制服の袖は荒々しく引きちぎってある。

顔はだらしない不細工だが、筋トレが趣味。


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