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13/20

リア充と獣

1/15の22時に誤字脱字修正をしました。

ゴールデンウィークが終わり、学校が再開。


松尾進は自転車で学校につくと、急いで1年C組を覗きに行った。

そっとのぞき込む。


すると武田健二が席に座っていた。

思わず駆け寄る。


「武田氏!生きていたんだねぶふ。」

「お、松尾卿。我があの程度で死ぬわけがあるまい。まだ運命の歯車は我を自由にはしてくれないようだ。」


お互いガシっと腕を組む。


すると傍にい居たチャラいイケメンがケラケラ笑い出した。

「オタクとデブが、なに生きるだ死ぬだ言ってるんだよ。厨二病ってやつか。こいつら恥ずかし奴らだよな。」

チャラいイケメンは傍の奴にそう話しかける。


イケメンの近くに居た連中も、一緒になって松尾進と武田健二を笑った。

武田健二は暗い顔でうつ向いてしまう。


「松尾卿、我のせいで不快な思いをさせていまいすまない。我が馬鹿にされているから・・・。」


松尾進は優しくその肩に手を置く。

「気にしなくていいぶふ。中身のないリア充気取りのイケメンなんて、俺たちの半分も充実していないんだからな。奴らがリア充なら、俺たちはファンタジー充だ。だからうつ向いちゃだめだ。」

「松尾卿・・・、すまない。我とした事が気弱になっていたようだ。さっきの我の言葉は忘れてくれ。」

「ふっ、それでこそ武田氏だ。」


その松尾の声が聞こえたせいか、イケメンがガンとそばの机を蹴る。

「おい、今俺らの事を馬鹿にしましたかー?オタクがつるんでいい気になってるんじゃないぞ。」


松尾進は、一瞬イケメンの顔の顔を見ると鼻で笑った。

「ふっ、お前は下らんな。ぶふ。」


イケメンの顔が真っ赤になる。

「おい、放課後覚悟しろよ。俺らを馬鹿にした報いを受けてもらうからな。」


松尾進は呆れた顔をした。

「『俺らを馬鹿にした』っていった?俺は君の事しか馬鹿にしてないんだが?国語を勉強しろイケメン野郎。」


イケメン野郎と言い捨てるのは、悪口になっていないが気にしない。


「てめー。ざけんじゃねーぞ。」


両手をポケットに突っ込みながら、睨みながらイケメンが近寄ってくる。

しかし松尾進は恐れなかった。


いざとなったら生徒会長の安西良子に助けを求めに行けばいいと考えていたから。

なんせ生徒会長は、人型の精霊を迷わず殺しに行ける人だ。きっとどうにかしてくれるだろう。


松尾進とイケメンが一触即発の状態になっていると、ポニーテールの女子が間に入ってきた。


「ちょっと、松尾さんを悪く言わないでよね!この人はあんたたちが思っているよりも、ずっとすごい人なんだから。悪く言うなら私が許さないから!」


イケメンたちは驚いていた。

だが一番驚いたの松尾進だった。

(なんで女子が俺を擁護する?)


松尾に振り返った女子の顔を見て思い出した。

「あ、吹奏楽部の人。」

「はい、松尾部長。」


彼女は、スキルを入手する試練の儀式の実験台にした吹奏楽部新人のひとり。

どうやらC組の生徒らしい。


イケメンは困惑する。


「おい、そいつはお前が嫌いなタイプだろ。オタクだぞ、どうせ中身のない奴らだ。」

「オタクの人に中身が無いって本気で思ってるの?バカじゃないの。松尾さんたちはオタクだけど立派な人たちなんだから。あんたみたいな顔だけ男とは違うの!」


イケメンはさらに困惑したが、松尾進はそれ以上に困惑する。

(怖い思いさせたんだから恨まれているかと思ってたのに。この褒め言葉が怖いぶふ。)


とりあえず、松尾進は逃げることにした。

「えっと、俺がここに居ると迷惑なようだから自分の教室に帰るぶふ。君も俺たちの為に教室での立場が悪くなる様なことはしないでな。」

「心配してくれてありがとうございます、松尾さん。ですが私たちは松尾さん達から必死に立ち向かう大切さを学びました。松尾さんの敵は私たちの敵です!」


『私たち』という表現をしていると言う事は、あの時の5人はみんな松尾進の味方ということかもしれない。

(いや、まさかな・・・)


そう思いながら松尾進は教室に帰って行った。


ーーー


一限目が終わり休み時間になると、クラスの男子が悲壮な表情で松尾進に近づいてきた。


「松尾君、なんか他のクラスの女子が5人ほど来て松尾君を呼んでほしいって言ってるんだけど・・・、もしかして女子にいじめられてる?」

「え、女子が?オタク系だった?」

「いや、クラス内のカーストが高そうな可愛い子ばっかり。」

「・・・いじめではないと思うけど・・・怖いから庄司氏と一緒に行くよ。」

「そうした方がいいよ、一人で囲まれたら先生も呼べないからね。」


松尾進は庄司信也を誘い廊下に出る。

すると吹奏楽部の新人5人が待っていた。


庄司信也は戦慄する。

「松尾氏!これは怖い思いをさせたお礼参りかもしれませんぞ!」

「そ、その時は俺を置いて逃げてくれぶふ。」

「某だけ逃げろと?それは出来ませんぞ。」

「ちがうよ、万が一の時は生徒会長を呼んできて。」

「・・・承知しましたぞ。」


覚悟を決めて2人は5人の女子に近づいた。


すると、すぐに5人に囲まれる。

(庄司氏を囮にして逃げるか?)


そんな思考が走ったが、5人の女子は笑顔であった。

「休み中に5人で話し合ったの、学校が始まったらお礼に行こうって。」

「お礼?いやいや、俺たちはお礼を言われるようなことは何もしていないぶふ。」


しかし、C組のポニーテールの女子は手紙のようなものを差し出す。

「これは私たちの連絡先です。松尾さんたちが何か困ったら連絡をください。あとデルリカ様に演奏が必要なときとか。」


松尾は緊張しつつ、その手紙を受け取った。

「ありがとう。この連絡先は他の幻想部のメンバーにも知らせた方がいいかな?」

「いいえ、他の皆さんにも渡しに行くんで大丈夫です。できたら早めに一回連絡もらえると嬉しいです。こちらでも登録しますから。」


そして庄司信也も別の子から連絡先を受け取ったが、その手が震えていた。

女子から手紙をもらうなど生まれて初めてだったから。


松尾進は手こそ震えていないが、ひざは震えている。

「ありがとうぶふ。また面白そうな事がありそうだったら誘うこふ。」

「はい、お願いします。」

純粋な笑顔が返ってきた。


その女子スマイルの輝きに、松尾は眼がくらむ。

(ま、眩し。女子からこんな好意的な笑顔をもらったのは、マリー様以外だと初めてだぶふ。俺、今日死ぬかも。)


すると女子たちの後ろから、C組のイケメンが現れた。

「またそいつに関わってるの?もしかして、モテなさそうな男に慈悲を与える遊び?趣味悪くない?」


すると、5人の女子の笑顔が一瞬で般若のようになった。

「はあ?あんたには関係ないでしょ。それに言ったよね、松尾さんを悪く言ったら許さないって!」


イケメンは何人かお友達を連れていたが、女子がキレたので連れていた友人たちは一歩離れた。

孤独なイケメン。


「お前こそ何言ってるの?そいつがそれほど立派なわけ?わけわからないんですけど。」


するとポニーテールの女子と一緒に来ていた、ツインテールの女子がイケメンを蹴った。

「ふざけるなイケメン。松尾さんはすごい人なんだよ。私たちが釘バットや鉄パイプを持った奴にが襲われたとき、私たちを守って戦ってくれるような人なんだから。しかも、私たちの演奏技術の恩人なんだ。命懸けの戦いの中で生きてる人なんだよ。」


ショートカットの子もイケメンを蹴る。

「危険と隣り合わせでも、進歩のためにあえて進む男の中の男なんだから。松尾さんを馬鹿にしたら許さないから。」


イケメンは慌てたが、なんとか言い返す。

「アホくさ。そいつら朝の教室で「生きていたのか!」とか「どうにか生き残れたよ」みたいな会話をする奴らだぞ。厨二病のオタクだろ。」


すると、おさげの子がイケメンを蹴る。

「あなたが知らないだけです。松尾さんたちなら死と隣り合わせの戦いだってありえます。私の前でだって血みどろになって戦ってくれたんですから!」


ちなみに血みどろになったのは、返り血をたくさん受けた生徒会長だけだ。だが彼女たちの中では全員が血みどろになってニヒルに頬笑んだことになっている。


おかっぱの子がさらにイケメンを蹴る。

「松尾さんたちの凄さを知らないくせに!アホのチャラ男は死ね!」


さすがに5人の女子に囲まれて蹴られたら、リア充イケメンも焦ったらしい。

「馬鹿じゃねーの。やってらんねー。」


逃げて行った。


(懐かしい光景だな。去年までは女子に囲まれて蹴られるのは俺のポジションだったからな・・・)

松尾進の悲しい記憶が一瞬よみがえった。


その悲しみのこもった表情を見て、ポニーテールの子は慌てる。

「あ、松尾さんは気にしないでください。あいつが馬鹿だからいけないんですから。」

「でも・・・・」


すると女子たちは、自分勝手な理解を始める。

「自分の為に誰かかが争うのが辛いんですね、わかります」

「私たちは自分の意志で松尾さんの味方をしているんです、そんな悲しい顔をしないでください。」

「心配しないでください、私たちは平気なんで。」

「松尾さん、もしかしてあのチャラ男の事も心配しています?」

「さすが松尾さんです。敵にまで情けをかけるとは。」


(ヤバイ、彼女たちの勘違いがマッハだ。曖昧な返事でごまかすか)


「とにかく、無理はしないでぶふ。」


「「「「「はい!」」」」」



二時限目が始まるチャイムが鳴ったので、松尾達は解放される。

クラスに入って庄司信也と手を握り合い、心のそこから言葉を吐き出す。

「「生きた心地がしなかった」」


女子と縁遠い生活をつづけた二人にとって、5人の女子に囲まれた休み時間は苦行でしかなかった。


そのあと、昼休みまで特に何もなかった。

気を抜くために、松尾進と庄司信也は校庭にむかう。

人がいないところでお昼を食べたかったのだ。


ちなみに、松尾進と庄司信也は早速タスキをしていた。

タスキには『松尾進 1年A組 幻想部部長』『庄司信也 1年A組 幻想部』と書かれている。

後に、全校生徒に義務化されるタスキのスタイルだ。

そしてこのタスキは当然、異世界のアイテム収納タスキ。


そこに弁当も入れているので、手ぶらで2人はブラブラしていたのだが。


そこにC組のリア充グループが近づいてきた。

「弁当も持たずにお散歩か?それともパシらされてるの?それにそのダサいタスキはなんだよ、ウケるんですけど。」


リア充グループは笑う。


庄司信也は戸惑っていた。

「松尾氏、彼らは知り合いですかな?」

「この人?C組で武田氏を意味もなく馬鹿にしていたチャラチャラさんだぶふ。しつこい奴ぶふ。こんなしつこい奴は、きっとモテないぶふ。」


イケメンはねめつけてくる。

「はあ?お前ら放課後に校舎裏来いよ、遊んでやる。」

「こふー、何馬鹿言っているんだ?放課後は部活だろ。お前は暇な部活に入っているかもしれないが、俺たちは忙しんだ。遊びたいならお友達と遊べ。」

「はあ、俺は陸上部さ。オタク文化部が偉そうにすんなや。」


松尾進は『やれやれ』というポーズをとった。

「君は頭がよくないみたいだな。俺は幻想部部長だ。つまり陸上部部長と対等だ。次の生徒会集会で陸上部から幻想部にケンカを売られたと報告させてもらうぶふ。あとイケメン君のお友達も放課後に俺をボコりに来るの?だったら部活を教えてくれるかな、そういう許可が出ているか部長に確認するから。」


イケメン君の友人連中は、急に眼をそらして一歩引いた。

イケメン君、またもや孤独状態。

しかしイケメンも焦ったようだが、すぐに持ち直す。

「お前は一年だろ。うちの部長がお前の言う事なんて聞かねーよ。二年の先輩達にすら反論を許さないような人だからな。」


すると遠くに陸上部の部長が見えた。

サッカー部、自転車部、バスケ部の部長も一緒に歩いている。


すぐに向こうが松尾進に気づいた。

それと同時に小走りで駆け寄ってきた。


イケメンたちは焦る。

自分たちの部長が走ってくるのだ。一年ならびびる。


走ってくると、各部長は松尾を囲んだ。

「幻想部、それはもしかしてタスキ!」

「そうです、一足お先に実用化して見ましたぶふ。」

「くっ、出遅れたか。さすが幻想部は油断できないな。」


部長たちは、羨ましそうに松尾進のタスキを触っている。

そこで松尾進は陸上部部長を見た。

「あ、陸上部部長さん。そういえばそちらの部員が『タスキとかダセー』とか『ウケるんですけど』とか大声で馬鹿にしていましたよ。生徒会長の耳に入ったらヤバいと思いますが。」

「ちょ、まじかよ!誰だよその馬鹿は!」


松尾進は無言でC組のイケメンを指さす。

「こいつか!ふざけるなよ一年!そんな言葉が生徒会長に聞かれたら殺されるだろうが!」

「しかも、今日の放課後遊びに行こうぜと誘われましたぶふ。こいつ、さぼる気ですぜ。」

「なんだと!よく知らせてくれた幻想部、助かったぞ。そっちの一年もこっち来い!矯正してやる。」


C組のリア充チームは部長たちに連れていかれ、居なくなった。


「ふっ、悪は滅びた。」

「あいかわらず松尾氏は策士ですな。よ、孔明!」

「よせやい。お弁当たべちゃおう。」



そしてそのあとも何事なく過ぎて放課後。



松尾進は教室の掃除をしていた。

そこに、C組のイケメンチームがゾロゾロやってきた。


「デブのオタク眼鏡。ちょっと付き合えよ。」

「しつこいなー。断るぶふ。お付き合いするなら女子以外はありえないこふ。」


A組の中に笑いが盛れる。

その笑いは、イケメンの怒りに火を注いだ。

「お前のせいで部長に説教されたじゃないか!覚悟しろ。」


いきなり殴りかかってきた。

しかし松尾進は器用に上半身だけを揺らして避ける。

「ふっ、そんなスピードじゃ俺には当たらないぶふ。」


太っているが運動神経は抜群の松尾であった。

それに虐められていたので殴られ慣れている。

ゆえに冷静に見切ることができるのだ。


「ふざけるな!」


今度は松尾進に回し蹴りを入れる。

流石によけきれず松尾進のお腹にヒット。バシっと音が鳴った。


だが蹴りをお腹に受けた松尾進は表情一つ変えない。

脂肪のクッションは、イケメンの程度ケリではびくともしない程厚いのだ。

「ふっ、そんなパワーじゃ俺は倒せん。」


デブパワー全開。

これが長年ため込んだ、デブちからだ。

お前らとは体にかけた金額(食費)が違うのだよ。


離れたところで庄司信也は思わずつぶやく。

「さすが松尾だ、なんともないぜ。」


松尾進は指を三本立てて突き出す。

「あと3秒で、俺は掃除を再開する。ただしこの掃除では邪魔な人間もゴミとして扱う。ゴミ屑になりたくない奴は俺が三つ数えるうちに失せろ。」


「1」


指を一本たたむ。


「2」


そっと収納タスキの通信機能で、生徒会長の安西良子を呼ぶ準備をする。


「3」


立てていた三本の指をすべて握りこむ。


すると、イケメンの後ろにい居たリア充グループの一人が逃げ出した。

「うわあ、俺は関係ないぞー。」


それに吊られるように残りの連中も逃げ出す。

「俺も関係ない」

「俺は掃除に行かなくちゃ。」

「トイレ行かなきゃ」


次々に逃げる、イケメンと仲良しなフレンズたち。

こいつほんと孤独なイケメンだな。

そして気が付くと、一人残ったイケメンはA組の人間に囲まれていた。


A組の生徒達はなんだかんだ言って、他のクラスにケンカを売るに来たイケメンが気に入らなったようだ。


「く、バッカじゃねーの。一人になったときに囲んでやるからな。」


イケメンはまた逃げ出した。

「あいつは、最後にいつも逃げ出すな。逃げるなら絡んでこなければいいのに・・・。」


つぶやいた松尾進にクラスメイトがわっと囲む。

「松尾君、堂々として凄かったな」

「カッコ良かったよ松尾君。」

「見直しちゃったわ、すごいんだね。」

「一年最強なんじゃないの?」


クラスの中で、松尾の評価が爆上げした瞬間だった。

「いやいや、俺はデブなだけデブ。」





そして放課後、部室に行く。

ドアを開けると、部室の中にイケメンリア充たちが居た。


「豚オタク、もう逃げられないぞ。」

「いつも逃げたのはお前の方だろ。」


イケメンは部室にあった祭壇を蹴り倒す。

「うるさい、もうお前を助けてくれる人はいないぞ!思い知らせてやる。お前みたいなやつが咲田に俺よりも評価されているなんて許せん。」

「咲田?誰それ?」

「おま、マジ信じられねえ。教室でお前をかばったポニテの女子だよ。」

「そうだったか。なんか手紙貰ったけどまだ見ていなかったから名前も知らなかったこふ。」


イケメンは顔を真っ赤にする。

「てめー、何様のつもりだよ。咲田の事は眼中にないってか?もうあったまきた。ぶっとばす。」

最初から、あったまきてたのに・・・今あったまきたみたいに言うイケメン。

おバカさんだ。


松尾進は、イケメンを無視してイケメンと一緒に居るリア充たちを見た。

「ところで君たちは、いつも後ろに居るけどそこのイケメンの奴隷か何か?言っておくけどココは今までで一番危険な場所だよ。逃げないならいろいろ覚悟しておくことだ。」


するとイケメンと一緒に来た連中は腰が引けつつも逃げない。

「俺ら友達だしい」

「仲間ってやつっしょ。」

「一蓮托生なんだよ。」

「オタクには分からないだろうが、これが友情ってやつだ。」


オタクたちにだって友情はあるぞ。

むしろリア充よりも熱く濃い友情が。

しかし彼らは理解しないだろう。人は、おのれの物差しでしか他人を測れないから。


松尾進は、ため息を吐きながらゆっく部室内に入る。

「忠告はした。この修羅場でその友情がどこまでもつか見ものだな。」


「ざけんな。5人居ればお前ひとり程度ボコだ。」


松尾は口だけで笑った。

「いつから俺一人だけだと思った?」


そこで部室の扉が開く。

食べ物を持ってきた生徒会長の安西良子だった。

「松尾君、アツアツのフィッシュフライを買ってきたぞ。冷めないうちに・・・・」


上機嫌で入ってきた安西良子の眼に、蹴り壊された祭壇が飛び込む。

それを見計らって松尾進はリア充グループを指さした。

「生徒会長、こいつらが部室荒らしました。」


ニコニコしていた安西良子の顔が、一瞬で般若に変わった。

「はっ?なんだよそれ!ゴラァ!どこのシャバ坊だてめーらぁぁぁぁ!あたしのシマにカチコミかけて、生きて帰れると思うんじゃねーぞ!」


沸点が低い生徒会長がリア充グループにとびかかる。

そこからは地獄だった。


~ここより残虐シーンの為、音声だけでお届けいたします~


「うぎゃああ」

「俺は関係ないんだ!こいつに連れてこられただけで・・・、ぎゃあああ。」

「た、たすけて、、、うわああ」


べき、べき、ブチブチブチ。


「手が・・。俺の手が見当たらないんだよ・・・」

「やめ、やめ、やめて・・・・ぎゃああああ。」

「もうやめて、これ以上やられたら・・・死んじょう・・。」


べき、ボゴム、うきゃきゃきゃきゃ。


「これは夢だ、これは夢だ、これは夢だ・・・助けて、うぎゃああああ。」

「こ、殺してくれ。もういっそころしてくれぇぇぇ」


べき、ぐしゃ、ズドム。


「なめるなボケども!生きて帰さねえって言ってるだろうが!お前らの吹き出した血の水たまりで窒息さてやるわ!」


グシャ、ボキボキ、ズシン。


~映像復活~


(はっ、あまりの出来事に目をつぶってしまっていた)

松尾進もかなりビビる出来事だった。


返り血で染まった顔が松尾にむかって冷たく笑いかける。

「松尾く~ん、こいつらが何部かわかるかな?責任者に責任を取らせに行きたいんだよね~。」


安西良子の白い顔に、吊り上がった細目が異様な光を放っていた。

その人間離れした微笑みを向けられれば、松尾進が恐怖でぺラペラしゃべっても仕方ないだろう。


「リーダーは陸上部。残りの四人は自転車部、バスケ部、サッカー部です。」

「ありがとう松尾君。じゃあちょっと行ってくるから、私が戻ってくるまでに祭壇を直しておいてね。」


安西良子の優しい声が、むしろ恐怖を煽った。

(ヤバイこふ。戻ってくるまでに祭壇を直しておかないと、次は俺が殺られる。)


松尾進は必死に祭壇を直した。





ちなみに、このあと一週間、陸上部とサッカー部と自転車部とバスケ部は活動停止した。

表向きの理由は、練習でケガ人が続出したという理由で・・・


リア充は滅んだ。

しかし、恐怖の爪痕もまた深かった。



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