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女神が降ってきた日

新作です。よろしくお願いいたします。

その日、運命が動いた。


安田高校の一年生、松尾進が見慣れた道を自転車で帰宅していると、急に空に亀裂が走る。


「え?なんだあれ?」


前方に見えた亀裂に自転車を加速させて近づく。

太った体で自転車の加速はきつかったが、松尾進はそれ以上にある予感を感じていた。


(これは、憧れた異世界系の現象では?)


ラノベやアニメをこよなく愛する松尾進は、空に走る亀裂を見て瞬時に判断した。

この非常識な現象を目の当たりにして歓喜する。


亀裂の真下に届くころに、亀裂からスパークのようなものが走り、大きく空間が割れた。


そしてその亀裂から光があふれ、一人の女性が現れた。


軽くウェーブをした長い金髪の美女。

まさに光り輝くような美女が、亀裂から現れると、ゆっくりと地上に降りてくる。


「おおお!これが伝説の『空から女の子が降ってくる』ってやつか!」


感動のあまり、松尾進は降りてくる金髪の美女に手を伸ばして受け止めようとした。

だが金髪の美女は、松尾進のすぐそばまで降りてきたとき、


ベキ!

「邪魔ですわ!」


松尾を蹴り飛ばした。

「ありがとうございます!」


蹴られて転がる松尾進は、どこか幸せそうだった。

彼の業界では、美女のキックはご褒美なのかもしれない。


地上に降りた美女は、転がる松尾進を見下ろし、小首をかしげる。


「あらあら、見たことが無い服装の人ですこと。どうやら降りる世界を間違えてしまったようですわね。」


松尾進は、美女のつぶやきで確信した。

今、目の前にいる美女は、異世界転移が可能なのだ。


夢にまで見た異世界転移。


松尾進は急いで美女の前で土下座をする。


「女神様!どうか俺を異世界に転移させてください!」


しかし、金髪の美女は松尾進の事を見下ろすばかりで返事をしない。

しばらく待って返事が無いので、松尾進は恐る恐る顔を上げた。


すると金髪の美女は何かを思案をしているようだった。

松尾進は、根気よく目の前の美女の言葉を待つ。


数十秒待っただろうか。

美女は思考に結論が出たのか松尾進を見下ろす。


「もしかして、あなたは異世界転移をご希望ですか?」

「はい!異世界転移は男のロマン。いや、俺にとっては宗教ですらあります。どうか俺にも異世界転移のチャンスを!」


その絶叫が周りにこだましたとき、再度異変が起きた。

また空に亀裂が入ったのだ。


その亀裂が開くと、今度は三人出てきた。


黒髪ストレートの美少女。

水色髪の美幼女。

そして普通な感じの男性。


三人が、金髪美女に向かって降りてくる。


「デルリカ、迷子になったのでしょ。迎えに来ましたよ・・って、少年を土下座させて、何をやっているんですか?」


美女は声をかけてきた空中の男性に向かって微笑む。


「お兄ちゃん、迎えに来てくださったのですね。ありがとうございます。で、この土下座さんについてですか?実はこの豚っぽい人に異世界転移をしてほしいと頼まれまして、どうしたものか考えていましたの。」


デルリカと呼ばれた美女は、軽く肩をすくめて「困ったものだ」というアピールをした。

空中に浮かぶ男性は、そっとデルリカの肩に手を置く。


「そうはいっても、魔法を使えない人を異世界転移させるのは面倒な制約が多いからなあ。諦めてもらおう。」


松尾進は慌てる。

「そ、そんなこと言わずにチャンスだけでもください!何でもやります!頑張りますので!」

「そんなこと言われてもなあ。」


渋る男性。

しかし、そこでデルリカはニヤリと口角を上げた。


「では、あなたの努力に比例したアドバイスをするというのではどうですか?」

「そ、それはチャンスをくださるという事ですね!」

「その通りでしてよ。ワタクシを楽しませる贈り物や神楽を行うことで、アドバイスを与えましょう。ただしあなた達も努力していただきますわ。よろしくて?」

「はい!ありがとうございます!」


喜ぶ松尾進は勢いよく何度も地面におでこを叩きつける。

デルリカは後ろを振り返り、お兄ちゃんと呼んだ男性を見た。


「お兄ちゃん、なんだか面白いことになりましたので、しばらくここに居ようと思いますの。それとこの世界の人たちがワタクシ達を召喚するための魔法を作って彼に与えてくださいな。」

「また、急に訳のわからなことを・・・。」


愚痴りながらお兄ちゃんと呼ばれた男性は、魔法で素早く一冊の本を作る。


「では少年、これを授けますね。召喚に必要な内容をまとめました。でも、出来たらこれに頼らずまっとうな人生を歩んでくいださい。どうしてもその本に頼る時はしっかり考えてからおねがいします。この人たち、結構残酷ですから気を付けてくださいね。ちなみに召喚魔法が使えるのは一日一回までです。」


お兄ちゃんと呼ばれた男性は、慈悲深い目で松尾進に警告をするとすっと姿を消した。

それに続くように、他の三人も姿を消す。


そして松尾進は夕日の道路に、ひとり土下座の姿勢で残された。


そっと身を起こし、手の中の本を見る。


「夢だった・・・訳じゃないよな。この本が手元に残ったんだから。」


しばらく呆然としていたが、すぐに実感がわいてきたのか喜びで飛び上がった。


「やったあああ!俺はついに夢への切符を掴んだぞ!異世界王に俺はなる!やふううう!」


道路で一人叫んで喜ぶ松尾進であった。


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