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板を十枚  作者: 式十
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子連れの魔王様

 魔王は悩んでいた。

 本当なら再び世界を征服したい。しかしそれは出来ない。

何故なら、最近開発したハイリザードの繁殖力があまりに高過ぎて、要塞から出られなくなってしまったからだ。

 魔王が生み出したモンスターのうち何匹かは立派に育ち、この要塞を巣立っていった。いつか地上に来る命令を、静かに待っているに違いない。

 魔王は更に考えた。

 時間は刻々と過ぎていく。我はどうすればいいのだ。

 研究室で生まれた可愛い我が子を手に掛けるのは、とても苦しい事である。

 しかしこのハイリザードをどうにかしなければ、世界を征服する事が出来ない。

 ……でも、征服した後で何をすればいいのだろう?我が生み出したモンスター達は、その後どの様に暮らしていくのだろう?

 周囲が騒ぎ始めた。

 他のモンスター達も要塞から出られなくなり、ハイリザードが近づく度に怯えていたのだ。

「おかーさんたすけてぇ!」

「かあちゃーん!」

 ひとつ目オーク、ゴブリンが泣き喚いている。

 魔王は決めた。


「キミ達は地上に行って、お兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に住処を作りなさい」

 重たい扉が開かれ、魔王は地上への道を指す。元気なハイリザード達は、すたこらと走っていった。

 魔王はそれを微笑みながら見送る。


 やがて世界は魔王の生み出したモンスターに溢れ、老いた魔王は彼らに惜しまれながら死んだ。

 花でいっぱいになった棺桶を囲み、モンスター達は魔王について一様にこう語っていた。

 魔王は、どんな生き物よりも優しくて強かった。我々にとって最高の母親だった、と。

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