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基本説明

 ここではフラクタル・エフェクトTRPGをプレイする上にあたり、最低限知っておきたい知識を述べます。

 プレイヤーはある程度知らなくともかまいませんが、最低限GMはこの資料を手元に置いておき、プレイヤーの疑問に答えられるようにしておきましょう。




EOM(- いーおーえむ)

 「Energy Organize Monster」(エネルギーで組成された化け物)と呼ばれる不定形の化け物です。

 生物のように自律した行動をとりますが、高度な知能は持ち合わせておらず、昆虫並かそれ以下と言われています。

 その生態は謎に包まれており、時にイレギュラーな行動をとり、その行動を予測するのは困難です。

 多くのEOMに共通するのは、半透明の体に無数の発光器官をもつという姿です。最少で4メートルほど、その他は8メートル前後のものが大半ですが、全長100メートルを超える巨大なものも数体確認されています。

 彼らはAM特性と呼ばれている無敵性を持っており、彼らを倒しうる現実的な手段は物質化したエリュダイト粒子のみで、すなわちアマルガムにおいて他なりません。





アマルガム(AMARGAM - あまるがむ)

 対EOM用に開発された兵器です。

 アマルガムは「Active MAneuver React Grain Amass Machine」のそれぞれの単語の頭文字をとって名づけられました。その意味するところは『戦術用反応粒子集積機械』です。

 その最大の特徴はEOMに特効性のあるエリュダイト粒子を武器として扱えることです。この兵器は空間中に存在するエリュダイト粒子を集めて銃弾や刃を生成して放ちます。

 今の所前線で使用されているアマルガムは例外なく人型の二足歩行です。

 これは不安定な粒子であるエリュダイト粒子を操作するため、人道的見地に反するとして封印されていた技術『フラクタル・ドライブ』を利用しているのが要因です。

 『フラクタル・ドライブ』はパイロットの脳とコンピュータを接続し高速の演算を行うシステムですが、パイロットの脳に与える高い負荷が問題点として挙げられていました。

 その負担を軽くするための仕組みとして人体に近い人型の設計が採用され、アマルガムは人型となっています。このためアマルガムは非常に高価な兵器となっています。

 開発されたばかりの兵器な上、十分な試験データを集める前に実戦投入された背景から、様々な点で発展途上の兵器です。

 現在も機体の改良や新兵器の開発が、急ピッチで進められています。




フラクタル・ドライブ(Fractal drive - ふらくたる どらいぶ)

 アマルガムに搭載されたシステムで、人道的見地に反するとして封印された技術『不道義技術(アンロウフル・テクノス)』の一つです。

 他の不道義技術としては、核兵器やクローン技術などがあります。(EOMに対して例外的に核兵器の使用が試みられましたが、効果は全くありませんでした)

 その仕組みをすごく簡単に言えば、コンピュータとパイロットの脳を接続することで、脳の無意識下部を利用して高速の演算を行うシステムです。

 不安定なエリュダイト粒子を安定させるためにこの演算が必要とされ、エリュダイト粒子を武器に使うアマルガムには例外なく搭載されています。詳しい仕組みについては宇宙連合統括局(ASUS)によりブラックボックス化されており、詳細を知る人間は極わずかです。

 このフラクタル・ドライブは副作用がある点でパイロットを苦しめますが、同時に2つの恩恵をパイロットに与えます。

 一つは電脳世界との接続です。コンピュータと直接接続することによって、パイロットは自らの体を動かさなくとも、意識の世界からアマルガムを操作することができます。

 このため、巨大な二足歩行ロボットを複雑な手順なく操作することができ、アマルガムのパイロットは既存の兵器のパイロットに求められるような高い身体能力を必要としません。(ただしアマルガムの操作は一朝一夕に身につくものではなく、ある程度の適性と訓練が必要です)

 もう一つは加速世界です。コンピュータと接続することによって、本来人間では不可能なレベルの、圧倒的な処理速度の向上が見込めます。

 これによってどういうことが起こるかというと、自分の周囲のものの動きがゆっくりと見えるのです。

 例えばフラクタル・ドライブとの接続時、パイロットは音速の銃弾が迫る姿を、刻一刻と観察することができます。

 ただし、あくまでゆっくり見えるだけです。実際に時間の流れが早くなったわけではなく、どんなに体(機体)を早く動かそうとしても、意識に反して周囲のものと同じくゆっくりとしか動いてくれません。

 フラクタル・ドライブができるのはあくまで思考の加速であり、周囲のものがゆっくり見えるのはその結果にすぎないからです。

 このため、いかに音速を越える加速世界をもたらすフラクタル・ドライブといえど、見えても避けられない攻撃を受け、撃墜されるパイロットは少なくありません。



エリュダイト粒子(Erudite particle - えりゅだいと ぱーてぃくる)

 アドルフ・ガレノス博士なる人物が発見した新しい粒子です。

 性質的に中性(他の元素の影響を受けない。つまり、壁などがあろうと問題なく突き抜ける)ですが、一定量を集めると、今度は逆に他の元素と強く反応し、対消滅のような現象を発生します。

 空間中を亜光速で飛び交っているとされ、アマルガムはこの空間中を漂う粒子をかき集めて武器を生成し、使用するとされています。

 非常に不安定な粒子とされ、その詳しい性質はいまだ解明されていません。

 『エリュシオン(Erusion)』『効子』と呼ばれる場合もあります。



世界情勢

 EOMが現れる前までは、人口は100億を優に超えていたとされています。

 2200年代を舞台にしているため、現代の私たちの状況と比べると国際情勢は大きく変化し、今ある国がなくなったり、新しい国が誕生していたりするでしょう。

 これらについては、公式上では詳しく規定しておりません。GMの権限で、ある程度自由に設定していただいてかまいません。

 公式設定の一つに、EOMが現れる前は、地上では戦争と呼べるものはおよそ存在せず、平和な時代だった、というものがあります。

 ただしこれは事実上誤りがあり、紛争など名前を変えての戦闘行為は、局所的な部分で起こっていたとも考えられています。(名前を変えたのは戦争や内戦などと言うとイメージが悪く国際的な批判を浴びるためです)

 どのような対立関係があったかはやはり公式では詳しく規定しておりません。

 物語を盛り上げるフレーバーとしてご利用ください。

 ただし、第三次世界大戦に相当するものは存在しないというのが公式設定です。

 なお、EOMの襲来後、紆余曲折はあったものの、最低限コロニー間の連携はとれているとされています。

 これは未知の存在であるEOMに対して各コロニーがなりふり構わず情報収集し、難民問題などの諸問題を解決するため、どんな相手でも歩み寄る必要があったためです。

 また、宇宙連合統括局(ASUS)がその間に入って仲をとりもったことも上げられます。



宇宙連合統括局(ASUS - えいさす)

 「Association of Space Unification Station」。通称ASUSです。

 人類全体の利益を目的として、コロニー同士の間に入り中立的な立場で意見調整する組織です。

 元々は国連の下部組織で、EOMが出現するまでは大した権限を持たない小さな組織でした。

 しかしEOMによって地上の国家が侵略され、国連が事実上崩壊すると、その権限が宇宙にあるASUSに移管されます。

 さらに、EOMによって領土を奪われた避難民が、泣きつく先としてASUSを頼り、彼らの支持を受けて権威が増しました。(避難民たちは最初、コロニーを頼ったのですが、各コロニーは自分たちの身を守るのに精一杯で、地上からの避難民に対して冷淡にならざるを得ず、とりあってはくれませんでした)

 ASUSには70を超える国家が加盟していますが、その8割近くがすでに領土を持たない国家です。

 こうして影響力を増したASUSですが、軍を持たないこともあり、直接的な実行力は無きに等しい存在でした。

 その流れが大きく変わったのは、アマルガムの開発です。

 エリュダイト粒子を発見しアマルガムの基礎理論を開発したアドルフ・ガレノス博士は、その技術をASUSにだけ公表したのです。

 ASUSはその技術をブラックボックス化し、自分たち独自のものとすることでアマルガムの供給権を握り、各国の意見を調整する調整役に相応しい発言力を持つにいたりました。

 このことに関しては将来的なASUSの権力の肥大化を危険視する声もありますが、EOMという脅威を前にして、中立的立場で人類の足並みを揃える組織の存在は必要なものだったとされ、肯定的な意見が今は多いです。



アマルガムのパイロット

 プレイヤーの分身です。

 アマルガムに搭載された『フラクタル・ドライブ』は一定以上の適性が無いと満足に動かせず、あるいは副作用を強く受けることがあるため、特殊な素質を必要とします。

 そのため、アマルガムの開発成功後、しばらくの間は軍内部からの登用の他、民間からもパイロットを公募しました。例え軍務経験が無くとも、適性検査をパスさえすれば14歳以上の男女すべてに応募する資格がありました。

 アマルガムのパイロットは自動的に士官(軍内部での上級階級。指揮官的立場)以上となり、専門の教育を受けていない人間が即座に士官になれることは異例なことでした。

 初期配備が完了した以降は、民間からの公募はなくなり、専門の学習機関で訓練を受けた人間しかパイロットになれないように改められ、本来の意味での士官に相応しい人材育成が行われました。

 パイロットになる人間には色んな人間がいます。

 人種はもちろん、パイロットを志した動機も様々です。

 アマルガムのパイロットには人類の礎となる栄誉を与えられ、給与などの面についても厚待遇です。

 使命感から志した人間もいれば、もっと即物的な理由でパイロットになる道を志した人間もいるでしょう。あるいは状況に左右され、パイロットになるしか道がなかった人間もいるかもしれません。

 どのようなパイロットを演じるかはプレイヤー次第です。

 その他のパイロットに関する詳しい説明は、用語集を参考にしてください。



言語

 EOMが現れる前、いつごろかは詳細に規定されてはいませんが、英語が世界の共通言語として国連の決議で採択されました。

 高度化する情報社会に対応するために、人間同士のコミュニケーションを円滑にし、意志の疎通をはかれるようにするための取り決めでした。(その言語に英語が選ばれるまでには、様々な議論がかわされましたが、ここでは割合します)

 このため、現在の人たちは出身国、出身コロニーに関わらず英語を学び、日常的に英語で会話をしています。

 出身の違う人間とも意思疎通は難しくありません。

 自国の文化が失われることを防ぐため、学校で英語と同時に自国の言葉を教える国は少なくありませんでしたが、EOMパンデミックの混乱によって失われた文化もあるでしょう。



EOMパンデミック(EOM pandemic - いーおーえむ ぱんでみっく)

 2200年10月7日のEOMの襲来から、2206年のアマルガムが開発されるまでの人類混迷の期間を、EOMパンデミックと呼ぶ場合があります。

 ワープ能力と遠くからでも仲間を呼び寄せる習性を持つEOMは、忽然と現れるとその場から布に滴らせた水滴が如く広がっていきます。

 その光景が、ウイルスの集団感染と酷似していることから、ウイルスの爆発的流行を指す『パンデミック』という言葉がつけられました。

 EOMパンデミック当時は様々な悲劇が起きましたが、その一つが難民問題です。

 地上を逃れてきたわずかな避難民は、宇宙にあるスペースコロニーまで逃れてきました。

 しかしスペースコロニーには元々多数の人間が住んでおり、設計上の許容量から、全ての人間を受け入れることはできませんでした。

 そうでなければ、地上から資源供給が期待できない現状、共倒れするのが目に見えていたからです。

 そのため、各コロニーは苦渋の決断で、受け入れる人間を選別しました。

 EOMパンデミック当時は様々な難民が存在し、その総数はわかっていません。

 なお、難民たちは非常に劣悪な環境ではあったものの、ある程度の支援物資は届けられ、全てとはいきませんが宇宙を漂流しながら生き残りました。

 そして時代が進み、アフリカ大陸の解放が成功した後は、彼らには優先的な植民権が与えられ、地上の大地を踏みしめました。

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