プロローグ3
この話でプロローグ終わりです。
ある朝、シャルルは高熱で倒れる。
その時シルバーは感じていた。
メテルディウスの影がシャルルに近づく事を。
一週間内に開眼すると、王宮にその旨が伝えられ、アルメニア王宮は騒がしくなる。
勇者がシャルルを殺す事が出来るのか?
その一点に話題が集まった。
しかしシルバーとてこの二年、なにもせずただ恋にうつつを抜かしていた訳ではない。
シャルルをどうすれば助けられるかを、シャルルと会えない時間にはずっと研究してきた。
そして、シャルルからメテルディウスを取り除く方法をようやく見つけたのだ。
しかしまだもう少し時間がかかる。
シルバーはその旨を王であるブライデンに伝えた。
その時のブライデンは何時とは違い、快くシルバーに時間を与える事を告げた。
シルバーも少しおかしさを感じたが、シャルルを助ける時間が出来たと、お礼を言いその場を去った。
そして魔法研究室に籠る。
しかしブライデンはディアモールに指示を出す。
シャルルを殺せと。
ディアモールの持つ神の剣ならば、開眼する前にシャルルを殺せると、神官のお墨付きを貰ってある。
いつもは勇者が気配せしてるために手を出せずにいたが、今はこのパニックの中である。
勇者も一刻の時が惜しいと研究室に籠っている。
ーーーー
ディアモールは地下牢の前に立つ。
目の前には高熱にうなされた一人の少女。
普通にいきていたならば、各国の要人にも引く手数多で華やかな生活が送れたであろう美貌を持つ少女は、今まさにディアモールによって殺されようとしていた。
「シルバーなの・・?」
弱々しくか細い声でディアモールに手を伸ばす。
ディアモールはそれを振り払い、少女の胸に剣を突き刺す!!
その瞬間、シルバーの感知に呪いの覚醒が告げられる!
何故だ!?まだ時間はあった筈なのに!
シルバーは急いで研究室から飛び出て、地下牢を目指す。
ディアモールは剣を突き刺すと同時に受けた、とんでもない衝撃に壁に打ち付けられて意識を手放す。
剣を胸に突き刺された少女は黒いオーラを纏い、横たわったまま涙を流す。
「シャルル!!!」
そこにシルバーが駆け付ける!!
「シルバー・・なの・・??」
口から血を吐きながらシャルルが問いかける。
「ああ!そうだよ!シャルル喋ったら駄目だ!!」
「私もう・・駄目みたい。最後にシルバーに会えてよかった・・・。」
「そんなこと言わないで!君は今から世界を見るんだ!僕と二人で世界を回るんだよ!!」
神聖魔法の回復を掛けるが、黒のオーラに吸い込まれて行く。
シルバーは自分の無力に大粒の涙を流しながらシャルルを抱き抱る。
シャルルも涙を流すが顔は笑顔で、そっとシルバーの頬に手を当てる。
「貴方と・・出会えて良かった・・。
貴方が見せてくれた魔法の世界・・綺麗だったな・・。
私は・・貴方と見た世界を・・シルバーを・・一生愛している・・。」
「君は死なないよ!!僕が助けるから!」
「分かってる・・。もう無理だって・・。私はいつも・・貴方と共に・・。
ねえシルバー・。」
「なんだい!?」
「最後にキスをして・・。」
その言葉と共に二人は唇をあわせる。
その時間は一生の様で、一瞬でもあった。
その唇が離れると同時にシャルルは息を引き取る。
シルバーはシャルルの名を叫んだ!
しかしシャルルは戻らない。
暫しの静寂の後、シルバーは一つの魔法を口にする。
その言葉と共にシャルルを纏っていた黒いオーラがシルバーへと移る。
シルバーが研究していたシャルルを助ける方法とは、自身に痣を移すと言う物だった。
しかし、移したとて彼女は最早死んでいる。
彼女は抱き抱えたまま流す涙はいつしか、真っ黒な者になっていた。
「一生君と共に」
シルバーがそう言うと、シャルルは分解去れていくかの様に光の粒になりシルバーの中に溶け込んでいく。
そして天井を見上げたシルバーの耳にある声が聞こえた。
『世界が憎いか!?』
シルバーはその声に驚く事もなく反応する。
「ああ憎い。シャルルがいない世界など最早必用ない。」
あまりにも冷たく吐き捨てた言葉は、回りに人がいたならば、その言葉に乗せられた殺気に気を狂わせただろう。
シルバーに対して声は続ける。
『ならば魔王になる力を与えよう。
そして世界を滅ぼすのだ。』
「君が愛した世界はもうない。君がいない世界など滅ぼそう!」
黒いオーラはシルバーを飲み込み包んでいく。
しかしその瞬間、後ろからシルバーは切りつけられる。
後ろを見ればディアモールの姿。
手には神の剣。
しかしシルバーには届かない。
黒いオーラがシルバーを守り、剣はオーラを斬っただけ。
「邪神メテルディウスめ!死ぬがいい!」
その言葉と共にディアモールは再度剣を振りかぶるが、その瞬間、ディアモールの胸は突き破られる、シルバーの手によって。
「邪魔だよ!」
ディアモールは地面に打ち付けられその場に倒れ落ちる。
「シャルル、僕は魔王になろう。君を殺した世界を滅ぼす為に。」
そしてその日の内にアルメニアは滅びる事になる。
それを知ったエルドラドは異世界より勇者を召喚する大魔法を使う。
それは世界の均衡を崩す、世界条約に反する魔法と喚ばれていたが、世界で一番の大国であるエルドラド神聖国の脅しもあり他国は承認することになる。
異世界より召喚された勇者は四人で、特殊な力を持った彼らは、世界を滅ぼしに掛かる魔王シルバーと戦う事になる。
戦いは最果ての地と呼ばれるガルダン海峡にて8日間続き、8日目のある日四人を相手にし続けたシルバーにも疲れが見えて来たいた。
その隙を逃さず四人の勇者の放った封印魔法により、シルバーはガルダン海峡の深くに封印される事になる。
そしてシルバーは永き年月を封印される事になる。
この物語はここから始まる。
それはシルバーが封じられてから500年の月日が流れた世界である。