プロローグ2
プロローグがながいです。
「勇者様が王に謁見を求めております。」
衛兵の者が王に頭を下げて用件をつげる。
その先には白い髭を蓄えた、体つきのいい初老の男性。
その男性こそ、この世界イスパールの覇者と呼ばれる男で、アルメニア王国の王、ブライデンであった。
「うむ、通せ。」
王はひとつ頷くと勇者を通せと衛兵に告げる。
衛兵は恭しく頷き、謁見の間を後にする。
暫くして謁見の間の扉が開かれると、廊下から一人の少年が元気よく走って来る!
王はその様子を見てやれやれと首を振りながらも、走ってくる少年に対応するべく顔を向ける。
「して勇者よ、用件はなんだ?」
王は謁見の間で無邪気に笑う少年に質問する。
「やあ王様。今日はお願いがあってきたんだ。」
この勇者と呼ばれる少年、シルバーは神聖国エルドラドより送られてきた少年で、生まれながらに神の痣を持つ者であった。
神に愛され、世界に愛されるその痣は、神にしか使えないとされる神聖魔法を使う媒体ともなり、シルバーは幼き頃より勇者教育を受けてきた。
そして彼が送られてきた理由は、神の痣とは対極にある呪いの痣を持つシャルルの監視のためでもあった。
神の痣は呪いの痣の開眼を感知するとも言われており、シルバーは実質的にはシャルルを殺す為にアルメニアに送られてきたと言っても過言ではない。
シャルルが3歳の時に母が死んだ後、ブライデンは幾度となくシャルルを殺そうとした。
しかしメテルディウスの痣により守られたシャルルは何をしても死なず、ブライデンも今まで殺せずにいた。
エルドラドから来た神官に見せた際、呪いの痣は近々開眼すると言われ、開眼した時に世界が終わると語られた。
唯一の殺す方法が開眼した直後、まだ力が定着せず弱る瞬間があり、その時に勇者の神聖魔法でのみ殺せるのだと言われ、勇者の受け入れを認めた。
そして勇者にはある程度の権限を与えた。
しかし王はシルバーから出てきた言葉に驚嘆する。
「シャルルに世界を見せてあげたいんだ。だからシャルルを牢から出してあげてくれないかい?」
王の回りにいた兵士や大臣がざわつく。
いかに勇者と言えど、魔王を解放しろと言っている様にも捉えられる発言は許される物ではない。
ブライデンも険しい表情をしながら、シルバーの発言に返す。
「勇者の願いでもそれは無理だな。奴は悪魔の子だ。生かしてるだけでも可笑しな事なのだ。それを外にだすなど断じてありえん!」
王の強い口調と言葉より、その発した内容にシルバーは悲しくなった。
最早シャルルを自分の娘とも見ていないのだ。
普通の人間ならば仕方ない事なのかも知れない。
しかし覇王とまで言われたブライデンの度量に少しの期待があったシルバーは、王に失望した。
「分かったよ。」
シルバーは言い返す事なく謁見の間を後にする。
その後、シルバーは毎日シャルルの元へ行った。
出してあげれなくてゴメンとシルバーがいった時は、シャルルは少し落ち込んだ。
だが、毎日来て世界の話をしてくれるシルバーと会える毎日は、シャルルの今までの一人で孤独だった日々とは違い、楽しくて仕方ない日々へと変わって行った。
そして二人は自然に恋に落ちる。
唯一ブライデンが許可を出したため、シルバーが牢の中に入る事は許されていた。
そしていつも愛を語り合い、世界を夢見て、幻覚魔法で花畑を作ったり、海を見せてあげたり、二人の幸せな時間は二年の月日をあっという間と思わせた。
その頃エルドラドとアルメニアの二国は二人の関係を良く思わなかった。
そして二年の月日をかけ、二国はあるものを作りあげる。
それは神の剣。
エルドラドが持つシルバーの細胞を使い、神聖魔法の効果を持つ剣を作り上げたのだ。
シャルルが開眼したときシルバーが殺せば万事解決なのだが、もし殺せぬ時はこの剣の出番となる。
与えられたのは、アルメニアの将軍ディアモール。
そしてその日はやって来る。