第5話 先生
ザワザワザワ。
「静かにしてくれ。」
ザワザワザワ。
「静かにしてくれ。」
ザワザワザワ。彼は担当のクラスに呆れていた。
家に戻った私は、家の掃除をしていた。
カランコロン♪♪
「はい。」
「すみません。相談があるのですが、よろしいですか?」
「ええ。お名前は?」
「佐伯弘行。地元の高校で教師をしています。」
「教師ですか。逆に悩みなんてあるんですか?」
「はい。僕の受け持っているクラスの子たちが、皆仲悪いし授業中も騒がしいし…。3年生で受験もあるんですけど…。」
「手に負えないということですね?」
「はい。」
「1度だけ授業を拝見させていただいてもよろしいですか?実際に見ないと分かりません。」
「どうぞ。明日学校にお越しください。」
次の日私は、佐伯先生がいる学校に行った。来た時に教頭先生に呼び止められた。
「あの?どちら様ですか?」
「原田美穂と言います。佐伯先生に用がありまして。」
「失礼ですが、事前に言ってもらわないと学校では対応できませんよ。という訳で今日の所はお引き取り下さい。」
「昨日行くって言ったんですけど。」
廊下の奥から佐伯先生から走って駆け付けた。
「教頭先生、彼女は僕がお呼びした人です。原田さん、こちらどうぞ。」
私は教室に連れて行かれた。私は教室を見た時に呆れた。授業中に携帯電話を触っている人がいれば、内職している人がいれば、弁当を食べている人もいれば、隣同士で話をしている人もいた。
「この状況を何人の先生方が知っていますか?」
「校長先生以外全員知っています。」
私は溜息をついた。
「今度、私に課外授業をさせてください。」
「分かりました。1回、教頭先生に確認してみます。」
結果、私は明日全校生徒の前で講演会をすることになった。
翌日、佐伯先生のいる学校の人間と地元の人たちを一般開放して、学校の体育館で講演会をした。
「皆さん初めまして、カウンセラーの原田美穂です。」
と言って時には、佐伯先生のクラスは煩かった。他の人たちは全員静かだ。1発賭けに出た。
「………。」
あえて沈黙の時間を作った。案の定、未だ煩い。
「今話をしている人たち。立って。」
誰も立たなかった。100%有り得ない。
「もう1度言う。今、話をしていた奴らは立てと言っているんだ。」
それでも誰も立たない。その時、私の後ろにあるスクリーンから映像が流れた。先程佐伯先生のクラスが話をしていた時の映像が流れていた。私って悪魔。
「これ見てなにも思わないの。立ちなさい。」
やっとクラスの人間が立った。私はクラスの全員の前に行き、こう問いかけた。
「ここにいる全員の前で恥をかいたね。無様な姿を見てどう?」
私は近くにいた女の子に聞いた。
「こんなことしてはいけないと思います。」
おー、強気。
「ならば、ここにいる皆さんに質問です。私のしたことと、子供たちがしたことのどちらが正しいでしょうか?皆さん手を挙げてくださいね。子供たちが正しいと思う人。」
誰も手を上げない。
「私が正しい人。」
会場にいる9割以上が手を挙げた。
「ねぇ~、分かったでしょ。あなたたちがしていたことが間違っていること。」
さすがに子供たちは何も言えなかった。
「因果応報、あなたたちがしたことは、あなたたちに帰ってくるの。と言うことで、この映像を皆さんの進路先に送ろうと思います。」
クラスの全員が負けを認めた。中には泣いている人もいた。一方で他の人たちからは大拍手が来た。
講演会が終わった3日後、佐伯先生が私の家に来た。
「原田さん、こんにちわ。」
「あら先生。座って。」
佐伯先生は私の目の前に座った。
「クラスの様子はどうですか?」
「はい、皆真面目になりましたよ。でも映像を進路先に送るのは大胆ですね。」
「怒らないんですか?皆の将来を潰したんですよ。」
「大丈夫です。あいつらには罰を与えないとなをりませんから。」
「先生も悪魔なんですね。」
「兎に角、ありがとうございました。失礼します。」
そう言って佐伯先生は帰って行った。その時だった。
「痛。」
“パパ、私を生んでくれて、ありがとう。生まれ変わったらまたパパの娘になりたいな。”
“真子、俺の分まで生きろ。いつかまた会える。”
あれ?この前行った教室だ。それに教室の隅に誰かがいたような気がした。 続く