バカとメイド(1)
二人は二日かをかけて喫茶文化とヲタク文化の混在する街・『ティータイーム』に到着した。町全体がレンガ造りでヨーロッパを思い起こさせるオシャレな街だ。町全体に焼き菓子の焼けたいい香りが漂っている。街の至る所にメイド喫茶がある。まさに夢の国だ。
「とりあえず、いろんな人に聞いて回るか。魔王の居城を知っている奴がどこにいるか、をな」
「オッケー」
楓太は早速近くのメイド喫茶へ。杖はとりあえずそこら辺においておいて、店内に入店!
カランカラン♪
「おかえりなさいませ、ご主人様」
店内には白と黒のヒラヒラした服を着た女性、メイド!またの名を男のロマンが優雅に歩いている。
「ほ、本物だ~~♪久しぶり~~♪萌え~~♪」
この街に来るのは五カ月ぶりだ。きっと新しいメイドも増えていることだろう。チェックしなくては。
「すいませーん。最近入った新しい子で、かわいい子いますか?」
「は、はい。あの、二か月前に入ったばかりの新人なんですが、その・・・この街のボスというか、女帝というか・・・」
「そんなすごい子がいるんですか!ぜひ会いたいです!!」
楓太の頭の中はぶっ飛んだ妄想が広がっていた。しかし、目の前のメイドは言いにくそうな感じで答える。
「いや、その・・・その方はやめたほうがいいかと・・・」
「なんでですか?」
「その、とても綺麗で可愛いんですけど、性格がなんというか、変わっている、と言いますか・・・」
「いや大丈夫ですよ。僕もかなり変わってますから」
どんだけ会いたいんだ。しかも自分で変わってるっていっちゃてるし。
「・・・わかりました。少々お持ちください」
金髪のメイドは楓太にさっと頭を下げて奥に戻っていった。いったいどんな子なんだろう。メイドの子がボスとか女帝とか言うんだからとんでもなくかわいいんだろうな・・・♪
五分ほど待つと店の奥から一人のメイドが現れた。彼女が現れただけで、店内の人々ははっと息をのんだ。楓太自身もすぐにこのメイドだと分かった。明らかに格が違う。オーラが違う。若葉色の長い髪は毛の先までサラサラとしていて、風のない店内でも風になびいている(いったいどうやって?)。周りのメイドとは少し違うメイド服、フリルの数が全然違うし、なんか露出が多い気がする。その青い人形のような瞳を見つめると本当に吸い込まれてしまいそうになった。
「お呼びでしょうか、ご主人様」
楓太はたじろいだ。声もかわいい。まるで小鳥が歌うようだ(古臭い表現だ)今まで会った中でダントツのメイドだ。
「あ、はい。コーヒーを一つ」
「かしこまりました」
髪をなびかせて店の奥に戻っていった。楓太はふぅーっと息を吐いた。柄にもなく緊張してしまった。