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バカと王国(2)


楓太とミントはまたしても魔王の地下居城の内部に潜入することになった。だが、先ほどとは目的が真逆。魔王を助けるために向かったのだ。そんな二人を見送った勇者様は改めて将軍率いる王国軍の大軍勢を見渡した。


「たいそうな数だな・・・」


楓太には、ここは俺が受け持つ、なんてカッコイイことを言ってしまったが、いささか無理があったような気がしてならない。それでも勇者様は聖剣の柄に手を当てて将軍を睨む。


「勇者様、行きますぞ!」


戦闘きって斬りかかってきたのはほかでもない将軍。勇者様は初めて、聖剣を、抜いた。


カチカチカチカチ・・・・・・


聖剣から何やら機械仕掛けのような音がする。とりあえず勇者様は将軍の一太刀をかわして聖剣を眺める。


「なんだ、この音は?これじゃまるで・・・」


そう呟いている途中で意図を解した勇者様は、何を思ったか聖剣を鞘ごと王国軍の連中に向かって放り投げた。その先には将軍もいる。


「どうしたんだ勇者様は!?なぜ武器を捨てるのか!」


将軍は訳が分からないという表情だったが、自らのほうに向かってくる聖剣を見てはっと気が付いたようだ。


「全員退避せよー!!」


将軍の叫びで混乱する王国軍兵士たち。勇者様はすでに地に伏せて身構えていた。


ドッカーーーーーン!!!!


王国軍隊のど真ん中に落ちた聖剣と鞘は爆発してその周囲を吹き飛ばした。


「ひどいことするよな、姫様・・・」


土埃の立つ中で地面に伏せていた勇者様だけが立ち上がった。




楓太とミントは地下の居城を進んでいた。一度通った道なので割とすんなりだったし、邪魔をしてくるモンスターがいない。既に中は壊滅状態だった。


「先鋒部隊の仕業か・・・!」


唇を噛む楓太。急がないと間に合わない。楓太の脳裏には魔王とその息子の姿が浮かんでいた。ミントは何もしゃべらない。財宝の詰まった麻袋を担いだまま驚くほどのスピードだった。財宝を置いておけばもっと速く走れるのではないかとか思ったが、ミントがそんなことするわけがない。


二人が魔王のいる地下最深部に到着した。


そこには、



地面にうずくまって


泣きじゃくる魔王の息子と、


血に染まった刃に貫かれている


雄々しき魔王の姿が


あった。



「魔王!」


楓太が駆け寄ろうとするがミントに制止される。魔王に突き立てた刃を引き抜いた先鋒部隊の一人。ここにはそいつしかいない。最深部までたどり着いたのはこいつ一人だったというわけか。そいつは地に染まった剣を一払いして血を払拭しようとした。そして楓太達を見た。


「誰かと思えば、とっくに死んだものと思っていた、一人目の勇者じゃないですか」


その男はさして驚いたふうもなくそう言った。ミントは訳が分からないといった表情だったが、楓太と真剣な顔を見てしゃべらないほうがよさそうだと判断したようだ。


「お前・・・王子様、なのか?」


楓太はその男に向かってそう言った。先鋒部隊のその一人は、この王国唯一の王子だったのだ。王子は少し汗をかいたらしくうっとおしげに金色の髪を掻き揚げた。


「魔王は私が倒した。これであなたたち、一人目と二人目の勇者の出番は終わりですね。私が英雄として名を挙げた。そう、私が英雄だ」


「そんなことどうでもいい!英雄とか!・・・魔王は優しい奴だった!もう人間を襲わないと誓っていたのに、僕たちには攻撃する理由はなかったのに!・・・どうして・・・」


「魔王の部下たちが今まで何をしてきたか忘れたのかい?謝ったらそれで許せてしまうのかい?」


「・・・僕は、許せる。魔王を信じたい、魔王にチャンスをあげたかったんだ」


「チャンスをあげたい?何様のつもりだ。やはりあなたはバカだな。魔王は魔王。私が自らとどめを刺してやろう」


王子剣を構えて倒れこんでいる魔王の心臓に狙いを・・・


「やめろ!」


楓太は杖の先で王子を殴った。自分が魔術師であるとか、相手が王子であるとか考えずに。


「クッ・・・!貴様・・・!?」


「僕はお前を許さない!・・・召喚!」


楓太の真紅の指輪から呼び出されたイフリートのルビー。そのまま勢いに乗って炎を王子に向けて繰り出す。


「やめろー!!」


王子を包み込む真っ赤な炎。それはまるで跳ね上がる鮮血の飛沫のようで、慟哭する王子の身体を無残に取り崩していくのだった。


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