似た者同士
君のことは信用してない。
そう断言された瞬間、胸の奥で何かが折れる音がした気がした。
怒りでも悲しみでもなく、もっと軽くて、乾いた音だった。
長い間、ずっと張りつめていた糸が、ようやく切れたみたいな。
「そっか」
口から出たのは、それだけだった。
自分でも驚くほど穏やかな声だったと思う。
君は少し身構えた顔をしていた。
きっと、泣かれるか、責められるか、黙り込まれるかを想像していたんだろう。
でも私は、ただ頷いただけだった。
「そうなんだ」
もう一度、確認するみたいに言うと、君は視線を逸らした。
その横顔を見ながら、私はようやく正直になれた気がした。
今までずっと、申し訳なさだけを抱えていたから。
「私も同じだよ」
君が、驚いたようにこちらを見る。
その目に浮かんだのは、安堵だったのか、それとも別の感情だったのか、私には分からない。
「今まで申し訳なくて隠してたけど」
そう前置きして、少しだけ息を吸う。
信用していない、という言葉は残酷だ。
でも、信用しているふりを続ける方が、ずっと残酷だった。
疑っていたわけじゃない。
裏切られると思っていたわけでもない。
ただ、全部を預けるほどの確信が、どこにもなかっただけだ。
それでも恋人という形を続けてきた。
手をつないで、未来の話をして、平気な顔で笑ってきた。
そのたびに、心のどこかで「ごめん」と言い続けていた。
「君も同じでよかった」
その言葉が口から出た瞬間、胸の奥が少しだけ軽くなった。
信用していないという事実より、
それを一人で抱えていなかったことの方が、私には大きかった。
君は何も言わなかった。
ただ、小さく息を吐いて、肩の力を抜いた。
たぶん、私たちは健全な恋人じゃない。
お互いを全面的に信じ合う物語には、最初から向いていなかった。
それでも、嘘をやめた今の沈黙は、
今まででいちばん誠実だったと思う。
信用していない。
でも、一緒にいる。
それが崩れるかどうかは分からない。
ただ少なくとも、この瞬間だけは、
私たちは同じ場所に立っていた。
やっと、同じ言葉を使って。




