消えない絆3
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衝撃の展開がありながらも、私達は捜査を続けた。捜査二日目の今日も大学病院の関係者やら瀬尾教授の友人やらに話を聞き、午後に会議室に集まった。
「捜査が進展しませんね」
私は、溜め息を吐いて言った。
「とりあえず、今まで集まった情報を整理しよう」
そう言って、御厨さんは捜査資料やらメモ帳やらを机に広げ始めた。四人集まってそれらを見直す。
「ん?御厨君と小川君は、瀬尾教授のところの助手にも話を聞いていたのか。知らなかったな」
あるメモを見て、秀一郎さんが言葉を発した。
「ああ、そう言えば、お二人には話していなかったですね。でも、大した話は聞けなかったですよ。瀬尾教授が禁煙を始めたとか、教授室の模様替えをしたとか・・・」
更に詳しく話す私の言葉を聞いて、秀一郎さんは目を見開いた。
「・・・犯人がわかった」
秀一郎さんの言葉に、今度は私が目を見開いた。
しばらくして逮捕されたのは、准教授の深町智だった。彼が発表した論文の一つが、大学院の学生の研究を盗用したもので、瀬尾教授はそれを指摘していたらしい。准教授は、盗用が公になる前に瀬尾教授を亡き者にしたというわけだ。
私と御厨さんが助手に話を聞いたところによると、瀬尾教授が禁煙をする前、喫煙の習慣があったのは教授と深町だけだったそうだ。そして、禁煙する際、教授は灰皿を教授室の棚にしまい、来訪者がタバコを吸う時だけ出すようにしたとの事。
つまり、教授が殺害された時灰皿が側にあったのは、来訪者がタバコを吸ったから。その来訪者とは、深町。
ちなみに、犯人が教授室に来る前に深町が吸った吸い殻が灰皿に残っていたという可能性は低い。
教授室の模様替えをしたのは事件当日の昼で、その時に灰皿の中身も綺麗に片付けられていたからだ。そして、深町のスケジュールから考えて、昼から夕方までの間に深町が教授室に来る事は出来なかったと思われる。
事件の直前にタバコを吸ったのが教授自身だったという可能性も無い。タバコの吸い殻に残った唾液をDNA鑑定して、その可能性は否定されている。
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