消えない絆2
よろしければ、読んで下さい。
今回は、(多分)衝撃の事実が明らかになります。
私達四人は、再び大学に戻った。今度は、瀬尾教授の下で研究をしていた准教授の深町智に話を聞く。
准教授は、五十代くらいの年齢の男性だ。質の良い論文をいくつか発表していて、もうすぐ教授になるかもしれないと言われているらしい。
「その時間帯は、ずっと家にいましたね」
准教授は、アリバイを聞かれてそう答えた。夜中だし、家族しかアリバイの証人がいなくても仕方ないだろう。
「教授が殺される動機に心当たりはありませんか?」
御厨さんが聞いた。
「まずは、瀬尾先生の患者の保護者ですかね。岸本さんと言いましたか。先生の治療方針に不満を持っていたみたいですからね。・・・後は」
そう言うと、准教授は堀江先生の方を見た。
「堀江君、君も先生に対して何か思うところがあったんじゃないのか。・・・私も詳しい事は知らないが、君が先生と深刻な顔で話しているところを見た事がある」
私は、ちらりと堀江先生を見た。堀江先生は、誰と目を合わせる事もなく、ただその場に固まっていた。
四人は、捜査一課の会議室に戻っていた。
「・・・堀江先生、事情をお聞かせ願えませんか」
御厨さんが切り出した。堀江先生は、花音さんを横目で見て言った。
「・・・ここでは、勘弁して頂けませんか。聞かれたくない内容なんです。・・・特に、木下さんには」
「話しても構わない。私が表に出ている間の事は、花音は覚えていないからね」
秀一郎さんモードの花音さんが言った。
しばらくの沈黙の後、堀江先生は口を開いた。
「僕は・・・木下さんの・・・花音の・・・父親なんです」
衝撃の告白だった。
堀江先生の話によると、堀江先生が大学一年生の時、サークルのコンパで、花音さんの母親である瑞穂さんと出会ったらしい。瑞穂さんは堀江先生の大学のOBとして、コンパに参加していた。
堀江先生と瑞穂さんは意気投合し、付き合うようになった。数か月で別れたが、堀江先生は、まさか瑞穂さんが妊娠しているとは思わなかった。
「一年前、瀬尾先生の代わりに花音を診るようになって、花音が瑞穂さんの子供だと知りました。そして、花音の年齢から考えて、もしかしたら父親は僕かもしれないと思うようになりました」
堀江先生は二十代に見えるが現在三十一歳。確かに計算は合う。
「それで、ある時、密かにDNA鑑定を業者に依頼しました。・・・結果は、僕が父親である可能性が90%を超えていました。瀬尾先生は、どんなきっかけかわかりませんが、僕がDNA鑑定を依頼した事を知って、詳しい事情を聞いてきたんです」
教授は堀江先生に、父親だと明かさないのかと尋ねた。そして、堀江先生は明かさないという選択をした。その辺りのやり取りを、深町准教授に見られたのだろう。
「何故花音に明かさないのかね?」
秀一郎さんが聞いた。
「花音が辛い目に遭っている時に何も出来なかったのに、父親だなんて名乗れませんよ。・・・いや、こういう言い方は卑怯だな。僕は、花音に責められるのが恐いんです。虐待の事を知らなかったとはいえ、花音を助ける事が出来なかったから」
「・・・花音が君を責める事は無いと思うが、君の意思を尊重して、花音に君が父親だとは伝えないでおくよ」
秀一郎さんが真顔で言った。
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