思い出トラベル
私は安堂 小雪。
妖怪と戦う一族の、長を勤めている者だ。
前任は私の師匠、紹妖 源という女性である。
彼女は・・・大妖怪に殺されていた。
最強の師匠だったのに、駆けつけたときには強大な妖怪がいて・・・・やめよう今は思い出したくない。
コロコロー
ボールが足元に転がってくる
少年達が元気にボール遊びをしていた所、軌道がそれて
こっちにやって来たようだ。
「仕方ないなー」
拾いあげて、彼らの方に投げてあげた
「ありがとう!お姉さん!」
お礼を言って彼らは彼らの遊びに戻った。
思い出すなー、
師匠が小さい子を助けて、女性なのに男性だと間違えられてた時のこと
「ありがとうお兄さん!」
「ん」
「少女よ!この方は女性だぞ!」
「えっ!そうなの!?ごめんなさいお姉さん。かっこ良かったから勘違いしちゃった」
「大丈夫だ、あまり気にしてない」
いつもクールな師匠も素敵だった。
スタスタ歩くと和菓子屋がある。
ここもよく師匠と来た。
「お隣失礼します」
「んどうぞ」
それぞれ頼んだ和菓子を口に運ぶ。
「小雪よ、私の教えを君に」
「はい!」
わくわく
「人は不思議な生き物だ」
「どゆことですか!?」
ふわりと笑って
「人は不思議な生き物だ」
なんて同じことを言うもんだから
「さらにどゆことですか!?」
私もつられて笑ってしまったんだ。
ポロリと一滴の涙が出てくる。
ダメだ
私はこの場所を逃げるように去った。
この訓練所で沢山稽古したなーよく師匠にやられまくたっけ?
「甘いぞ、あそこの和菓子よりも甘い」
片ひざが地面につく、カランカランと剣も落ちる。
悔しいと思えたあの日、師匠と剣を交えることはもう無い。あの時は苦しかったけど、今では楽しかったとさえ思える。
思い返せば微笑する。
「ここをもう少し力を込めろ」
とか
「目でとらえろ!じゃないと行動できないぞ!」
とか色々教えてもらったな。
懐かしい懐かしすぎるよ。
師匠がいる懐かしいと師匠がいない懐かしいは違うんだって
分かってるのに、分からない振りして言いたい弱さを許してください。
己の弱さを振り切るように、里を全速力で走り抜け辿り着いた所は
師匠とって最後となった場所。
来たくなかったけど、ここまで思い出したら
もう一度意思を固めておく為には、必然の思い出だと思うから、来た。逃げてはダメだって
「・・・・師匠ならそう言いそうですね」
堪えていた涙が、溢れ出す。
脳内に浮かぶのは、彼女の刀を受け継いだ時の話。
強大な妖怪は満足したのか私に気づかず去っていった、
すぐに駆け寄るも、冷たく返事がない。
ズタズタに引き裂かれた姿は見てて、クるものがある
「師匠!」
涙を流して、
誓った。
「必ず師匠の無念を晴らし、この世に平和もたらします」
返事してほしかった、
無言で恩師の刀"あお"を手にもち
愛刀の"きいろ"と共に、この場を去ろうとしたとき
「頼んだよ、小雪」
掠れた声で聞こえて
幻聴なんじゃないかって思うほど弱くて
今にも死にかけだって思えたから
「任せてください!師匠!今までありがとうございました!」
大きく叫んで伝えた。
返事はなかったものの、俯く彼女は微かに微笑んでいた。
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今私は!
「この記憶を乗り越えて」
二つの刀の持ち手を持って
気合いをいれる。
「今を歩く!」
長としても、師匠との思い出としても
両方を大事にしたいから
今日も妖怪を祓っていく。
ああ、私は心の中で強く
師匠を殺した妖怪の討伐を目論んでいる!!
これだけは譲れない思いだ!