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断章集-fragments-  作者: 海花
街角Acter's
4/10

*炎雷帝と反逆者達の話(4)

「チッ」


「女の子が舌打ちしない。

しかし、これはこれは……困りましたね」


犯人を事前制圧出来なかったことに苛立って舌打ちすればまぁまぁ、と苦笑した雷寿が私の背中を軽く宥めるように叩いて避難経路を探すように視線を走らせる。

銃声から犯人の場所は分かっているのに人質がいるせいで力技で制圧することも出来ない。

2人してどうしたものかと手をこまねいているうちに犯人達によりフロアが制圧されて全員一所に集められて、床に座らされる。

荷物を奪われて後ろ手に縛られる。

人質に目を向ければ年端も行かない少女のようで恐怖で母親を求めて泣き叫んでいる。

母親と思しき女性が犯人の1人に床に抑え込まれてなお子供を取り戻そうとして再度発砲されて跳弾が頬を掠めて血が流れる。


「雷寿」


「……ちょ、春告!?」


任せたわよ、と笑って立ち上がる。

慌てる雷寿を無視して群衆の中をゆったりとした足取りで進んでいく。

ちらりと見た店員達は震えていたりすすり泣いていたり役に立ちそうにない。


「その子を離しなさい。

代わりに私が人質になるわ」


真っ直ぐに少女へ銃口を向ける男を見つめる。


「私のパパは有名人よ。

そんな子供よりも私の方が人質としての価値は高いわよ

マスコミも大騒ぎでしょうし」


嘘は言っていない。

私の自称パパは誰もが知ってるような有名な俳優で既婚者になってからも結婚したい理想の男性の常に上位にいるような人だ、アレでも。

とても、有名人なのだ。

私の方が政府的に要人だが、誰もが知っていてすごい人と言うとパパが最適解となった。


「ほう?」


「知らない?

荒城 翠って俳優なんだけど」


別に1ミリも恐怖を感じていないがぐっと強く手を握って真っ直ぐに前を見て強がって平気なフリをしている正義感の強い少女という姿勢を演じる。

むしろ翠の名前にざわついた周囲に勝ちを確信して笑みそうになるのをグッとこらえる。

翠の話を聞いてて良かったと長い付き合いだが初めて思った。

演技のコツなんかは翠仕込みだ、素人に分かるわけない。


「証拠を見せな」


「スマホを返して。

パパに連絡するわ。

警察への連絡が心配ならそこのデモ用のテレビに繋いでテレビ通話しましょうか?」


私の態度に鼻で笑ったテロリストのリーダー格と思わしき男を小さく震えながらそれでもしっかりと要求すれば返してやれ。と言う合図で私のスマホが差し出される。


「繋いでくれる?

不正を疑われたら面倒だわ。

画面がつくまで私は操作しない」


それを受け取らずに電気のついているデモ機を指させばスマホを持ってきたテロリストが店員に声をかけてスマホをテレビに接続する。

嘘だったら殺す、と言いたいのか私の後頭部に銃口の硬い感触が伝わる。

雷寿の殺気が凄いことになってるが我慢して欲しい。

ピリピリする程の殺気は引き金を引く素振りを見せたら瞬きの間にこの空間にいる私と雷寿以外の全員を殺す事を躊躇ったりしないだろう。

私がメインの人質ならどうとでも制圧できるのだ。

私もまたただの人間の腕を切り落とすくらい瞬きよりも容易いことなのだから。


「OK、Google!

パパに電話して」


この前、翠に電話帳欄変えられてて助かった。

私の声を受信したスマホがテレビ通話状態で翠へ電話する。


「はーい、春告の愛しいパパだよー!

あぁ、うん、冗談だよ?

春告から連絡なんて珍しいじゃないか。

今日は雷寿と買い物に行くと言ってたのに……パパが恋しくなった?

それとも何かあったかい?」


「……パパ……

パパ、助けて……っ

買い物先で銃を持った人が沢山いるの……!

パパ、私怖い!!

私がパパの子だから、小さい子の代わりに人質になったけど怖い、怖いよ、助けて、パパ!」


能天気にも聞こえる翠の声に反射的に盛大な溜息をつきそうになったのを慌てて小さな密やかなため息に変える。

目の前にいたら無意識に殴ってたかもしれない。

理由はないが何となく腹が立つ。

殴らないように胸の前で両手を組むようにして握りしめる。

画面に映し出された翠の姿は待機中のためか全体的に緩やかなシャツとスラックスといった姿でコーヒーを片手に持っていた。

翠のファンでもいたのかこんな状況だからか何人かが倒れる音がした。

一瞬殺されたのかと思って焦ったがそんな動きはなかった。

殺されてたら雷寿が反撃しただろうし、私は私のやるべき事に集中しなければ。

親の姿に強がりが解けたというように涙目で震えながら訴える。

パパと呼ばれた翠の顔が僅かに緩むが直ぐにスマホの画面越しにこちらの状況が見えたようで厳しい表情になる。


「春告、大丈夫だから落ち着いてパパの言うことを聞いて。

今はどこにいるんだい、雷寿は無事か?

必ず助けに行く、必ずだ。

パパは嘘は言わない、だから信じて大人しくできるね?

犯人がいるなら要求を聞こう。

何が欲しい?金か?車か?マスコミへの中継か?」


「パパ……、わかった、信じてる。

雷寿は他の人質と一緒よ、怪我とかはしてない。

場所は……秋葉原のハドマップって言えば分かる?」


優しくなだめるような声に胸の前で組んでいた手を解いて目尻に溜まった涙を払うようにしてうなづいてみせる。

犯人の要求についてはほんの少し目線を後ろへ向ければ銃口が後頭部から外れる。


「金だ。

金額は……そうだな1億だ。

そうすれば娘の命は助けてやるよ。

あとはマスコミも盛大に呼べ

マスコミが集まれば人質解放の要求を告げる」

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