*炎雷帝と反逆者達の話(2)
「買うもの決めてるの?
それとも見て決める?」
お店に入る前にはこれを片付けなきゃいけないな、と目の前に迫るビルとの距離と歩く速度を考えて、
もはや飲むと言うより食べると言っても差し支えない勢いで急いで中身を空にしたカップを手にしてゴミ箱を探して視線を泳がせると、飲み終わったらこっちね、と差し出されたビニール袋。
買ったお店のものだろう。
そこに飲み終わったカップを入れて既に雷寿のものが入っていたので口を縛っているとそういえば、というような顔で雷寿が尋ねてくる。
「候補だけ。
あとは実物見て考えるわ」
ぎゅっと固く縛った袋から目を上げて雷寿に答えればやっぱ実物見たいよねー。と笑った雷寿にゴミの入った袋を取り上げられる。
「その前にショッピングモール寄っていい?
イートインコーナーがあればこれ、捨てられると思うから」
「構わないわよ」
近くにあるショッピングモールを指さした雷寿に頷いて答えるとありがとう!と嬉しそうにされるが、家電製品を見に行くのに水分のあるものを持ち歩くのはデメリットが高いので、結局は私の為なんだよな。と思うと複雑な気持ちになる。
風がざわざわと囁く中に不穏なものも不快なものと無い。
穏やかで良い休日だと小さく空を仰いだ時に行きますよ、と雷寿が差し出した手をそっと重ねるように握る。
「そうだ、買い物が終わったらまたこのショッピングモールに来ませんか?
ここ、星の金貨珈琲が入ってるんですよ。
この前でた季節限定の新作が可愛らしいカップに入っていて飲みのもの自体もピンク色で可愛いんですよ。
春告もきっと気にいると思います」
「雷寿、私は別に可愛いものが好きなわけでは……」
「行きますよね?」
「……行くわ」
ニコニコと上機嫌な雷寿にため息混じりに答えるが私の了承に雷寿が益々嬉しそうな笑顔を浮かべる。
私と行っても面白くもなんともないだろうけど、雷寿はいつも嬉しそうに、そして楽しそうに休日の度にこうしてあちこちに連れ出してくれる。
今日もしず姉さんの誕生日が近いからプレゼントの相談したらここに連れてきてくれたのだ。
……昔はこうじゃなかったはずなんだけど、バディを組んで以来ずっとこんな調子で……、もうあれから10年以上経つのか。
目を閉じて頭を軽く振って回顧を振り払う。
「春告?」
「なんでもないわ、行きましょう?
大まかに候補はあるの」
私の行動を訝しげに見つめる雷寿に肩を竦めて答える。
見上げたビル、そう言えば今日は随分と世界が静かだと僅かな不安を振り払うように雷寿に手を差し出せばそうですね。と嬉しそうな雷寿が手を握り返す。
雷寿が入れば私はどんな敵も打ち払えるのだと言い聞かせるように私達は歩を進めた。