*炎雷帝と反逆者達の話(1)
街角Acter'sの春告と雷寿の休日のお話
6話くらいで完結する予定です。
「春告ー」
名前を呼ばれて振り返る。
異能があるから本当は呼ばれる前から雷寿がタピオカティーを両手に持って戻ってくる事は分かっていたけどこう言うのは雰囲気が大事だとしず姉さんがそう言っていた。
「さすがにもう最盛期ほどじゃなかったけど、ほらこれがタピオカだよ!」
「……図鑑で見たカエルの卵みたいね。」
黒い粒の浮遊する薄茶色の液体の入った半透明のプラスチックカップを受け取る。
楽しそうな雷寿の説明に液体と雷寿を見比べてぱっと頭に思い浮かんだ言葉を口に乗せる。
それ、結構みんな言うんだよね。なんて楽しそうな雷寿の笑顔が眩しくてそっと視線を逸らして買ってきてもらったタピオカティーをストローで吸い上げる。
このカエルの卵みたいな丸いツルッとしたフォルムなのに吸い上げてもなかなか上がってこない。
見た目的には余裕で上がってきそうなのに、上がってこない。
訓練もしてるし、肺活量は弱くないはずなのにストローから中身が何一つ上がってこない。
どうなってるのかと半透明のカップを横から覗き込んだらすぐ横から我慢しきれていない雷寿の笑い声が漏れ聞こえてくる。
横目で見れば雷寿のカップの中身は半分に減ってるし肩をふるわせて笑っている。
「雷寿」
「タピオカの塊が詰まったのかもしれませんね。
ちょっと貸してください」
恨めしい気持ちで睨むとまだ笑っている雷寿がにやけた顔のまま私と自分のカップを入れ替える。
ストローをつまんで軽く動かしたあとでこれで飲めると思いますよ。と差し出されたので雷寿雷寿に渡されたカップを返して自分のカップを受け取る。
雷寿をちらっと見れば笑顔でこっちを見ている。
「……っ!」
さっき吸えなかったから、と思いっきり吸い込んだら固形物が勢いよく喉に飛び込んできて噎せる。
食べ物を粗末にするなと小さい頃に言われていたで手にしていたカップの中身をぶちまけないように噎せる私をとうとうこらえきれなくなった雷寿が笑いながら背中をさすってくる。
「らいじゅ」
「そっと吸わないからですよ。
なんでも知ってると思ってましたけどほんと普通の人が普通に知ってるはずのことに関してとても疎いんですね」
くすくすと笑う雷寿にむせて涙目になる私は腹いせに雷寿のネクタイの内側の方を思いっきり引っ張っておいた。
ぐえっとカエルが潰れたような声がしてむせる雷寿に背を向けてゆっくりとタピオカティーを吸い上げる。
口の中に入ってきたタピオカを咀嚼する。
もちっと言うよりはもちゃっとかべちゃっと言うような変わった食感がする。
こんにゃくと白玉の間ぐらいの感じのとても甘いよく分からないこれがタピオカというものなのだろう。
見た目の割りに甘いものが大好きな父さんあたりは喜びそうだなと思いながらもちゃもちゃと咀嚼する。
「タピオカで噎せた春告を笑った罪でネクタイで絞首刑にされるところでした」
危なかったとネクタイを緩める雷寿が隣に並んで、初めてのタピオカの感想は?と尋ねてくる。
「食感が変
でも……不味くはない」
「それは良かった。
春告、意外と好き嫌い激しいですからね。
今度、司馬さん達も一緒にタピ活しましょうね!」
「タピ……なんて?」
しかめっ面の私にニコニコ顔の雷寿から飛び出した謎の単語に怪訝な顔になる。
タピ活はタピオカを飲む活動の事らしい。
タピオカの飲食を主目的とした外出、という事ならあの自称パパの翠も着いてくることは無いだろう。
「タピ活……覚えたわ」
「春告の口から略語が出てくると変な感じしますね。
さぁ、今日の目的地である電化製品の売ってるお店までもう少しですよ」
タピオカをもぐもぐと咀嚼しながら頷くと雷寿がそんな神妙な顔するような言葉じゃないんですけどね。と苦笑してから今日の外出の目的地を指さす。
見上げるほどあるビル群の中、大きな看板が掲げられている。
真っ赤なデザインに白文字で描かれたロゴに今度は反対に白地に赤で書かれた店の名前。
私達は今日、大手家電量販店と呼ばれる店のビルが堂々と聳えていた。