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週末は、異世界行って金稼ぎ  作者: 浅野 
ウェルカムニューワルド
9/88

ふぐ、食べに行こう2(カブ)

「ああ~ん!? それじゃあおまえはあれがいいってのか?」


「当たり前じゃない! マリーは嫌がってたじゃない!」


「それなら本人が断ればいいことだろ!」


「だからそれができないんじゃない! 家のしがらみとかで!」


「それならなんの関係もないやつがぶっ壊したらそれこそ駄目だろ!」


「じゃあゲンゾーは? ゲンゾーはいいの!?」


「ばっきゃろー、ゲンゾーさんは男の中の男だろうが!」


「あの……、新幹線内ではお静かに」


「「サーセン……」」


 俺たちは頭を下げると椅子に座り直した。


「まったく、あんたのせいで怒られちゃったじゃない。それで、下関までどれくらいかかるの?」


「6時間くらい」


「そんなにかかるの!? 寝る! 私は寝る! 着いたら起こしなさい!」


「寝ろ寝ろ! 起きてたらうるさくて敵わねえ」


 俺もそのつもりだったし。昨晩ほとんど寝てないからなあ。

 ……それにしてはあんまり眠気ないな。


「私、昨晩ほとんど寝てないけど、あんまり眠くないな」


「おまえも?」


「むしろ、なんか調子いい」


「俺も」


 てことは異世界に行っていたことが影響あるのかな。


 余談ながら、座禅が健康にいい理由として、心と身体の関係があるという説がある。

 身体というものは、怪我をしたり病気をしたりすれば自然と治そうとするものだ。

 だが、それがうまくいかないのならば、それは心が阻害している可能性がある。体調が悪ければ気分が沈むもんで、それが悪いほうに影響している、てなもんだ。

 だから、座禅をすることによって心と身体を切り離して、身体による自然治癒に任せることが健康に繋がるってわけだ。


 異世界ではいくら怪我をしてもこちらに戻ってくると、その怪我はなかったことになっている。感覚では異世界で感じた痛みもなにも覚えているが、身体はまったく傷ついていないのだ。

 ひょっとしたら、異世界に行っているのは俺の中のなにか、心とか精神体とかそういうので、身体自体は行っていないのではないか、そんなことを思った。

 



「ねえ……、あんた、怖くないの?」


「なにが?」


「異世界で戦うこと」


「……」


 何十というゴブリンが明確な殺意を持って向って来るのだ。怖くないわけがない。

 そして、今回、俺たちは傷ついた。


 現代人が極端に恐れるものがある。


「血」だ。


 血はリアルだ。直接「死」を連想させる。

 今まではゴブリンを倒しても光の粒子となって消えてくれた。血を見ることもなかった。

 そう、ゲームのように。

 だが、俺たちは直接血を流した。「死」に直面した。


「あの世界で死んだらこっちの私たちはどうなるのかな」


「びびったか?」


「びびっては、いる。正直怖い」


「……俺も」


 ブリは姿勢を変えて俺の顔を覗き込んできた。


「じゃあ、これ、止められるならやめる?」


「やめない」


「なんで?」


「さあ、な。探せば理由はいくらでもありそうだけど、一番の理由はイモ引くのがダサいから、かな」


「そっか……、じゃあ私もやめない」


「やめてもいいぞ」


「絶対やめない!」


「なんでだよ」


「わかんない?」


「まったくわからん。おまえのことはよくわからん」


「人の価値は、ね。セックスより気持ちいいことを知っているかどうか、だって」


「……達成感ってことか?」


「さあ? でも、私は言い換えてこう思う。人には死んだほうがマシってことがある。人の価値はそれを知っているかどうかで決まるって。どう?」


「なんの引用かは知らないが、おまえが言うとよさが消えるなっ痛え!」


 ブリ、俺の肩にパンチしやがった。


「私にはあるの! 死んだほうがいいってこと!」


「なんだよ、それ」


「あんたが私の彼氏になったら教えてあげる」


「それ、絶対教えないって言ってるよな!」


「あははははは!」


「新幹線内ではお静かに!」


「「さーせん」」



ここまでお付き合いいただきありごとうございます。

もし興が乗りましたら、評価、感想などを頂けたら嬉しいです。


今後もお付き合い頂けたら幸いでございます。よろしくお願いします。


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