輝くクズ
そして、次のクールタイム。
「……イオのせいだ」
「人のせいにしないでください!」
……貴美子さんに振られた。
いや、正確には振られたわけではない。
「ただ、距離を置きたいって言われただけだからまだ脈はあるよな!」
「カブ氏。それは恋愛マスターの私から見れば、完全な別れ言葉ですぞ」
「おまえは恋愛マスターじゃなくてエロゲマスターだろうが!」
「でも、完全に振られたよね~」
「わかる~。洋ドラでいうところの『友達に戻りましょう』的な?」
アニオタトリオどもは……。
「可哀想なカブさん! 年上の悪女に騙されたんですね。こういうときはぱーっと騒いで忘れちゃうのが一番ですよね。私、静かな水族館とか行ってみたいです」
「パーっと騒ぐのに静かな水族館なの?」
ダイゴに突っ込まれるエト。
「かぶかぶ」
「おお、ナギサ。慰めてくれるのか?」
「ざまあ!」
ざまあ!
ぶるぷるりん!
「くそがき!」
のりこに乗り脱兎のごとく逃げるナギサ。
逃げ遅れた中村をぶん殴るが効いていない。くそ、物理無効か!
「なんなんだおまえらは! 少しは俺を気遣え、慰めろ!」
「可哀想なカブさん。私がついてますからね」
「エト、とりあえずその満面笑顔はやめろ」
胃袋に拳大の石ころが貯まっているように腹が重い。
あ~、なにも考えずに座禅がしてえ。
「はいはい。その辺で。カブ、次回のレイドバトルだけどお呼ばれしてるからちょっと行ってきて」
「お呼ばれ? また新機能が追加されたのか?」
「うん。どのレイドバトルに参加できるのか選べるようになったんだ。今回は3Bとシャイニングバスタードが共同で最難関Aランクレイドボスに挑むって」
「シャイニングバスタードってのは知らねえな。3Bは確か片メガネのとこか」
「そう。川瀬祥子女史に手伝ってくれって頼まれたんだよ。君名指しでね」
「私も行きましょうか?」
「いや、カブひとりで頼むよ。他の人がいるとなんだかんだでカブは気を使うからね」
「行かないって選択肢は?」
「行ってきなよ。もともとカブはひとつのことをじっくりと煮詰めて考えるタイプじゃなくて考えながら行動するタイプでしょ? 膝抱えてウジウジしていても変なスパイラルにはまっちゃうよ。それに……」
「それに?」
「いいストレス発散になる」
それはつまり、久しぶりに本気出していいと?
小癪なことに、確かにひとりでウジウジしていても気分は晴れそうにない。
つーわけで、俺はレイドバトルに参加することにした。
舞台はごつごつした岩場。障害物が多く見晴らしが悪いため、サバゲやるには面白そうな場所だ。
人数は100人を超えたくらいか?
ていうか、女子率高いな!
8割くらい女か?
それに合わせて、なのかは知らんが、以前はいたトゲ付肩パットみたいな変な格好のやつが減って、代わりに軽装の、というよりオシャレ重視の武装したやつが増えた。
中にはスカートとかもいるし。
「これで最難関の敵に挑むのか?」
いや、やばいのは見た目だけで中身はバリバリの武闘派なのかもしれない。
ブリとかも防御無視のコスプレとかするしな。
……訂正。ブリみたいなやつが他にいてたまるか。
「カブくん、お久しぶりね」
声を掛けてきたのは川瀬祥子。長身に片メガネ(モノクル)が特徴の女だ。
一茶の通う超進学校の生徒会長。一茶曰く『天才』らしいが、煽るとすぐ切れる面白いやつだ。
「カブくん? どうしたの、なんか元気ないみたいだけど」
「わかるか? 今失恋中なんだ」
「……ぷ!」
「笑ったな! 今笑っただろ!」
「ごめんなさい、むふふ、あまりに想像外過ぎて!」
片メガネはプルプルと震えて笑いを堪えている。なんでこう人の心に鈍感なやつが多いのか。
と、俺と片メガネの間に男1人、女3人が割って入って来た。
「祥子さん!」
「あ、航くん。数学オリンピックの強化合宿以来ね」
男は中背の細マッチョでサラサラの前髪を持つ、好青年って感じのやつだった。うん、女受けがよさそうだ。
「航くん、紹介するわね。こちら、ヘブンズウルフのカブくん」
「ヘブンズウルフ?」
男の目元に、露骨な蔑みが浮かんだ。
まあ、これは仕方ない。最近は露骨なポイント稼ぎのために方々で敵を作っているからな。
「悪いけど、ここでは勝手な行動は許さないよ。ここは祥子さんの『3B』と俺の『シャイニングバスタード』が仕切るから」
「……てめえ誰だよ」
男は一歩前に出ると、威圧するように俺を睨みつけてきた。
すると……。
「お兄ちゃん、やめて。底辺の臭いがついちゃうよ!」
そう言って男の手を引いたのは、弓を持った女だ。
「どうか~ん。底辺労働者は見ていると気持ち悪くなるから、ダンゴムシみたいに石の下に隠れて視界に入らないでくれるかな」
そう言ったのはレイピアを持った女。
「いや、これは航が悪い。自分から汚物に近づくなどやめるべきよ。まったく、航は私がいないと駄目ね」
薙刀を持った女がそうのたまう。
男のほうはやれやれと言った感じでドヤ顔だ。
えっと、どう反応していいのかわからない。
「とりあえず、喧嘩売られたってことでいいのか?」
「ま、まあ待ってくれ」
仲裁に入ったのは片メガネだ。
「航、彼には今回私が頭を下げて来てもらっている。私の顔を潰すのか?」
「あ、いや、そんなつもりは……」
「カブくんも。今回君にはいざという時の切り札と考えている。しばらくは、私たちに任せてもらえない?」
「……勝手にしろ」
俺は不快な連中に背を向けた。
「あんな奴、たいしたことないわよ!」
そんな声が聞こえたが、無視した。
俺は岩の上に乗り、結跏趺坐(座禅の座り方)をした。
「お手並み拝見といこうか?」
スキル『ホークアイ』を発動し、戦闘を上空から眺める。
敵は2つの頭を持つ、学校の校舎くらいの大きさの巨大な蛇だった。
それが2匹。
3Bと男のクランでそれぞれ手分けして戦っている。
まあ、善戦してはいるようだが。
「こんなもんかよ」
敵も味方も。
敵はレベル90代と高レベルではある、が、そこまでだ。レベル100越えのベヒーモスレベルと比べると明らかに格下感がある。
味方にしても、聞いている限りこいつらトップクランらしいが、あの敵を瞬殺できないようじゃなあ。
3Bは上級魔法の隠し玉持ってそうだが、それすらも胡乱に感じる。
結論は、
「こんなもんじゃないだろ?」
俺は立ち上がり、アイテムボックスから最強の銃を取り出した。
チーヨウ(蚩尤)。
重量は50キロ近くあるし、全長は2メートルを超える。
歩兵の携帯兵器として見るなら、誰が持ち運ぶんだっていうおバカ兵器だが、威力はこの夏にシュトーク社から仕入れた武器の中でも群を抜いて最強だ。
俺は今回のレイドバトルは最難関だと聞いていた。
だから、俺が知る中で最強の敵を倒し得るだけの準備をしてきた。
それが、これだ。
目の前には4つの頭を持つ巨大な蛇。
片メガネたちが相手にしているやつの、軽く2倍はでかい。
それが、まるで山が動くかのようにゆっくりとこちらに迫ってきていた。
片メガネたちは未だに眼前の蛇に手こずっている。
対処する余剰兵力はなし。
俺以外は。
「羊女に比べれば多少物足りないが、ストレス発散に付き合ってもらうぜ」
俺は敵に銃口を向けた。
敵は俺を認識し、不快な威嚇音を鳴らしてきた。
俺は、蹂躙を開始した。
1部了
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
これにて「週末は、異世界行って金稼ぎ」の1部終了です。
物語はまだまだ続きます、というよりこれから始まりますが、作風はガラリと変わります。
具体的に言うと、主人公がカブから最終話に出てきたシャイニングバスタードの航に代わります。
ただし、無双で俺TUEEE! する主人公ではなく、カブにフルボッコにされる主人公です。
ええ、作者が書こうと思ったのはボロクソにされるハーレム主人公であり、カブはその敵役として作られたキャラでした。
今後の展開は、現実世界にギルドを作る友沢守、そこで協調路線を進める航に独自路線を進めるカブを主軸に物語は進んでいく予定です。
「もっと周りに合わせろ!」
「なんでてめえら雑魚に合わせなくちゃなんねえんだ?」
てな具合に。
いつ投稿するかは未定ですが、気長にお待ちください。
次は悪役令嬢物を書きたいし他にも書きたいものがあるので本当に未定です。悪しからず。
興が乗りましたら評価を頂けると嬉しいです。
それでは次回作までお元気で。




