ILZ強襲4(守)
俺は苦笑した。
「これはまいった。歯が立たん」
まさかこれほどとは。
まさかここまで一方的にやられるとは、いつ以来か。
中学では覚えがないとなると、小学校以来か?
虎の子の魔法攻撃隊も沈黙している。
元々上級魔法構築は高度な集中を必要とする作業だ。ダークネスをかけられた時点で詠唱は中断、最初からやり直しだろう。
つまり、逆転の方策はなし、だ。
だが、俺たちにも切り札はある。
勝つことはできなくとも、負けないことはできるのだ。
「瑞樹! やれ!」
「……いささか口惜しいが仕方ない。了解した」
瑞樹の声と同時に、丘を中心に半球形のドームが覆う。
やがて消えていく黒い靄。
そして轟く爆発音。
門を粉砕し、駆けてくる影。
レオタードにベレー帽。今回はなんのコスプレだ?
「スーパーデンジャラスリグレッツオブデンジャーぶへ!」
影はドームに顔から突っ込み、べちゃりと張り付いてずり落ちた。
……なぜ俺はこんな女を好きになったんだろう。
女、ブリのところに、さらにふたつの影が空から舞い降りた。
ひとりはユルフワの髪を後ろで束ねた少女、河本の娘、ここではエトといったか。
そして、もうひとりは小躰に坊主頭の男、カブだ。
カブは地面に伏して顔を押さえているブリの尻を蹴飛ばすと、こちらを睨み、ドーム、セーフエリアのバリアを殴った。
俺は、カブの前に立った。
「……逃げやがったな」
「否定はすまい。実際、見事な手合いだった。してやられたわ」
このまま戦い続けても、俺達は全滅していただろう。
だから、そうならないように手を打たせてもらった。
セーフエリアの発動による逃げ切り。
それが俺たちの奥の手だ。
卑怯と言われようともこの世界『ニューワールド』には、この手の抜け道がけっこうある。
俺たちは、それを使ったに過ぎないのだ。
もっとも、正也隊は全滅し、本陣もいいように蹂躙された手前、痛み分け、というにはこちらの被害が大きすぎるのだが。
にも拘わらず、カブは俺を憎々しげに睨みつけていた。
「なにを急く? なにを焦る? 重要な情報を持っているなら俺にも渡せ」
「黙れ。てめえごときがなんの役に立つ」
「かもな。だが、俺の背後には友澤がいる。仲間もいる。なんとかなるかもしれんぞ」
カブは忌々し気にドームにつばを吐きかけ未だに倒れ伏しているブリの尻を蹴って起こすと、背中を向けた。
「お仲間に手足縛られて身動き取れなくならないように気を付けるんだな」
「肝に銘じておこう」
カブとエト、それにブリは俺たちの前から消えた。
俺は大きく息を吐き出すと、その場に膝を付いた。
「兄様、お疲れ様です」
横を見ると瑞樹が立っていた。
「今回は完全に負けですな。いやあ、完敗です」
「ああ。負けだ。しかし、これから俺たちの『ギルド』にあいつらを入れられると思うか?」
「可能か不可能かではありませんな。ヘブンズウルフの加入は、我が『ギルド』結成にはマストです」
俺はその場で大の字に寝た。
「重すぎる! 誰か変わってくれ!」
蒼天を仰ぎ見る。
太陽は変わらず、中空に張り付いてた。




