ILZ強襲2(守)
急に不快なビープ音が鳴り響く。
「何事だ!」
「コンクエストが仕掛けられました!」
「へえ♪」
それを聞き、瑞樹の口元が愉悦に歪んだ。
「第1級臨戦態勢! 全員速やかに持ち場に付け! 外に出ているのは?」
「金城隊30人ほどが野外活動中です」
「正也には陣に戻らず敵の索敵と殲滅に従事するよう伝えろ!」
俺は席を立ち、司令室を出た。
そこは、小高い丘の上だった。
見渡せば丘を囲むように張り巡らされた柵と堀。
典型的な「モットアンドベイリー」だ。
古典的な縄張りだがそれだけに欠点も少ない。
水堀を越え柵を壊すという例外を除くならば、正攻法の攻撃方法は正面の門を破壊して侵入ということになる。
だから、俺は正面門の前に重厚な兵を配置した。
「兄様、戦略は?」
「セオリー通りに。敵の侵入を防ぎ時間を稼ぎ、敵を正門前に集めて上級魔法で一掃する」
上級魔法は強力だ。100人、1000人という大集団を一撃で討滅するだけの威力がある。しかも、俺たちには瑞樹のスキル「キリングフィールド」がある。
基本的に魔法攻撃隊の詠唱が間に合えば、俺たちの勝ちは揺るがない。
もし敵が上級魔法を使ってきたら?
それには対策、というより裏技が用意してある。
俺たちが絶対に負けない裏技だ。
「守さん……、金城隊全滅の連絡、入りました」
「……誤報ではないのか? まだ10分と立っていないぞ」
正也はこのクランでも上位のレベルを持つ強者だ。それが、あっさり全滅を許しただと?
「金城さんからの最後の報告です。敵は『ヘブンズウルフ』。数は不明なれど実銃で武装せり」
俺は、言葉が出なかった。
いや、想像できなかったわけではない。
なにより、俺たちに喧嘩を売る馬鹿がそうそういてたまるか、という思いが強い。
俺は、インベントリからプレートメイルを取り出すと、即座に着用した。
俺は、大きく息を吸った。
「瑞樹」
瑞樹は頷くと、朗々と謡った。
「天狼が遊びに来てくれたぞ! 退屈させるなよ、全力でもてなせ!」
俺も瑞樹に続く。
「侮るなよ! 数は少ないが格上だと思って対処せよ!」
歓声が上がる。
士気の高さが伺える。
友澤の下にいることが彼らの誇りになっているのだ。
だが、そんなものを歯牙にもかけぬものもいる。
「瑞樹、全体の指揮を取れ。俺は丘を下りて遊軍を指揮する。相手がヘブンズウルフならば、ブリあたりが単独で柵を突破して来かねん」
「待ち人来る、ですか?」
「戯れるな。敵に回してあれほど厄介な女もおらん」
単騎で好き勝手動くから読めんし、確かな実力もある。
こちらとしては、死に駒になることを承知で兵を裂かねばならんのだ。
「いいか、油断するな! 敵は実銃を持っているぞ!」
幸いにして我らの主兵力は重装歩兵。
しっかりと守りを固めれば並の攻撃になら耐えられるし、奇をてらった狙撃も、陣地の縄張りの関係から難しい。
十分に対策はできる。
そう思っていた。




