ILZ強襲1(守)
最近追加された『ニューワールド』のランキング機能によると、現在クランは5強となる。
まず、俺、友澤守の率いる「ILZ」。
天才川瀬祥子の率いる「3B」。
女性中心の「シャイニングバスタード」。
ローティーンが多く在籍する「N°4(ナンバーフォー)」。
そして、悪評紛々たる「ヘブンズウルフ」。
「兄様よ。ヘブンズウルフはすでに第6階層にまで深化したそうですよ」
「聞いている。あいつら、なにを慌てているんだか」
階層深化にはメリットもデメリットもある。
メリットは稼げるポイントが多くなることと、ボーナス特典として1クールタイムの時間が1時間延長されること。
一方でデメリットは、敵が強くなるため死亡率が上がることだ。
この世界はゲームのようでゲームではない。
死んでしまえばコンテニューはできないのだ。
我々ILZはそのことを念頭に踏まえて、とにかく負けない体勢を整えるようにしている。
レベルを上げ、スキルを磨き、装備を整え負けない戦い方を身に着ける。
一方で友澤の財力と情報力を使ってプレイヤーを勧誘し、味方を増やしていく。
現在のILZ在籍数は100人を超え、全クラン内でもトップの大所帯だ。
よく言えば堅実、悪く言えば臆病な経営をしているところだ。
以前ブリに引き抜きを仕掛けたところ、「つまんね」で切り捨てられたのはいい思い出だ。
俺は遠い目をして紅茶を啜った。
ここは我が「ILZ」の司令室だ。
機能は全クラン員の情報をリアルタイムで集約でき、全員と音声連絡ができるという代物。
ワールドカスタマイズで300万もしたが所帯の多い我らとしてはその価値がある代物だ。
ちなみに言うとILZは、 Ilon like a Lion in Zion. (ザイオンのライオンのように強く)の頭文字。
由来はブリに貰った腕輪だが、
「ライオンと獅子は違くね?」
と突っ込まれたのはクラン結成して名前登録した後だった。
「兄様、目が赤いですが?」
「気のせいだ。それにしても、ヘブンズウルフの悪評は散々だな」
奴らの名声は、ひょっとしたら友澤クループのバックアップを受ける我々を超えるかもしれない。
理由は、彼らの悪名によるものだ。
毎週のように他クランにコンクエストモードを仕掛け略奪の限りを尽くし、レイドバトルでも他参加者を無視して敵を殲滅するのだ。
コンクエストモードは、そういう機能があるとはいえやっていることは『プレイヤーキラー』(この言葉はブリに教えてもらった)で嫌われる行為だ。
レイドバトルにしたって取決めがなければ早い者勝ち、という理屈はわかるが、他参加者の分までポイントを独り占めしてしまえば反感は買う。
いくら合法とはいえ、度が過ぎれば敵を作るものなのだ。
「なにかしらの方法で規制する必要があるな」
「彼らが従いましょうか?」
「どう思う?」
「腕力では無理でしょうな」
妹の瑞樹はそう断言する。俺もそう思う。
正面から戦って負けるとも思わないが、こちらの被害も甚大だろう。
もし勝てたとしても被害が大きく得るものも少ない。
これは、孫子の兵法で言うところの「費留」というやつで、もっともやっていはいけないことだとされている。
俺がこの選択をすることはまず有り得ないことだ。
だが、
だが、だ。
向うから仕掛けてきたとするならば?




