進化する敵(一茶)
批判を承知で近世以前の科学技術を歴史的に区分するのならば、それは、石、鉄、肉、火の4つに区分される。
人類はまず石器を使い狩猟を行った。
やがて青銅、銅と錫の合金が発明されると、今まで出来なかった森の伐採や固い大地の開墾が可能になった。
結果、穀物生産量が増え、人口が増え始める。すると今までの土地では手狭になり、人口が拡散するようになった。
そこで多くの人や物を遠くまで運べる肉、例えば馬が使われるようになった。
そして銃火器や蒸気機関。
産業革命……。
「一茶さん、なに言ってるんですか?」
イオちゃんに冷ややかな目を向けられる。
この子、顔は可愛らしいのに時たま容赦がなくなるんだよね。もっともそういうところがないとブリちゃんやケイちゃん、それに新しく仲間になったベンの『アニオタトリオ』の手綱を握れないんだろうけど。
「ああ、ごめんごめん。つまり、階層深化は少し待って欲しいんだ」
現在、ヘブンズウルフでは第4階層まで深化が進んでいる。
階層を進めることでクールタイムの時間を1時間延長する特典もあるのでどんどん進もうと思っていたんだけど、ここで問題が発生した。
敵が強くなったのだ。
残念ながら単純な筋力の話だけではない。
科学技術の話で、だ。
第1階層、一番初めの頃はゴブリンは打製石器を使っていた。鉄製装備なんてジェネラルだけだった。
それが第2階層、正直気付かなかったのだがゴブリンの装備は如実に変わっていた。目立たない変化だが、装備に青銅製の武器が使われだしたのだ。
思い出してみれば第1階層でゴブリンの使っていた弓は木を折り曲げただけのものでせいぜい射程は10メートル程度。それが第2階層では複数の木を束ねた複合弓になっていて射程は50メートルまで伸びていたのだ。
コンクエスト開けの第3階層。恥ずかしながらこの時点でも僕はゴブリンの装備がよくなっていることに気付けなかった。
言い訳させてもらうなら、新しく出現したモンスターが複数いたためそちらの分析を優先させたからだ。
正直僕たちも育っていて、多少敵の装備がよくなろうとも雑魚扱いできるくらい強くなっていたというのもある。
そして、直近の第4階層。ここで僕は気付いた。うん、ゴブリンが大型のトカゲに跨っているのを見たら誰だって気付く。
「ちょっと神経質になりすぎなんじゃねえか? 別にただの雑魚だろ」
「カブ、知らないみたいだから教えてあげるけど、僕、命1個だからね?」
「奇遇だな、俺もだ。ていうか俺、お前の指示でけっこう人命軽視の危険なことやってるよな?」
カブとエトちゃんの空戦は現段階においても圧倒的で、普通に無双している。
2人からしてみれば敵が弱すぎてまだまだ物足りないのかもしれないけど、女神像を守る立場としてはいきなり大砲をぶち込まれる事態も想定しなければならず、つまりいくら神経質になってもなり足りないくらいなのだ。
正直、いきなり増えたモンスターの分析もまだ終わっていない段階だし、少し足を止めるのも有りかもしれない。
そんなことを考えている時に、あれは起こった。




